陰に隠れて
しばらく陰から息を潜めて人間の様子を観察していたヘイトは、シルバの盗聴で彼らが自分たちの正体を見破りつつあると感じていた。ましてや、シルバの方は特定されるまでに至っている。
「遅かれ早かれ見つかってしまうのなら、先手を打つ方がいいか…」
ヘイトは呟いた。
「彼らと戦うのですか?」
シルバの目はどこか不安げだ。
「ああ。連中はこっちが知能を持った魔物だとまでは感づいていないらしい。俺のことを巨人呼ばわりするくらいだ。本能のままに暴れまわることしかできないと思っているなら、大間違いだということを教えてやらないとな」
「えっと…」
シルバは少し困惑したような表情をした。
人を殺す動機が不純だとでも感じたのだろうか。まあ、命を奪うのに純粋も何もないのだが。
「冗談だ。連中を倒せば、逃げ出した誰かが町に案内してくれるだろうと思ってな。そこが俺たちの、次の目的地だ」
「なるほど、怯えさせて、後をつけるんですね!」
シルバは納得したようだ。
とってつけた理由だが、言ってしまってから思った。案外悪い考えじゃないのではないかと。
「その役目だが、お前に任せたい。いいか?」
「もちろんです!」
「ところで…」
ヘイトはふと疑問に思ったことを口にした。
「体が分裂していても、お前は分裂した先の意思と繋がっているのか?」
「え、ええ、まあ、そうですね。あんまり意識したことがなかったので、言われてみればそうだと思います」
「それは、どれだけ離れていても…?」
「そこまでは、ちょっと…。ただ、今までは制御がきかなくなるということはありませんでした」
「それも少し、検証してみる必要があるな…」
ヘイトはそう言って地面に置いていた剣をもたげた。
「シルバ」
立ち上がったヘイトはシルバを見下ろした。
「なんでしょう?」
「見たところ、あいつらは俺たちのことを調べに来たんだろう。なら、連中を送った人間がいるはずだ。全員は殺さず、何人かは泳がせておくぞ」
「なるほど、わかりました」
シルバはふんふんとうなずいた。
そうしてヘイトたちは、人間たちのもとに向かうのだった。




