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ハランド編8 女子デート

ワイトキング戦のあと、僕の火傷はキキラのヒールだけでは治りきらず、病院に2日ほど入院することになった。

その間、2人にはクエスト情報の収集や今後の対策について話し合ってもらうことにした。

もちろん休暇も込みだ。



「よくよく考えてみたら、リリスさんと二人きりになるのは初めてですね」


「そうね。普段はキョウがいるのが当たり前だから。」


「リリスさんとは前々から二人きりでお話をしたいと思っていたのです。

とりあえずカフェにでも行きませんか?」


「わたしもよ。お店ならまかせて!いろんな紅茶を飲めるお店を知ってるの」



しゃれたカフェの外にある席に腰掛ける。

温かい紅茶とケーキが運ばれてくる。

吹き抜ける風が気持ちよい。


通りを見ると1人の男が女性をナンパしている。


「オレ、前世は賢者だったんだぜ。

いまはまだDランクだけど、これから一気に駆け上がっていく男だ。

オレのパートナーにならないか?」


「結構です。賢者なんてそうそういるわけありません。

それにあなた、腰から剣を下げているじゃないですか。

嘘をつくならもっとマシなものにしてください」


あっけなく振られた男が舌打ちしながら路地に消える。

そんな風景を一通り眺めたあと、本題に入る。


「簡単なお話は伺っておりますが、今一度詳しく旅の経緯を教えていただけませんか?」


リリスは語りだす。

キョウ、アキ、自分の3人で野山を駆け回っていたこと。

ドラゴンが現れたこと。

アキが廃人になってしまったこと。

無二の親友を取り戻すために旅立ったこと。


リリスの目から自然と涙がこぼれていた。

あわてて袖で拭う。


「なんか湿っぽくなっちゃったね」


「いえいえ。キョウさんは本当に頑張っていらっしゃるのですね。

素敵です」


「わたしからもいいかな?

キキラがどんな冒険をしてきたのか知りたいな」


「そんなにおもしろい話ではないですよ」


キキラは語りだす。

元々は教会の孤児院で育ったこと。

15歳の魂卸の儀で前世を思い出し、ヒールを使えるようになったこと。

それからは冒険者として各地のダンジョンを攻略してきたこと。


色々な仲間と出会った。

S級ダンジョンを目指す者。

富を求めて財を成し、冒険者を引退して商人に転向した者。

そして、スキルポイントの酷使により廃人と化してしまった者。


「私の戦闘スタイルは一般的ではありません。

ほとんどのパーティーはヒーラーを後衛に回します。

ですが、私は命を預ける仲間と共に前線に立ちたい。

そのため、なかなか一所に落ち着けずに放浪していたのです」


キキラは紅茶を一口すする。


「まあ、それ以外にも理由はありますが...

それよりも、リリスさんはキョウさんのことをどう思っていらっしゃるのです?」


リリスの頭にクエスチョンマークが浮かぶ。


「さっきも話した通り、親友だよ」


ケーキを頬張りながら答える。


「何か特別な感情はないのですか?」


「えー。キョウは親友。何が聞きたいのかよくわかんない」


「私はキョウさんに惹かれています」


突然の告白に飲みかけの紅茶を吹き出しそうになる。


「キョウさんは私の好きだった方によく似てるんですよ。

アキさんを取り戻すために必死な姿。仲間を助けるために命を張れる強さ。

それに...」


キョウさんなら私の本当の姿もきっと許容してくれる。


「私はキョウさんの為ならこの命をかけます」


キキラの真剣なまなざしをリリスは受け止める。

目の奥に二人の影を見た気がした。


「キョウのために命をかけるのはわたしも同じよ。大切な親友だもの。

でもキキラのそれはわたしとは違う覚悟みたいね」


「リリスさんのお気持ちも充分理解しております。

でも私の気持ちとはたしかに違います」


リリスは半分残ったケーキをそのままに腕を組む。

逡巡する。

キョウは幼馴染で親友。

共にアキを助けるという目的で一緒に行動している。

戦闘でいつもここぞというときに助けてくれる。

わたしはキョウのことをどう思っているんだろう?


「この話はキョウさんには内密に。

恋愛関係のいざこざで解散したパーティーもよくある話なので」


「わかったわ。キキラの気持ち、わたしの胸の中にしまっておく。

それにしてもあのキョウを好きになる人がいるだなんて。

想像もしてなかったわ!」


「傍目から見てもキョウさんは充分魅力的だと思いますよ。

前世、スキルがない中でがんばる姿。

整った顔立ちに決意を宿し揺るがない瞳」


「わたしはいつもキョウの近くにいるからわかんない。

キョウはキョウだもの」


「ふふっ。リリスさんはてっきりキョウさんを好きなのかと思っていましたが、

ライバルにならないようでよかったです」


「わたしはあの無鉄砲を放っておけないだけ。

もちろんアキを助けたい気持ちは本当。

理由なんてそれで充分だわ」


キキラは残りのケーキを一口で食べきった。

追加で紅茶とケーキを注文する。

リリスより年上のキキラが経験してきた人生譚、ハランドの街の話や今日の晩御飯、

二人の話には花が咲き長く語り合った。



2日後、僕は退院した。

火傷の後も残らず、元気そのものだ。

病院ではヒールとともに手術を初めて経験した。

麻酔と呼ばれるガスを嗅いで眠くなる感覚は不思議なものだった。


今後のことをゆっくり考える時間ができたのも有意義だった。

ダンジョンの宝箱。

それにアキを救う望みを託して一気に攻略をする。

改めて決意を確認する。


「リリス、キキラ、お待たせ」


なぜか二人はほくそ笑んでいる。

なんだろう、何か違和感を感じる。


「さあ、これからまたダンジョン攻略開始ね!

次は40階。どんな敵が待ってるのかしら。

いずれにしてもわたしの剣舞で滅多切りよ!」


「ふふっ。リリスさんはいつも頼もしいですね。

もちろんキョウさんにも期待していますよ。

私も守ってくださいね」


「もちろんだよ。二人は大切な仲間だからね」


――準備を整えてから僕らはダンジョンへと向かった。



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― 新着の感想 ―
すべての住人が異世界転生者で、前世の記憶やスキルを持っているという世界観が面白くとても引き込まれました! アキを必ず取り戻すというキョウの強い想いが胸に響きました…! 自分にスキルがないことをマイナス…
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