087⚫️質量と重量
「えっーと。アキラさん、ご期待に沿えたかどうか、なんですが、取り敢えずわかったことをお伝えします。」
ラボの研究室の1つ。ジンが説明を始める。
「まず、ここに鋼鉄の棒を用意しました。手にとってみてください。」
うん、フツーの鉄棒だな。エイミーに渡す。
「あら、意外と軽いものね。近接戦闘の武器としては、悪くないよね。」
「いえ、エイミーさん、あなたのパワーなら、もっと太くて長い棍棒だって余裕でしょう。」
「なによ、ジン、それって褒めてるの、それともからかってるの?」
「もちろん、褒めてますよ。じゃあ、今度はこの’星河薫風’なるもの、持ってみてください。実は鋼鉄棒は、これと同じサイズ、同じ長さだったんです。あっ、抜刀しなくていいですよ。そのままで、ね。」
エイミーが受け取る。おや、ヘンな顔してるな。いや、美人さんだけど。
「ジン、これって全然、ちがうじゃない。重いよ。さっきの鉄棒の何倍もあるじゃないの。」
そんなに重かったかな?受け取る。軽いじゃないか。
鉄棒よりはるかに軽い。もはやアルミパイプより軽いぞ。
「オオガミさん、わたしはどちらも同じ重さだと思います。」
ココアが柔らかな口調で言う。メカロイドの測定は正確なはずだ・・・。
「そうなんです、アキラさん。質量はどちらもそれほど変わらないんです。ところが、持つ者によって、‘星河薫風’は、重量の感じ方がバラバラなんです。」
「そんなことがあるのか?’質量保存の法則’ってのは、物理の根本だろ?授業で習ったぞ。よくわからなかったが。」
「オオガミさん、それ、まちがって憶えてますよ。’質量保存の法則’って、そういう内容じゃないです。」
ココアの訂正に、学業の大切さを感じる。が、しかし、だ。
「ジン、どういうことなんだ?もうちょっと、一般大衆レベルで説明してくれんと、わからん。」
「そうですね。例えば、アキラさんが月面で60kgの質量を持ち上げたとします。でも、アキラさんにとっては、地球上の10kgにしか感じません。」
「そりゃあ、そうだろな。月面の重力は6分の1だからな。どうだ、よく知ってるだろ?」
「そうですね。では、地球より重力が2倍大きい惑星では?」
「・・・ジン、それってつまり・・・。」
おまえ、どえらいことを言い出すんだな。
「そうです、アキラさん。質量は同じでも、この刀は持つ者によって、重量が変わるようなんです。この‘星河薫風’は、持ち主の重力、パーソナル・グラビティを選んでいるんですよ。」




