ハランド編6 お出かけ③
キキラは、住宅街を歩いていた。
少年と少女の会話が聞こえてくる。
「今日は、王宮での作法を勉強しましょう」
「またなの?僕は魔法使いだったんだ。騎士の作法なんて知らないし、これからも必要ないよ」
「私の前世がお姫様なんだから、あなたは私の騎士なの!」
少女の迫力に少年は怖気づき、結局騎士ごっこに付き合わされるようだ。
その光景を見て微笑みながら、目的地に向かう。
それは教会だった。
この世界では、すべての者が前世を経験している。
ゆえに、各々が信仰する神も異なる。
唯一神、八百万の神、精霊、星々。
その中で大勢を占めるのが、グランレピア神をあがめるものだ。
グランレピア神は、この世界の創造主とされている。
それぞれの世界で生を全うし消えゆく魂を嘆き、この世界を創造したと言われている。
キキラは教会に入り、神の像に祈りを捧げる。
その後、教会を出て周りを見渡すと墓地が目に入った。
墓石を見る。
風雨にさらされて文字は所々かすれているが、かろうじて読み取れる。
【ニーニャ 前世は魔力に恵まれ、現世はつつましい妻であった者
ここに安らかに眠る】
キキラは祈りを捧げた。
今、彼の魂はどこにいるんだろうか。
キョウが彼の生まれ変わりだったらいいのに......
「そんなうまい話、あるわけないですよね」
自嘲気味に笑った後に沈黙する。
いまはただ、彼の安らかな眠りを祈ろう。
空を見つめながら、キキラは涙をこぼした。
≫
夕暮れ、3人は酒場に集まった。
「二人に渡したいものがあるんだ」
首飾りを差し出す。
「キョウにそんな甲斐性があったなんて......」
「違うよ。これは、遠くにいても会話できる魔道具」
「期待したわたしが馬鹿だったわ」
「私は嬉しいですよ。素敵なネックレスですわ」
キキラが早速首飾りを付けている。
チャームを目で追っていくうちに胸元を見てしまい、慌てて顔を背ける。
「キキラはネックレスが似合うね。まるで王女様みたいだ」
「ちょっと、わたしには何か感想ないの?」
リリスがむくれた顔をする。
「まあまあ。これは魔道具だけど、このパーティーの証にしたいんだ。
幸せを願う四葉のクローバー。なんだか、幸運を運んできてくれそうじゃない?」
「いいわね、幸せの象徴。わたしたちの旅路が、恵まれたものになりますように」
改めて、パーティーの結束が固まった気がした。




