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11. 医師科

 高等学院は3年間のため、6歳上のアンディお兄様は、すでに卒業して宮廷魔術師となっていた。


 公爵令嬢として、幼い頃からお茶会や式典などの社交の場には参加していたため、同年代の令嬢の友人はいたが、全員もれなく淑女教育に励んでおり、高等学院入学の意志もない。

 入学式に数人いた令嬢や淑女は、いずれもパーティーでの顔見知り程度だった。


 お茶会やパーティーでお話しする、顔見知り以上の公爵、侯爵令息はすでに高等学院に在籍している者が10人程度いた。入学式ではその人達と目があったので、略式のカーテシーをして、挨拶の変わりとする。


 公爵侯爵家は合わせて11家しかないため、同じ年に生まれた高位貴族はそもそも3人しかいない。うち一人は侯爵令嬢でもちろん淑女教育の真っ只中だし、侯爵令息二人も15歳での入学を目指し、邸宅で家庭教師に学んでいた。


 

 華麗かつ荘厳な講堂での入学式を終え、医師科の室へ向かう。パンフレットで医師科一年の教室の場所を確認し、お花を摘んだあとに教室へ入った。

 さほど広くはないが落ち着いた応接室のような教室には、教師が立つ教壇があり、その前に貴族使用の座り心地の良さげな椅子と使いやすそうな丁度いい大きさの机が5つあり、ジグザグとなるように配置されていた。

 すでに4人が席についており、手前の一席のみが空いていたのでそこに座った。

 明らかにじっと視線を寄越す生徒はいないが、座っていると視線を感じた。

 教室に入った時に全員の顔を見たが、社交界で挨拶したことがある貴族の令息達だった。

 公爵令嬢らしく、じっと姿勢を正して座っていると、すぐに教師が入ってきた。

 ダークブラウンの髪色のイケオジだ。

 ノルド先生は白髪白髭だが、60歳くらいである。ノルド先生より10歳くらい若くみえる。

 貴族は国の象徴となるよう、美が要求される。より見た目がいい人達が高位貴族に望まれその籍に入るので、高位貴族ほど見た目が美しい人が多くなる。

 医師になる人は高等学院出身なので皆貴族だ。美男美女ばかりとなるのは当然といえる。

 高位貴族の主治医となれば、貴族家に籍をおいていても仕事が何より優先されるため、社交はしなくてよくなる。社交界への参加がなければ、公爵令嬢でも知らない貴族となる。高等学院の教師は貴族の主治医が数ヶ月ごとに持ち回りで請け負っていると聞いていた。


「ご機嫌よう。これから一年間君たちに基礎医学を教えるアレク・シェラードだ。よろしく頼む。

 今年の医師科の新入生は君達5人だ。自己紹介をたのむ」

 先生はシェラード侯爵家の方だった。


 一番奥に席に座っていた令息が、立ち上がって自己紹介を始めた。私がいる席は末席で反対側が上座となる。貴族は高位のものから話しかける。身分の下のものは声をかけられるまで発語してはいけないというルールがあるが、学院での身分は一律扱いとなるため、そのルールは適用されない。

 高位貴族であるその令息とは、何度か話したことがあった。


「リオル・アレクサンドリナ。アレクサンドリナ公爵家の三男です。よろしくお願いします」

 と挨拶して座った。

 リオルの横に座っていた令息が立ち上がり、

「フレデリクス・キンジェです。キンジェ侯爵家のニ男で15歳です。よろしくお願いいたします」

 と礼をしてから座る。

 間をおいて、隣の令息が立ち上がる。

「レオポルド・ガノリアです。ガノリア侯爵家の長子で18歳です。国政科を卒業しましたが、医師を目指して再度入学いたしました。皆さんよりやや年上ですが、クラスメイトとして気兼ねなくお話しください」

 と礼をして座った。

 私の隣の令息が立ち、

「タイサン伯爵家二男のトマスと申します。

 17歳です。よろしくお願いいたします」

 と深く礼をしてから座った。

 私の番だ。

 立ち上がって、椅子の横に立った。教師が立つ教壇のある中央に身体を向けて

「シモクレン公爵家のクレアです。 12歳です。

 若輩者ゆえご無礼があるかと存じます。

 先生、皆さま、どうぞよろしくお願いいたします」

 と、教師とクラスメイトをゆっくり見つめながら挨拶し、略式のカーテシーをした後にそっと椅子に座り直した。


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