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9.病人と苦労人と映画鑑賞

無駄の多い無駄じゃないシーン(無くても良い)。

無駄のない無駄な動きに通じる気がする(アホ)

「あー、頭いてぇ・・」


 家のベッド、なるほど、帰れたか。飲んでないのに記憶がおぼろ気なのは

 何故か分からないが、取り敢えず水が飲みたい。


「ん・・・いってッ!!?」

「——・・・」


 つまづいた場所を見ると、横になった知人、と言うか、千崎命が居た。


「・・・へぁ!!?」


 ・・・遡る事10時間前



「帰るぞぽんこつ、肩貸してやっからこっちに体重乗っけろー」


 給料が出て数日にしては明らかな致命傷を財布に受けた克己だが、

 ここからまた家まで送り届ける作業が待っていた。コレ会社の飲み会で

 起きると馬鹿が湧くからここまで酔わないんだが、お前、本当に久時か

 阿久津に送らせんぞこのやろう。・・・やっぱ無しで。


「仲良いですねぇ~」


 カラオケ1時間半やってコレとかあぶねぇ・・。普通に帰らせてたら

 多分駅で酩酊してたろ・・。


「あなたも帰りましょうね。1台だけタクシー呼んでもらったから、

 一応家の前まで送れ。おばさんに説明よろしく!」

「あ、ズルい!!」


 知らんな。初対面の人にこの仏頂面じゃ見栄えも悪い。適材適所だろ?


「ヤバそうだったら連絡すれば飛んでくるから頑張れや~」

「あえ、ひさといはんかえいれす?」

「お前もだよ。しゃんと立て、行くぞ」


 ・・・10分後



「にしても軽いなあお前さん、なあ、つばさ?」

「うーん・・」


 ったく、これでも病人(・・)のつもりかね。いや、酒や食べ物程度(・・)

 悪化する程簡単なものじゃないから、攻めるのも酷なのだが。


「今にも眠りそうか、もうちょっとだから頑張れ」


 夜風に当たれば少しは覚めるかと思ったんだが、ちょっとダメか。

 仕方ない、千崎呼ぼう。


「あ、ワンコ先生?」

《・・一人ですか、何の用でしょう?》

「潰れそうな部下を抱えた上司です。峯里の家、先生んとこの近くだったよな」

《そうですけど》

「介抱お願いして《嫌です》おぉう、率直」


 こういうとこほんとドライだねあなた。


「良いじゃん、別に減る《私、明日用事が有るので》のかー・・そか。悪かった」

《その子も大人なんですから「なんれすか、このボタン「ちょ、待てそれは拙い!」」》


 ドサッ


「かちょー?」

《はぁ・・・翠、あなたのGPS番号を転送して下さい。右上の

 ボタンです。分かりますね?》

「ねーかちょー、寝たら危ないれふよ~?」


 ボフッ・・カチッ


《・・・もう!》


 ・・・・朝:千崎宅



「・・んん」


 カタン


「起きたか、飯食ってけ。悪かったな、記録見た」

「ワンタッチで電源切れるの止めてくださいって言ってるよね!!」

「言葉もねえ・・・」


 記憶が無くなった原因は、首筋の思考補助装置に由来する。

 過去にちょっとした事故で負った傷の穴埋めに使っている物なんだが、

 これが無いと思考が滞る。と言うより、基本的な思考が少々

 難しくなる。歩く、座る、なんかは大丈夫、だけど、家までの道筋、

 記憶領域へのアクセスがほぼ不可能になるうえ、

 急に電源を切られると数分意識がなくなるなど、欠陥が多い。

 と言うのも、作られたのが10年前(・・・)のものを使いまわしているのが理由だ。


「変なこだわりは人を殺しますよ」

「分かってはいる・・・んだけどなぁ、こればっかりは拡張でどうにかしたい」


 執着、だろう。多分。コレに拘るのは絶対に忘れたくない事が

 あるからなのだろう(・・・・・)。だから捨てていないし、捨てられない。

 いやまあ、それで心配させてたら元も子も無いし、最低限

 制限拡張は付けた方が良いが。


「なら、早く指紋認証だけでも入れてください。次は助けませんからね!」


 とても心配させてしまったみたいだ。強い拒絶に混じった不安が安堵に

 変わるのが分かった。そりゃそうだよな、ここで起きるまで

 待っててくれたんだ。この罪悪感よ・・・。


「今日中にやる。用事があったのに悪い、もう大丈夫「おはようごさいまーす!」

 ・・ごめんまだ居て、こいつ帰すの手伝って・・・」


 何で朝女性二人が家に居る状況になってるんですか・・・。

 と言うかつばさお前帰れ!お前なにするか分かんないから怖い!!


「最初からそのつもりでした。帰りますよ、つばさ」

「えーなんでですかー」


 ・・・のし付けて送り返した。



「ありがと、・・疲れた」

「朝の始まりには随分慌ただしい日ですが、もう帰っていただいても良いでしょうか?」

「今度お礼する、本当に感謝してるよ。またな」


 本当に心配させたんだろう。すまない、ありがとう。


「・・ちょっとだけ期待しておきます」


 ・・・・



「・・・うし、映画見に行こう」 

《1時間突っ伏した挙句にそれぇ?》

「マイティー、俺のアクセス権剥奪すんぞ」


 唐突に飛び出した声の主は、良いじゃないかー。と言いながら

 朗らかな笑顔で切り返す。


《交友の輪を広げたり色々あるじゃん、何で映画なのさ?》

「趣味」

《これだから童貞は》

「これだからコンピューターは」

「《ハハハハハハ!》」


 皮肉だらけの会話、これが大体デフォである。度し難いと思われても

 仕方ない程度に毒舌な2人には、ある共通点があった。


「大分情緒には慣れたみたいだな。こんだけ返せれば上等だ」

《元々頑張れば理解出来たんだよ。ちょっと時間掛かっただけ!》

「生意気だなぁ、俺の分身(・・)であるお前が理解出来る訳ねえじゃん」


 情緒、信頼、色々抜け落ちた時に出来たコイツがソレを理解するまでには、

 およそ5年の月日が必要だった。たいていの事を出来るから、

 出来ない事が理解出来ない化物が完成した事に、当初は満足していた。

 自己矛盾に苛まれるこいつを見るまでは。


《一緒にしないでよ。あんたとオレは違う》

「さてな、アリス起動までに補助機能動かしとけ、警備とデバックは

 パラサイトに任せる。あと、はよアイソレーションの開始宣言を

 掲載しとけだとよ。お前、また興味ない仕事ほっぽり出したろ」


 スポンサーから怒られるの俺なんだからな?


《だってつまんないんだもん。やっぱ、チートガン積みの馬鹿を

 集めた最凶のチート大会とか》

「興味ねえ」

《解析ツールを逆リンクして史上最弱キャラに変えるのとか楽しいのに》


 ほんと、当時の万能とは別の意味でオールマイティ(ばんのう)になりやがった。

 後で契約違反だの御せなかった連中に色々言われるのマジで嫌だから

 言う事は聞いとけよこら。


「あ、時間ねえや。じゃな、そろそろ出る」

《ういういが寂しそうって咲ちゃんが言ってたから、今度どっかで

 会えないかって伝言来てたけど、また行かないの?》

「あー・・・まあ、考えとく」


 美咲さん、そんな殊勝なメッセージ送る様な人だったか?

 ・・・今度会うが、今回はパス!


《絶対行かないじゃん?まあ、映画楽しんでね》


 ・・・・



 独りは何となく嫌だったので誘った2人の内、まともな返信は1人

 峰里、そんな事よりゲームやりましょうよ

 阿久津、良いっすよ、見た後ついでにキャバクラ行きましょうよ

   ・・・・etc(この後は永遠風俗系の話なのでカット)


 一応肯定した阿久津に、じゃあ、11時に映画館で遅れんなよあと、

 映画以外は却下だ。行きたきゃ1人で行けと送り。

 峰里には・・・一応3時以降なら付き合ってやる。

 と返信した。ノルマ的に午後2時で終わる筈だから丁度良いだろ多分。

 にしても翠のやつ・・・、だから千崎に避けられてるんだぞ。


・・・・



「・・・微妙だった」

「あの塵設定を生かして何であの人を出さないんだよ、アホか!」


 誰も生き残らなかったのに誰もが素晴らしい!みたいなエンディングが

 鼻に付く内容だった。正直、役者の仕事が単一化し過ぎてつまらなかった。

 アドリブのギャグセンスの無さよ・・。まさに金ドブだった・・。


「おーい、ドS課長ー!駄目だこりゃ、ほら、取り敢えず邪魔なので

 どっかで座りますよ!!」


 ・・・・



「・・・すまん、あまりに酷くてショック受けてた」


 内容について、可能な限り肯定的な要素を見つけようとして、

 逆に荒が見つかる悲しい奴を繰り返してたらコーヒーが

 口に運ばれていた。


「毎回ですけどいい加減その癖直してくださいよー」

「普通の映画ならここまでは無い。久しぶりに見る2500円でコレ見たのが

 ちょっとショックでな・・・」


 「ハァ・・」呆れた様なため息を吐かれるが、全くその通りなので

 反論の言葉も無い。


「そんじゃあ、これ飲んだら回転寿司でも行きますか?」

「あー、まあ良いか、最近出費がかさんでるから

 今月は最後の映画だし。2千円以内で収まるだろ」

「いや、1,000円以内でも十分食べられますから」


 「そうなのかー」と、気のない返事を返し、コーヒーを一煽り

 ボーッとしながら寿司屋に向かった。


 ・・・



「美味い」


 回転寿司で揚げ物、セオリーも無いだろうが、克己にとっては少々

 珍しい組み合わせだったが、想像より美味なソレに、思わず声が漏れる。


「当たりの日みたいですね、・・ん、おいし」


 この日、当たりだからと言って油ものしか頼まなかった結果、店を出る時

 胃をモタれさせた男が一人いたとかなんとか・・。


 ・・・



「ふぅ・・そんじゃあ、私用が有るので私はここで」

「何が私用だ、お前の用と言ったら1つしかねえだろ」


 女関係でトラブルが起きないのが毎回不思議でならない。節度ある

 付き合いとか言ってるが、絶対嘘だな。と、毎回社内で物議も醸す

 話題の男、それが阿久津龍司(りゅうじ)の特徴なのだ。


「ハハハ・・ナンノコトヤラ。それではさいならー」

「早目に帰れよー」


 解散時間、午後1時20分、少々早いが、あの人(・・・)と時間潰しながら

 待つなら丁度良いか。


結果、朝月凛 ご飯大盛2、普通盛1、サワー合計11杯、ビール1瓶+3杯、ハイボール2杯

久時サワー5杯、ご飯無し、ビール無し、ハイボール9杯、日本酒5合

翠サワー2杯、ご飯大盛5杯、ビール2杯、締めでラーメン2杯、カラオケでたこ焼きと

ハニートースト1斤、屋台で肉巻き2つ。

その他:ソフトドリンク計10杯、克己、泣く。 

ちなみにAセットは3500円のそこそこお得パッケージ、

Bが5000円で肉がっつり系が好きなやつ。

単品含めて5万を超えるという事実(寒気)

と言うか酒許容量狂ってる(前記2人)

そして峯里さんの胃袋ぇ・・。

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