075●星幽結晶弾 厄介モンの解放
砂嵐の向こうに、スクラップの山がぼんやりと見える。
あの影の中に、お宝の山がある。
小さな噂話だったが、少ない人数で大勢を撃退したという。
本当かもしれない。きっと死に物狂いで守ったんだ。
男は仲間に声をあげた。
「俺達は200人だぞ。スクラップ・ジャンクションの連中の倍だぜ。楽勝だ!」
誰もがそう思っている。数の力で踏み潰せる、と。
風が強い。こんな状況で狙えるはずがない。
自分たちが一斉に撃てば、マグレでもいくつかはあたるはずだ。
その瞬間、銃声。
前列の男が胸を押さえて倒れた。
その後ろの男も。
さらに3人目、4人目。
「・・・は?」
銃声は1つだけ。なぜ同時に殺られた?一発が4体を貫通した?
いや、あたれば銃弾は減速する。肉や骨で止まるはずだ。
それにこの風の中、正確な射撃ができるのか?
まっすぐ一直線に?空気を無視したかのような・・・。
2発目の銃声。
一列に並んでいた仲間が、今度は5人同時に崩れた。
「おい、なんだよ、今の?」
「跳弾か? いや、違うぞ。おかしい。」
「貫いた?えっ?」
砂嵐の中でも、風に流されず、
軌道が振れることなく’直線で伸びてくる’異様さを、本能的に感じる。
「隠れろ!」
誰かが叫んだ。スクラップの鉄板の陰に飛び込んだ仲間がいた。
3発目の音。
次の瞬間、鉄板にきれいな穴が穿たれ、その男の胸にも同じ穴が開いた。
「鉄板を・・・抜けた?」「嘘だろ・・・。」「なんだよあれ。なんなんだよ。」
弾丸は減速することを知らなかったのだ。
肉を断ち、骨を砕き、それでもなお’真っ直ぐであること’を強制されたかのように、体を数珠繋ぎに貫通した。
鉄板も紙のように軽々と破り、砂漠の彼方へと消えたのである。
恐怖は伝染する。隊列は一瞬で瓦解した。
「逃げろ! 防げねえ!」「違う!何か違う!銃だ!特製か?!」
「いや、弾だ!弾がまっすぐに来る!」
誰も正しく理解できない。
死が一直線に伸びてくるという事実だけが、全員の背中を凍らせた。
砂嵐の中、200人を切っても多勢と言える集団が、一斉に崩れた。
誰も振り返らない。誰も倒れた仲間のことなど考えない。
彼らは知らない。
放たれた弾頭の中心に埋め込まれた’点’に、僅かな星幽結晶があることを。
そして、その’点’が、その世界の物理法則を無視することを。
理解不能な死の恐怖だけが、
攻め込んだガンファイターたちの全身を支配していた。
「なんで、そんなオールドスタイルな単発式拳銃なのよ?長いオートマティックの、え〜と、’アサルトライフル’?を使えばいいんじゃないの?前みたいに。」
「実験だ。」
ブリッツは答えた。
風が彼の言葉を散らして行った。




