蜘蛛達の蹂躙劇
シリアスな回としで出来てたら良いなあと思います(願望)
「狂うな、吐け!」
「フ・・・ヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!」
常軌を逸した男の四肢に突き刺さるナイフと針の束、顔面にはそぎ落とされた
だろう痕の残る耳と鼻の切断面、歯を中途半端に折られたのだろう、
下に散乱する白い物が殴った時に折れたことを知らせる。
「でだ〈回帰〉話すか、後5分続けてまた繰り返すかだ。洗脳できねえから
時間使いたくねえんだ、早く決めろ」
数時間繰り返されたこの作業に苛立つプレイヤーに縛られた魔法で正気に引きずり
戻され、狂うことも満足に出来ない男は、体に走る壮絶な激痛に苦悶の表情で
返答する事も出来ずに目を閉じ、涙を浮かべる。
「やめぇ・・・・やめ・・・やめて・・・」
「狂ったフリは止めろ、1回目で理解してるだろ?」
ただ、それを汲んでやれる程度の良識ある人間は居ない。ああ、そうだ、
戦闘時に失われた魔力を回復するとFlereは聖杯に戻った。と言っても、拠点内で
簡易的なものが製作出来るとかで、なんか回復は早くなっているらしい。便利、
「わ・・ぁ・・・っは・・・言ふはらはへへふへ・・・!」
「クカカカカカカ!!」
嗜虐的な笑いが木霊し、男へ手を向け、触れようと動く。その動きに
極大の恐怖を露にした男が、少しでも離れようと動きにならない震えで反応する。
だが、その手が届く前にレンがソレを止めた。
「もう良い〈格納・毒の飲ませ屋〉」
「もし違えれば、次は正気を失う事すら許さない。永遠に苦痛の牢獄に
閉じ込められると言う事を認識しながら喋れ」
もしは無い、でももない。ただ漫然と存在する地獄の中に放り込む事に
なんの躊躇いも無い事に、男の意思は断ち切れた。
・・・・Side???
「おせえ、遅刻魔はともかく、団体で向かわせた連中が仕事もできねえゴミだと
思うと泣けてくるねぇ・・・・クソが」
野営地の一つ、プラネストに位置するこの場所は、人間を寄せ付けない絶命区と
呼ばれていた。そこに座る男の後ろでは、せっせと荷を運ぶ男達の怒号が響いていた。
「おい、合流はまだか!!」
「あと一刻もねえぞ!!!」
「知ってる、最悪進む速度を落としながら待つかぁ・・・・あ”?」
視線の先、おおよそ1800m前方から、影が高速で近づいてくる。
「やあっと戻ったぁって所・・・・いやぁ、ありゃあ」
逃げている、そう断言する前に、男が叫ぶ。
“壊滅した”
声は届かなかった、恐らくだが、喉が枯れているのだろう。
「ああ・・・成程ぉ」
踏まなくて良い虎の尾を踏んだとばかりに一心不乱な男の表情が知らせる。
しくじったと。
「はぁ・・・族長になんて言い訳するかなー」
呆気無い程簡単に仲間の死を受け入れた男は、何の気なしにそう呟いた。
・・・・
「クソガアアアアアアアア!!」
「まあまあ、生きて戻ったのが一人でもいたんすから、上々の出来だと思うんすよ」
周囲に爆音をまき散らし、森を破壊する男の怒号を抑えようと、下端よりは
少し上の立場かな?と思わせる程度の体つきをした青年が諌める。だが、
「うるせえええええええええええ!!!」
ピタッッ!
その必要もなく、男の動きが蛇に睨まれた蛙のように静止した。
「誰だ」
声の主は1人の女、だが、その女の声に反応できる者は存在しなかった。
纏う強者のオーラがそれを許さない。
「外に売る人間と物資集めでガタガタ抜かすんならお前等のケツに
手ぇ入れて内臓引きずり出してから悪魔でも召喚して代わりをやらせようか?」
その言葉が嘘でないことを、周囲の山賊達は知っていた。それ故に、
最初に発言できた者は最もこの空気を体験している人間だった。
「その人間集めが失敗しまし「なんでだ?」襲撃した村に潜んでいた人間に
ほぼ壊滅させられたらしく、少し休ませて今から話聞きます」
「あん?」
怪訝そうに首を傾げる女の表情は、感情を隠そうとも
しない。そして、少し黙ってから、こうつぶやいた。
「誰が、いつ、計画した?」
ドッッ!
汗が止まらない、知っている者は気づいた、生贄をよこせと。
「アタシは言った、スレイブの貧民街辺り、それが無理ならラウセブルの
屑共を攫えってな。村で女でも見繕って裏で売る気だったってのは
わかった。だから、誰が主犯か言え」
それが死んだ奴だろうが構わないから、と語尾につけたのは慈悲ではない。
虚偽と分かれば即殺すと言う宣言だ。そう、それを許さない事を彼らは
骨の髄まで知っていた。そして、黙認していた人間も黙ることは許されないと。
「そりゃあちょっと、件の失敗した奴も休めせてますし」
「なら早く持って来い!!」
静止した時が動きだし、一心不乱に男達が走り出すが、その動きを
止めるように何人かの老兵が手で制す。
「・・・なにか・・・・来る」
・・・・ッ
「影・・・じゃないねぇ、暗い」
ズゾゾゾゾゾゾゾ!!!
「ヒッ!?」
山を覆う影が進んでくる、それは地獄から来た蜘蛛とされる怪物、
曰く、それに狙われれば命はない。曰く、国一つでは足りない化け物。
曰く、悠久の時を発狂せずに全うする知性ある蜘蛛の王。その名は、
「<アラクネ>・・・・だとッ!」
地獄への窯は開かれた、それを理解した時には、もう遅かった。
・・・・Sideレン
「うーん・・・・この場所であってるか?」
情報を手に入れたレン達は、男の吐いた情報を元に進んでいた。
「ああ、ただ」
「疫病神さん達がこぞって刺激したみたいですね、とても厄介な
生き物を覚ましてしまったようです」
「ミリアちゃん強い!」
「わかった、5分くらい黙ってろお前・・・・ああ、これは」
動物たちの死骸が意図にくるまれていた。それは、蜘蛛が獲物を
保存する際のそれと酷似する。
「蜘蛛形モンスター?」
「アラクネ、もしくは<アラーネア>です。討伐時の難度は一国を
相手取るのと同じ程度なので、間違っても敵にしないでください」
ゾクッ・・・
「<透明化>〈索敵妨害〉とにかく、情報が足りない。見つからないように
敵情視察してくる。可能なら「それは考えずに」・・・分かった」
さて、どれほどのものか、プレイヤーらしく無謀に立ち向かおうか
・・・・
(ああ・・・うん、なるほど、こうなるのか)
「ア・・・ァ・・・・・・ァ・・・・・・」
無数の蜘蛛が男に群がる、初めは抵抗していた男だが、数に押され始めてからは
早かった。一瞬のうちに体中を蜘蛛が這い回り、ものの数秒で埋め尽くされた
体が骨と皮ばかりの抜け殻になる。間違いなく、敵にしてはいけないものを
目の当たりにしていた。
「これ以上近づくのは厳しいか・・・ん?あれは・・」
蹂躙される集団の中、約7名の人間が蜘蛛たちを押し返していた。
その中の一人、頬に傷痕の残る男、先ほど戦ったボス格の山賊だった。
「情報通りと・・・じゃ、帰るか」
7人は無理だ。そう判断したレンは、木から木へ飛び移り帰ろうと
足に力を込めた、その瞬間。
ガクッ!
「な・・・にい!?」
ガシィ!!
足の力が抜けて行く、どうにか落下する前に枝の一つに掴まったレンだが、
そんな事はどうでも良いと、力の抜けた原因を探す。
「〈索敵〉〈隠蔽無効〉・・・発見!!」
北西1㎞、蜘蛛達の大群が唯一避けるその場所に、ソレは存在していた。
(なんつう・・・・なんだ、怖いぞ・・・・・)
レンがこう言うのはかなり珍しい、苦手なものや生理的嫌悪感を催す
類の生物以外で、彼は恐怖した事があまりない。故に、恐怖を感じた時は
必ず相手がある感情を持っていることを知っていた。
(怒ってる・・・それに、何か別の感情も見えるが・・・・毎回わかんねえんだよなぁ)
レンこと克己自身も気づかないその感情は哀悼と義憤、つまり、理不尽に対する
怒りと悲しみだった。ただの怒りではなく、自身も含めた抵抗できないことに
対する怒りが、レンを、克己をこの上なく恐怖させた。
「マズ・・・・体が・・・」
「ガキィ!ガキィン!!」
決して早くない移動だが、残った7人が一様に逃げ出す程の戦力差を
感じ取ったようだ。それぞれ別の方角へ向かう。ただ、彼らの予想は
儚く散った。
「さすがに早い・・・!!!??」
瞬きひとつを終えた頃、高速で移動する4つの影がバラバラになっていた。
残った3つの影からも腕や足の一部が宙を舞っている事から、あの場所から
何かの攻撃をしたのだろうと予測はできた。見えなかったが。
「だが、さすがに全員は倒せなかったみたいだな」
残った3人が転送魔法で消えてゆくのが見えた、あの男もどうにか
逃げ切ったようだ。だが、次の光景にレンは身震いする。
ギロッ!
見られたわけではない、そう思いたかった。
「まだ大丈夫、魔法の効果も切れてないし・・・」
言い聞かせようと努力した。だが、現実は理想通りとは行かないものだ。
ピシュン
「おお!!」
バキッ、ガサッ!ドサドサ!!
掴まっていた枝が切り落とされ、地面に落ちる。
「・・・待て、武器は持ってない!!」
戦力差がありすぎるため、残念ながら勝利できる可能性は限りなく零に近い。
だったら開き直るかと、手に持った杖を放り投げ、寄ってくる蜘蛛を木の上に
上ることで避ける。そして、
「・・・・?」
「んん、目、全部違う色なんだな」
最初の攻撃で殺さなかった理由は、恐らくだが観察しているだけだった
からだろう。どんな生物かを観察するように、アラクネ?の顔が目の前に来た。
観察していたのは全てだが、緋色と深い青を含む、8つの目が別々の輝きを持つ
事に、少々好奇心が芽生えた。
「!?」
体長にして5mの巨体が近づいた割に反応が素朴で動揺したのだろう。
近づけた顔を引き、頭を振りつつ蜘蛛達を押しとどめる。意外と可愛い
見た目にまあ、死んだら死んだでしゃあない。と思ったレンが居たが、
声には出さない。胴体は普通に怖いのだ。
「一つ聞きたい、あの場所にいた人間、全員殺したか?」
「!・・・食べた、皆お腹空いてたみたいだから」
あまりに呆気無く言い切るアラクネ?に、素直な奴だと一つ息を吐く。
「・・・そか、じゃあ襲った理由は子供?に飯をやりたかったからか?」
「生息圏を一部壊されてしまったので、そのお礼に」
「生息圏か・・・縄張りを壊されれば怒るもんだなあ・・・・」
むしろ、俺等が苦戦したレベル以上の奴を一瞬で殺害できるのだとすれば、
この被害はある意味最も軽微なものなのかもしれない。
「無作法に、無差別に、あまりに目に余る蛮行に、我慢の許容量を振り切りました」
先程より流暢で礼儀正しい口調でアラクネ?は言う。森を壊された結果、
自分たちがこの集団を襲う前の惨状を見てしまうと、周囲の生物全てを
壊滅させてしまうとは思わなかったのだろうか。と、不意に思ったが口にはすまい。
「目的は、この先にある競売場の発見と報告だ。邪魔でなければ、通過させて
もらいたい」
「・・・成程、被害者でしたか」
このモンスター意外と察し良い、あの連中が殺されたことに対しての怒りが
無い事から予測したんだろうか。
「ガッチガチに加害者になる気満々だが、今はむかっ腹に来てるだけの
被害者で間違いねえかな」
目元を伏せてしまったアラクネ?に、別段あいつ等と差が有る訳じゃねえ
から、気に病む必要はないと答えるが、少々・・・些か?・・・想像以上に
独特な反応が返ってきた。
「・・・・ごめんなさあああい!!」
「・・・・うん??」
うん???
「誤解が解けて何よりです」
「え、意味わかんない、説明してもらって良いか?」
「レンさーん、って、ええ!?」
「うっさいマキリス、話聞け」
いつの間にやらミリアが立っていたが、どうなっているのかさっぱりなレンは、
少々声高に疑問を投げかけた。マキリスは放置だ。
「ええと、まあ、すごく簡単に言うなら、比較的に視野が広いアラーネアでした」
「詳しく頼む、本当に!」
「格好良い!!」
簡略化しすぎて意味わからないから!?後マキリス、黙れ、頼むから。
「では、少しだけ詳細を。アラクネは同族を一定以上殺害されると、
国を丸ごとひとつ埋め尽くし、その内部にいる生物の約60%を
死滅させます。対して、アラーネアは人の居る場所まで進行はしません。
更に言うなら、アラーネアは戦闘をする際、他のモンスターを自身の糸で
保護し、後でそれを解く習性があります。つまり、」
種族と個人が別物って事を理解出来ている証明って事で、且つ生態系の
変動によって食料が取る理難くなる事を予測できると。とても厄介な気が・・・。
直情的なヒステリック女よかマシかも知れんが。
「では、警戒も不要でしょう<種族転送>」
非常に友好的でちょっと拍子抜けした自分に腹が立ったが、顔には出さない。
・・・・多分出てない。そう信じよう、女怖い。
「亜人達と別段差が有るように見えんのだが・・・どういう基準で
亜陣とモンスターってのは決まってるんだ?」
理知的なモンスターという分類でシステムに判定される獣人等の亜人種と、
敵対関係にあるモンスターの差が分からん。別に亜人種だって人間喰う奴は
居たし・・・隔離空間内での話だから確定ではないが。
「魔石が有るかどうかと言うのが大きいみたいです」
「魔石?」
「見たこと無いですね~」
マキリスの言う通り、ド定番と言えばそうだろうが、残念ながら今まで遭遇した
モンスターに魔石を持ったものはいない。だからこそ、明確に括りが存在するかを
聞いたのだ。真面目に差が分からないぞ。
「魔力が体内で結晶化する現象が起きる者をまとめてモンスター、もしくは
危険因子として友好的な種族から除外している。と言った方が分かり易い
かもしれません。大きな括りでの差は集団で生活するかどうか、という所です」
「わたしの様な大量の子を産む類の化け物以外ですが、その分類は間違って
いないかと。ただ、オオカミ等の弱小種族に限っては、違うと断言できますが」
「結構曖昧なんですけどね、その見解、本で見ました」
訂正を加えて大体の理解はできた。だが、それを突き詰めると、
「そうです、人間であろうと亜人種であろうと、魔石が結晶化したら即
人類の敵として手配されてしまいます。救済組織として聖国と特殊な
組織が匿っていますが、どんな目的やら」
「あららー、分かりやすい<人間の敵>ってやつですか」
「もう良い・・・、あいつらの向ってた場所に行くから、話は途中で頼む」
皮肉気に返すマキリスとは違い頭が痛くなってきたレンは、会話を切って
先に進もうと促す。
「わたしは巣に戻ります、襲ってしまった手前、逃げるようで申し訳ありません。
プラネストにいつも居ますので、宜しければ立ち寄りください」
「おう、いつかな。あと、殺す気なら最初に当ててた、気にしなくて良い。
俺、プレイヤーだしな」
「私もいきます!」
悪乗りも有れば理不尽も行う、プレイヤーは不真面目で真面目で自由で屑なのだ。
そこに人間だからという情が介在する必要はない。殺せるなら殺しといた方が良い。
情報拡散したら、周囲に狩ろうとする連中が集まる→返り討ちの構図がもう見える。
「そうですか・・・では、巣に来た時には、わたしたちの持てる限りのもてなしを
尽くしましょう。・・・ありがとうございます」
《指定個体<アラーネア>からフレンド申請を受けとりました。受理しますか?Yes/No》
「逆に気使わせた、じゃ、またな~」
「あれ、私居ないものして扱われてません!?」
と言うことで、なんかアラーネアとフレンドになった。あとマキリス、今更な事
言うな。最初から最後まで無視されてたぞお前。俺以外。
進まねえんじゃ~(次!)
アラーネアに関してですが、生息域は国境ではなく、一応プラネストの
上空です。未登場の国王が提案し、時折人の姿で下に下りることを
条件にして、住処を提供する代わりに、死なせたくない動物たちの保護区みたいな
所を守ってもらう。と言う感じの設定をしていたりしなかったりしてました
(実際には保護区を住処として渡してたって感じにしてたんですけど、国境周辺に
そんな危ない奴居たら怖すぎるため、上空の魔方陣を利用して、空間を
生成している。と言う感じにしてみました)
ちなみにですが、アラーネアは単為生殖可能でして、短期間に子供を増やしますが、
数が飽和すると殺して回ると言う習性があります(別に出す必要は無いですけどね)




