3. お嬢様…?
イケオジが言う。
「クレアお嬢様!ひとまず診察いたしますので、ソファにお座りください!」
頭の中は混乱を極めているが、自分では何も判断が出来ないため、素直にイケオジに従ってソファに座る。
一通り触診したあと、両手を優しく握ってしばらく目を閉じていたイケオジは、目を開いて、安心したように息を吐く。
「クレアお嬢様、お身体は異常がないようです。2日前に階段を昇っている最中に急にお倒れになり、その後ずっとお眠りになっていたのですが……
吐き気や痛みなど、どこか気になる箇所はございませんか?」
と聞いてきた。
看護学生なので、身体の異常があれば自身で感じとることが出来るはず。私自身(というか、この美少女が私であるはずがないのだが?)である、この美少女のからだは異常がなさそうなので、
「はい。どこも何ともありません」
と答えた。
いつの間にか、イケオジと先ほどのメイド服を着た女の子以外にも、メイド服を着た人が3人近くに立っていて、全員が安堵の表情を浮かべていた。
「ノルド先生、ありがとうございます。旦那様には使いを出して、お嬢様がお目覚めになったことをお伝えしています。もうすぐご帰邸されるかと思います」
一番年上っぽいメイド服を着た女の人が言う。
そして私をみて、
「お嬢様。お目覚めになったばかりですが、空腹ではございませんか?……それともまだお休みになられますか?」
と優しく声をかけてくれる。
ここにいるメイド服を着た人達は、みんなメイドなのだろう。水の入ったコップを差し出してくれたメイドからコップを受け取ってゆっくり飲み干し、
「まだ寝ます…」
と答えてまたベッドまで歩いた。
年嵩のメイドさんが身体を優しく支えてくれて、なんだか安心した。混乱していたので心身ともに緊張していたのだろう。
ベッドに入って目を閉じたら、何も考えることなくそのまま意識が深淵に沈んだ。