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036●旅の目的地
新三郎は旅に出た。澄んだ朝の空気が、頬を撫でる。隣にはマナがいる。
彼女の歩みは軽やかで、白い衣が風に揺れていた。
あの一件以来、二人は文を交わすようになった。
短い言葉のやり取りが、心を近づけていった。
そんな折、黒峯藩から沙汰が届く。
「新三郎儀、領内外出入御免、行動自在たること、御沙汰候。右、当藩に於て特に許容仕り候条、諸事妨げ無き様、相心得べく候。」
家老の新三郎を遠ざけたい、という思いが透けて見える。
だが、要するに藩の許可のもと、
何の咎めもなく自由に動ける身となったということだった。
やがて、新三郎は九龍山高宮寺に兵法修行に赴く。
山門をくぐると、杉木立の間から光が差し込み、静謐な空気が広がっていた。
無幻斎が柔らかな笑みで迎える。
マナたち巫女も、白衣の袖を揺らしながら微笑んでいた。
穏やかな日々が続く。剣を振り、呼吸を整え、心を澄ます。
ある日、無幻斎が新三郎を呼んだ。
「縁のある社にマナがご機嫌伺いに参ります。護衛をお願いしたいのですが。」
新三郎に異議があるはずがない。
マナと道中を共にするという喜びを押し隠す。
目的地は山奥にあるという。深い森に抱かれた、古き神の座。
社の名は「日ノ御子神社」であった。




