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俺の筍ご飯は、美味しくなかったのか?

その後桂子は、美香さんとやらとの連絡は途絶えているらしい。また一体よそ様に、どんな突拍子もないラインを送ったのかと思うと他人事とは思えない。人様は、病気だからと許してくれるほど世の中甘くないのだぞ、桂子。



そんな折、久しぶりに、郷里の親戚夫妻が、今年は旬であるという筍を、わざわざ茹でてくれたものをクール宅急便で送ってくれた。

これぞ、贅沢の極み。感謝してし尽くせない心遣いに手を合わせたくなる。



あまりにたくさんの頂き物だったので、またご近所の料理のプロである高宗さん宅へおすそ分けに持って行った。


彼女はいつも快く受け取ってくれて、何か作ったら持って行くわねと言ってくれる。そんな、いいんですよ、お気を遣われないでくださいとは言いつつも、嬉しいお言葉に心が躍る。



桂子が、また高宗さんのご馳走がいただけるのね。嬉しいわね、と上機嫌。食べ物でコロッと変わる時には、こいつは本当に病気なのか?幼稚なだけなんじゃないかと少し期待してしまう。



この度の転院で、新しい主治医の先生の診断によると、病名が多少変わった。軽くなったのか、重くなったのやらまるで見当がつかないが、投薬の調整により、桂子は少し怒る時の取り乱し方の酷さが落ち着いたように感じられる。今のところはだが。



高宗さんより、ほかほかの筍ご飯と、筍とフキと昆布の煮物をいただいた。


桂子の目が輝く。写真まで撮っている。


「昭夫さん、せっかくだから温かいうちにいただきたいわ。早く晩ご飯にしましょう。」


「はいはい。俺が準備するんですけどね。」


桂子は、「今日の晩ご飯は料亭の味ね。お誕生日でもないのにご馳走でとっても嬉しいわ。」


そう言ったきり、桂子は無言で美味しさに酔いしれながら完食した。


「幸せだわ。美味しい物を食べるのが私の一番の幸せ。」


俺が、昨日炊いた筍ご飯は、美味しくなかったのか?



いつもこんなに機嫌のいい桂子ならいいのだが。本当に、桂子は“頭の病気”ではなく、単に気分屋で成長が遅いだけならよかったのに。




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