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日本の定理・下巻  作者: 泉川復跡
【『算額主義』編】第十七章。薔薇を噛む鱒
3/5

17.3.「平川と五十嵐の奴、僕は話し掛けたんだ。結構楽しい話だったよ」

「六匹ですか。てことはこの川上に60匹が入場したのに、たった一割が生き残ったって」と倉崎さんが最後の答えを書いてから感想した。

「自然界ですから。生存の為に死ぬまで戦う。自然淘汰の残酷な法則の下で大勢の群体から数え切れる個体が残るしかないんです」と言った澁薙君。「ただ、本当に6は答えなのか?kを5や7など偶数とする場合は姉さんが考察しませんでしたね」

「んー、この図によると、それぞれの水域では二個の穴が両側で相称に隔てますね。奇数としたら、ある水域で一個の穴だけを考察して連帯を無くしてしまいます。穴がなんと階段やら行列やらのように配置されれば考察出来たのです」と返事した倉崎さん。

「そうだったら両側には同じ十二支を記したんじゃない?『子』から『酉』まで連続記したとは、先生が引っ掛けたいんだね」

「ただの修飾だよ、絲島君」、松澤先生の声もパズルピースからいきなり鳴ってきた。私達がびっくりした。自分達の反応によって他の患者が気付いちまう気がして外に見たが、彼ら皆が既にぐっすり眠っていた。盾が再び立ったかもしれない。最早9時半ぐらいだから、この山地の町がその前に少なくとも30分沈黙な夜に陥った。鱒達が先ほどの一時間半を費やしちまった訳か。

 私が咳払いをして話し掛けた。「松澤先生でしょう。算額を解いてるところに、城木先生の側に座ってますね」

「そうだよ。生徒達の解答用紙を採点した後にこっちへ早速着いた。君達三人共の用紙を受けなかったところ、この算額問題を作り上げたんだ。倉崎君はさすがに見下してはいけない人間だ。迷い過ぎてこそ絲島君と渡邊君に助けを求めたり、推測に私の紙を切ったり、補助線を引いたりして、昔の学歴も大したもんだろ」

 控えめを段々抑えて倉崎さんがもっと自ずと返事した。「えっ、はい。小学生と中学生の時、あたしが学級の優等生だからです。あの洞窟で雅實さんの話した自分の幼い頃を聞いたと、なんとあたしの過去を思い出してます」

「学者の魂は姉さんの体に生まれてから存在してるでしょう。中学生になって自分の家族が財政的に困り始めたとしても、優等生としての情勢がまだ健在でしたという。那月さんがそう言ってくれましたよ」と私が快く言った。

「ひひっ、昔那月ちゃんが、何の科目もが上手く行けるあたしに課題を預けて貰ってました。『あんたちゃんと自分でやりなよ』と何度も言ったり、『ちゃんとやったんだ。でも念の為あんたの答えが一番信じられるわ』と何度も返事されたりして、彼女の家庭教師みたいになってしまったのです。但し、あたしが授業を繰り返して課題を案内する一方、那月ちゃんが言い争い方、落ち着き方、刀を持ち方、などの学外のものを教えてくれました。彼女の長所は社会科目と家庭ですから。鍛冶屋の娘さんだし、教科書の理論や机に体を付ける様子に飽きて、体を動かさなければ知識が染みないのです」

「三年前のあの轢き逃げを生き残ったら那月さんはまともに優秀な学者になったのにね。日本が応用した西洋教育は産業革命の影響を浴びて子供達の皆を機械制作の連鎖の方に教育する。理論と服従は何よりも上に重んじる。だから確か、那月さんはそんな窮屈さを耐えられず、自分が何をやってから分かると主張してた。この教育から成長した人間で少数派が不満になって真正の学問を求めるというなら、彼女がその少数派の一人のはずだ」、松澤先生が残念な気持ちで言った。

「倉崎姉さんも那月さんにどうか教わったでしょう。三年間肉体を穢されたなんて女が耐えられないことよ。幸せな人生が一瞬地獄に変わったら普通な人間が二、三ヶ月後自害してしまったのです。姉さんは三年、いや、三年以上かもしれません。でもまだ我慢してて那月さんが他界したにも関わらず誰かが助けに来ると信じてるみたい。姉さんがさっき述べましたね、那月さんが教えた落ち着き方を」と私が言った。

「うん。精神を忍耐強くして鎮めたり、意外の方に問題を解いたり出来たのは那月ちゃんのお陰ですよ」

「えっへん、聞きづらいけど、こう言わなきゃいけません。姉さんはそう偉そうに言っても構いません。でもね、三年間侵害されたりあの薬に中毒までやらされたりしたんです。那月さんが折角教えてあげた努力は、毒害な奴らが水の泡にしちゃってます。三年間は結構長い時だから、恐らく姉さんがもう認めて自分の命を腐ったままさせたこともあったんです」、澁薙君が辛辣に言って倉崎さんの辛い現実を描いた。私達全員が沈黙した。彼が言ったことには間違った所が一切もない。「あの組織は逸材の集まりだろ。人を服従させる為に、恐怖なんかじゃなくて人の心を弄ぶだけで十分です。組織から逃さないよう、姉さんの欲望を掻き立てるのは大事。生まれて初めて天にも昇る興奮は彼奴らの組織だけが齎せる、という思いは組織としっかり結んだ訳です」

 倉崎さんが少し頭で反省して返事した。「越川さんがこの前あたしの心を診断してくれたから反対しません。あの三年間で、色々な男と寝てました。財政的に潰れた家族の為に自分を差し出して借金を返してます。最初にはお父様に裏切られ、お母様が泥棒にお金も命も奪われ、気絶するまで男を障害する反乱の日々。あたしを売ってしまったお父様も腸がばらばらに破れたように苦しんでました。段々、那月ちゃんと丸端君がいかに努力しても、あたし達を救い出す訳にはいけぬ。彼らが約束した新しい繁栄の人生はお父様を良い男から腐った人間に、あたしをも中毒の淵に堕落したのです。しばらくの後に、寝てるところこの病床にあたしがいないと、皆も分かりますね」

「気にしないで、姉さん。医者以外に、誰よりも自分の病状が分かる人はご本人ですから。廊下はずっと灯りを付けます」と言って慰めた降恆ちゃん。「僕達も自分の苦悩をこういう風に解放しなければなりません。どうせまだ大人ではないし」

「こんな体は大人か未成年かまだ分かってませんね。山口さんはどう思います?」、倉崎さんが自分の体は一体どうなのかを知りたがった。

「んー、未成年の体らしいなと。ナギちゃんの言う通り三年間は結構長いし、生まれてから大変建て掛けた体はその三年間の欲望を浴びたら、20歳を取って成人式の振袖を着る資格があったとしても、その体はさっさと欲望からしっかり構わないと永遠に未成年のものです」

「来年貴方が成人式に参るんですけど、少なくとももう六年間を過ごして真正の成人式を迎える可能性があります、倉崎さん。復活の時間は破壊の時間より倍、三倍を要するんです、常に」と城木先生が困難な将来を言い、倉崎さんがもうよく頷いて覚悟を決めたようだ。「それじゃ、算額問題に戻りましょう。前回、小田原の病院で在院中の渡邊さんと取り組んだ三つのパズルは夏祭りの経過を巡って答えを出しました。今回は青木ヶ原の旅を巡ったけど、三つの算額問題の答えを使うことに。『挑戦』の奴は育徳園で見つかった『生きた稲と死んだ稲』問題、『交差』の奴はあの風穴への道の糸口、『返事』の奴はこの『薔薇を噛む鱒』問題。どうして私達が猪、栗鼠、蛍光体などを使わなかったの?」

「多分、夏祭りで先生達のパズルピースの存在は初めて知ってるし、ピースがどう動くか分かるよう、あの三つのパズルは準備体操みたいにしたでしょう」と私が答えた。

「んー、中々合理的ですね。パズルピースの仕組みを知ってこそ、本気のパズルに取り組めるようになります。だが、貴方達『花火團』に対するだけ。倉崎さんはたった今パズルピースの問題の一つしか答えなかったので、渡邊さんの答えには小さい隙間が。他の答えは?」

 純彦君が一枚目のパズルピースを持ちながら答えを挙げた。「夏祭りの間に仕込まれた爆弾を城木先生がパズルピースで警報したんじゃありませんか。夏祭りの敷地を算額問題の図にして爆弾の位置を求めるとは。準備体操のように見えたけど、一定の知識を表す限り、俺達の企画次第でパズルを送ってくれるんです」

「そう。具体的に、貴方達の夏祭りは発想から結末まで夏休みをほぼ過ごしてしまったので、パズルピースが『報告して欲しい』と求めるだけですよ。但し、算額という知識を担当した為、貴方達に何かを挑戦して欲しい。あの組織の人達が偶然に与えた機会は、見逃してしまえば馬鹿馬鹿しい。だが、『挑戦』の奴に限ったでしょう」と賛成して詳しく言った城木先生。

「はい、『交差』と『返事』の奴は夏祭りにおいて松澤先生と私達の一番の寄与を質問した訳です。確か、『交差』の奴は引き札、『返事』の奴はルーレットを面に描きました」、私が応えてパズルピースに映ったものを覚えた。

「新しいゲームっちゅうのは『返事のパズルピース』への答えやん。ルーレットは具体的な例やで」と私の返事をはっきりさせた智埼ちゃん。「一週間で千人ほどのお客様を管理するどころか、物理と数学の屋台のゲームと、化学と音楽の屋台の体験を仕込むのは、ほんまに死んでまうほど草臥れたのです。やさかいバランスを保つように、先生がパズルの難易度を下げなあかんどす」

「その通り。樹海の奴もそのバランスに。樹海は曖昧さの海なので、パズルもその曖昧さに従う。『秋雨の実験場』問題の答えを組み合わせたら『109586』という列です。数字の語呂合わせにすると、『いおくごはろ』になる。那月さんの亡霊が倉崎さんを森などの場所に連れて行く気なら、『いおくごはろ』に関係ある場所は結果でしょう」

 倉崎さんがあの列を呟き続け気付いた。「『いおくごはろ』、『い、お、きゅう、ご、は、ろく』、『いぁ、お、き、ごぁ、は、らく』、『あ、お、き、が、は、ら』・・・なるほど、『青木ヶ原』です」

 私が快く反応した。「森に入って進む気がしますね、姉さん。段々深く入って野獣と戦って姉さんが見つかったのです」

「君が、平川(ひらかわ)の奴に地図を先に取られちゃってその語呂合わせで『青木ヶ原』を考えるしかなったでしょう。彼奴と競った時、紙が破れそうなほど書き続けたのに」と言った降恆ちゃん。

「たまに困難な状況になった時、青春が完全に味わえるの。あの解答に予備の方が隠れたなんて幸いだったよ。あの時赤外線の眼鏡を公にばらしたらやばくなったわ」

「確かにね。森に入って初めて君が眼鏡を使ったんだ。そして今、森に入った憲兵達はあの眼鏡の存在を知ってしまってる。どうかして彼らに世界に伝えるのを止まらせないといかん」と言った松澤先生。

北川(きたがわ)さんと小田切(おだぎり)さんはこれを内緒にしますよ、先生。那月さんの死亡を彼らも調査してるから、彼女の亡霊の姿を見て『森の精霊』と思っ時、気付きを得たかもしれません」、私があの二人の憲兵を信じて返事した。彼らも平川の組に凄く疑わしいが、証拠が見つかっていないし、彼奴らの裏に遥かに大きな影があった気もしたし、まともに明らかにしちまえば笑いものにされたり命をも保証出来なかったりする。

「彼らだったら、俺も内緒にする。軍事機密みたいにね」、笠人君も憲兵を信じた。「どちらかの派閥の反対側に立ったら、あれに自分の仕業を知られるのも、あれの仕業を把握することを知られるのも、許してはならないことだ。北川さん達は後者、俺達は前者の方にいる。あの組織が支える派閥の憲兵達も平川らの技術を隠蔽するんだ、きっと」

「なんか科学界の内戦みたいですね。対立な目的を目指す科学の両派の戦い」、城木先生がこの将来の戦いを楽しみにしているように感想した。「但し、警戒して貰いたいのは、科学は派閥を組むなどの人間らしいものなんかじゃありません。人間のいずれの為にやることを全然気にならず、人間を生かすか死なすか決まる審判です」

 倉崎さんが声を掛けた。「それだけじゃありませんよ、先生。墓に入るまで健やかな体、それとも滅茶苦茶にした体を持って生かすかも決まりますよ、あの科学は。あたしはあの科学の被害者も同然でしょう」

 澁薙君が少し静かになって、皆を眠さから覚ますように話した。「倉崎姉さんを被害者にした平川と五十嵐(いがらし)の奴、僕は話し掛けたんだ。結構楽しい話だったよ。彼奴らもここに入院しただろ、この町のたった一つの病院だから。上階の病室で別々に病床に寝て、僕が挟まったみたいに間に座って尋ねた」

 降恆ちゃんと倉崎さんが一番呆れた。純彦君が慌ただしく聞いた。「お前、あの二人共が何を話した?」

「彼らが話したのは自慢話ばっかり。平川は若狭教授の愛弟子だとか、五十嵐は自分の好敵手の直本さんに気軽に勝って早稲田の管理職に熱心に支えて貰ったとかと。更に、以前の中学校と高学校時代に自分が何を達成したのかとも。勿論、謎の組織について一言も漏らさなかった」

「直本先輩と競争してるなら、彼奴らは倉崎姉さんと厚喜さんの年上かもしれん。或いは、那月さんのお兄さんと同い年」と予想した笠人君。

「彼らは直人(なおと)さんより一年上だ。来年三月に大学卒業する。組織の仕組みなどの極秘なことを話さなかったけど、いつから参加した、どうして奉仕するか、少しずつ教えた」、澁薙君が言い続けた。私達が早速好奇になった敵の経緯を段々明らかにし、まるで幕を数層開けたようだ。倉崎さんが最初に聞きたがらなかったが、澁薙君があの二人を自身で尋問したことで、自分が信用出来るこの『心理学者』を聞いたら良い。「平川は群馬の山地の村に住む農家から生まれ育った。9歳になった頃、雪崩があの村を真っ白に葬って彼の一族を埋め殺し、彼が奇跡的に生存したんだ。家の前に雪を掻く途中で数里遠くで山頂から爆発が聞こえて親と村民を避難しに促した。然し、猟銃か軍隊の手榴弾かの音と勘違いして無視しちゃった。10分未満後、雪の壁が森と村を滅ぼし、間に合わない人を白い棺に入れた。平川は非常に早い脚力によって雪を逃げたけど、端で倒壊したある家の下敷きになった。救命部隊が一時間掛かって現場に突入して彼を含めた数人の生存者を見付けた。前橋に越して緊急治療を受けたのちに、縁の遠い親族と前橋で暮らして『平川』に氏を変更し、中学生になった頃に東京に引っ越ししたよ」

「『平川』というのは前から彼奴の氏じゃなかった。あの村に住んだ頃の元の氏は教えたのか?」と純彦君が聞いた。

「ううん、教えてくれなかった。変な気がするけど、恐らく彼が、元の氏を言い出した度に自分の家族とあの大惨事を思い出して苦しんじゃうと思ってる。或いは、自分の過去を嫌がって新たな正体で生きる覚悟を決めたかも。自白中に彼の声が根を持ってたわ。中学生時代は、群馬の山地生まれによって東京生まれの学生達に中々虐められ、凄い体力を持っても虐めがただ仕様を変えてもっと悔しまされた。だから彼が加入したことに。彼を誘惑したのは誰だと思う?」

「もしかして五十嵐?」と私が答えた。

「そう。悪意塗れの虐めから庇ってあげたのは五十嵐だけだ。それによって二人が親友になって同じ生きる理想を抱えてる。虐める学生達はやむを得ず五十嵐に手を下してはならなかった。徳川幕府時代で武藏國の大名に仕える旗本の武家の子孫で、彼は日本刀を初めて握って竹を切るのを練習して以来、目上の人への忠誠心、和の魂の保守、死を尊く迎えるべく容赦なしの切腹、負け犬への権威の披露といった武士の思想を浸透した。明治初期で国が異常に変遷されたことで、彼の家系はもう冷遇され、尊皇派の過激な人に誹謗され、時勢を追い付かざるを得なかった。一部分が西郷隆盛殿の兵団に加入して九州を大騒ぎにしちゃったり、他が尊皇派の武士の会社に勤めてやがて実業家になったり、残りが帝国軍人になって侵略戦争を熱烈に応援したりした。28年前の西南戦争によって『世間がいずれ変わって運命の輪を回そうとしても、自分が絶対にその輪に潰されてはいかぬ。反面、その輪の回転を自由勝手に変え、沿わぬ人間を淘汰する』という考え方を彼が生み出して、侍の権威を復活させる望みを抱える彼の家族と共に、あの組織に入ってあの考えを叶えようとしてるんだ」

「そうなのか。誰もが武家から生い立ちだった子供達に手を下さないもんね。今の武家は大名の代わりに天皇と政府に奉仕して富豪になった訳で、誰か愚かな者が暴力を振るった場合は、早かれ遅かれ惨めな果てを受け止めることに。平川を虐める人達を仕返ししたこともあったかもしれない、あの五十嵐は」と私が感想した。と同時に、五十嵐が私を何処かで共通点を持つと見た気がした。

「まっちゃん、君も分かってるだろ、武士は皆弱い者を守ったり高尚な理想の為に戦ったりする訳ではないってこと。武家の子も虐めに参加したそうだ。勿論、都会人によって至上主義を見せ付けるなんてない。ただ世間に教わった権威の披露を。多分、五十嵐は平川がどんな必死に抵抗してて友達を要すると理解し、彼を守って『自分の運命を他の運命より高くしよう』と励ましたんだ」

「そしてあの二人は親友になって、生きる理想を叶えてることか。どうりで五十嵐は私のことを知った後に興味深くなった。剣術が上手いのは勿論、『白濱の虐めの女王』と呼ばれた降恆ちゃんを正当の道に戻した私は自分と共通したと彼が思ってたこと」

「生きる理想なんて・・・」と重く反応した倉崎さん。「あたしと他人をこんな状態にしてしまったとは、彼らの我儘な欲望を満たすに過ぎないでしょう。悦楽に落ちたあたしを見た度に、彼らがお父様を奴隷に違いなく見下すのです。意識が少し残った際、一回彼らの言葉がこう聞こえました。『あの風士郎(ふうしろう)じじは最早俺達の鶏になったんだな。鶏は焼いた同類を全然気付かずに食う。お金を一把汲み上げたと自分の娘を床に恍惚のまま倒させる。家族の為に犠牲するというか、情けない言い訳だ。あのじじが愚か過ぎで、俺達が沙也香をもっと搾取し続ける』と」

 半醒半睡になったのに一字ずつ聞こえ、今まで覚えたなんて、倉崎さんはどんな恨んでいるのか分かった。しかも無意識に大きい声で述べちまい、私が再びあちこちを見に振り返った。松澤先生が声を掛けた。「あんな辛辣な言葉を頭の奥から述べた後は、すっきりしたことになるでしょう。私達が憲兵達を述べたところに盾がまた上がったので、我慢せずに。平川と五十嵐は基本的に、人の弱さと愚かさを見て喜ばしくなる人間だ。誰かが自分の輪に巻き込まれたら『世間の運命には私が主となる』と執念する。もしかすると『花火團』を初めて知った時、共通点を見付け、倉崎君をルーレットに落とす球みたいにして君達を挑むんだ。『薔薇を噛む鱒』問題は君達を平川と五十嵐の考え方に考えさせようとするよ。60匹からたった六匹が生き残って産卵穴を守り抜いたなら、『一番強い奴の勝ち』だと考える。但し、川上にもっと深く泳げば穴を守り抜く可能が高まる法則は、『一番賢い奴の勝ち』だと考え直す。『思考に生きる人は世間を制す』、それは彼らの考えだよ」

「だから五十嵐の父親は私達と彼らの組織がなんと意外に同じところを持ってると言ったのです。然し、倉崎さんの扱い方を一見したと、全然違うところがはっきり見えてます。『花火團』を設立して以来、私達六人が善意を重心にすることにしました。善意を持てば命を最後まで楽しんで、塵に還ると後悔も愛惜もなし。何かが出来たり誰かを助けたり誰かに助けて貰ったりする気持ちは自分の命を丈夫に建設してくれますから」、私が『花火團』の最初からの主張を言って、倉崎さんが頭を揉んだ。

 頭を揉まれる倉崎さんも微笑んで感想した。「まったく、そんな単純な望みは雅實さん、純彦さん、皆を何度も賭けさせて酷い目に遭わせても気がそがれません。企画を展開する度にどんな汗と血を流しても失敗してはならないのですね、彼らみたいに」

 智埼ちゃんが楽しく返事した。「はい。絶対に失敗したらあかん・・・ちなみに、あたしも6のもう一つの意味を見付けました。うちだけでのう、青木ヶ原に入ったり風穴で合流したりした時、うちの人数も6に凄く関係あるや。猪と戦ったのはうちの三女子、直人さん、厚喜さんと武蔵野さんで六人。風穴では小田切副司令と那月さんを含んだら12人、6の倍です」

 城木先生がこの気付きをずっと待っていた声で反応した。「だから『返事のパズルピース』の答えは6。さて、貴方達『返事のパズルピース』の形を求めなさい。前回の三枚のピースは右から。今回は左からね。次回とその後は右向きと左向きを交替」

 倉崎さんとの初めての討論会がやっと終わりになった。樹海のパズルピースを組み立てる時間だ。『挑戦』は10S1、『交差』は00S1、それで『返事』は10S1にして『挑戦』の奴と同じだ。象徴的な物を描いた『夏祭り』時代の一方で、『樹海の近道』時代は単純な数字を記入しただけだ。こうして『挑戦のパズルピース』が緑に光り、那月さんを現すことがなく、懐中電灯のように二つの紙製のピースを照らし、前回で使った城木先生の計算機の電灯の代理でこの二枚を紙から世界の一番頑丈な合金に変化した。三つのピースを「カチッ」と鳴るように組み立てたのち、崩壊中の地下で救命隊が兜に電灯を付けて人を連れ出し、一生懸命出ていき、外の仲間の手を掴むという絵が写り込んだ。ピースの二組が出来たし、統一の絵で何処に置くのかが問題だ。

 倉崎さんが感謝した。「皆とこの時まで話し合って有難う。じゃあ雅實さん達旅館に帰って。あたしと松兼さんはしばらく寝ます」

 私が応えた。「はい。もう10時過ぎで帰ります。明日の活動に休息しないと。この鱒の問題のお陰であの活動を思い描けましたよ」

 挿絵(By みてみん)

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