094⚫️棒に当たる?
「これが、その蔵ね。大きいわね。」
「まあ、こんなもんだよ。ガラクタばかりだけどな。」
「オオガミさん、鍵かかってませんよ。いいんですか?」
「このあたりにはドロボーすらいない。それに、取られて困るモンもない。」
蔵の扉を開けると、ひんやりした空気と古い木の匂いが流れ出た。
薄暗い。スティーブの眼なら見えるのにな。わたしは携帯照明を点ける。
・・・なによ、この量!
「アキラ、あなた整理してるって言ってたよね。どこが整理なのよ?」
「これでも随分やったんだぞ、俺。おおざっぱだけどな。陶器や掛け軸、食器はまとめてある。好きに見てくれよ。」
好きにって言われても、これは大変。
どこから手をつければいいのよ?
「わたしは文書関係を見てもいいですか?」
「頼む、ココア。俺にはミミズがたくったような文字は読めん。学者たちはよく読めるよな、あんなの。」
「わたしも日本語の、しかも古いのは絶対無理!他に‘ヘンなモン’が出てこないか、探してみるね。」
それぞれ作業に取りかかるが、それらしいものは出てこない。
「ひと息つきましょうよ。おやつもまだ、たっぷりあるから。」
母屋に戻り、簡単な食事をとる。
ココアちゃんは文書を抱えたまま読み続けている。
「なんか長引きそうだな。俺にはあわん。もっとパパッと行きたいよな。」
アキラの言うことはわかる。
地道な捜査は必要だけど、もっと’キーになる何か’がほしい。
「犬も歩けば棒に当たる。狼なら、もっといいもんに当たるはずさ。」
日本では、犬って歩くと、棒で叩かれるの?
わかんないなあ。
「ありました。大神新三郎についての記述。ここですね。」
ココアちゃんが古文書を掲げた。
「おっ、やっぱり棒に当たったぞ!」
アキラがチョコとサラミを同時に頬張りながら言う。
どんな味覚してるのよ。




