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042●賢者の剣 聖者の剣

ふたりは前方のやや開けた場所に辿り着く。

赤い眼が幾つも灯る。十、二十・・・数えきれぬ怪が迫る。


新三郎は呼吸を整える。

何としても、マナを守る。

それは無幻斎の依頼だからではなく、己の信念。

力が漲る。高揚する。

これまでにない何かが、今、新三郎の中で覚醒しようとしている。


‘星河薫風’の柄に触れた瞬間、世界が緩やかに流れ始めた。

刃を抜く。刀肌に星光が宿り、皐月の風が頬を撫でる。

赤く光る眼の群れの動きは間延びしている。

新三郎の唇が動く。「斬る。」

弧を描く‘星河薫風’。

一閃、白光、流星。

震える大気、銀河両断。

十体の人形が同時に斬り割かれ、

更にその背後の一丈の岩が粉微塵に弾け四散する。

宙を舞う木っ端、岩片。星屑が夜空に乱れ散るようだ。

新三郎には、すべてがゆっくりと落ちていくように見えた。


だが、山側から、谷の底から、さらに人形群が湧き出している。

新三郎の背後のマナに、近づいた木製人形の腕が振り下ろされる。

しかし・・・水面を行く、微かな澄んだ風の音。

紫青の閃光。迫る人形の胴が真っ二つになり、砂のように崩れる。

そればかりか、刀身が届いていない後背の一群までもが、

音もなく粒子となって消えていく。

‘山紫水明’。

マナの抜刀から納刀までを目視できる者は、この世界線に僅かしかいない。


ウルルルルーオオオオーン——・・・・

アオオオオオォォォォーオオオオオォォォォ——ン!!

雄叫びが、山中に響き渡る。

「狼か。」

新三郎は呟く。狼であろうと神であろうと、

マナに指一本触れさせぬ。


来るならば

斬る!斬ると言えば斬る!!!


遠くにいる無数の人形たちが、次々と倒れていくのが見える。

遠くから声がする。

「マナ様、ご無事ですか!豊代でございます!」


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