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桜咲イノリ 上等です!  作者: 原田真優
第三章 VSロードオブファントム
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男なんて、いくつになっても子供

「ウチの特攻隊長、ここまでしてくれて、ただで済むと思ってたのかよ!」

 それはあたし、桜咲イノリだ。



「オウよ、龍次を叩き潰すなんて、俺達が許す訳ねーだろうよ」

 うしろには、木刀を握り締めた虎太郎が立ち構えている。

 朝田に石を投げつけたのは虎太郎だ。


「……イノリ……虎太郎」

 静かに視線をくれる龍次。


 お気に入りのリーゼントも、雨でずぶ濡れ。降り続く雨と、滴る血で、見える範囲全てが、グシャグシャだ。

 

「なんだよイノリ、そんなダッセージャージなんか着込んで」

 それでも嫌味を言う余裕はあるらしい。



「ダサくて結構だよ。あんたに気に入られようと、服なんか選ばねーからな」

 あたしは笑いかけた。



 それを受けて、龍次は掻き消えそうな意識を必死に踏みとどめて、屈託ない笑顔を見せる。



「悪かったな……お前の仇を取ること、出来そうにねーや……」

 今まで研ぎ澄ませてた神経が断ち切れたか、それともあたし達の姿を認めて安心したのか、ガックリと崩れ落ちた。




「龍次を放せ!」

 怒りと共に駆け出す虎太郎。

 拘束する男達を押し退け、龍次の身体を受け止める。


「龍次」

 それに倣い、あたしも駆け寄る。

 その場に片膝をついて、龍次に視線を落とした。


 既にその意識はないようだ。ガキみたいな、穏やかな表情で寝入っていた。


 普段の龍次は、男らしさを鼻にかけて、女であるあたしを馬鹿にする。

 爆弾みたいな性格で、一度火がつけば即座に爆発する。


 なのにこの穏やかな笑顔はなんだよ? 

 まるで夢見る幼子。男なんて生き物は、いくつになっても子供だ。


 少しばかり、いじらしさを感じていた。

 


「まったく、とんだ狂犬小僧だな。さっさとつれて帰れよ」

 だけどその朝田の、まるで犬ころをあしらうような台詞でムカつきを覚えた。



「つれて帰れだ? ウチのブッ込み、ここまでしてくれて言う台詞なのかよ?」

 あたしはゆっくりと立ち上がる。

 

「おいおい、俺達は被害者だぜ? その狂犬に、数人の仲間を潰されてるんだ。ホントーなら、あんたのその可愛い顔、メチャクチャに潰してやてもいいくらいなんだぜ」

 おどけるように、腰の位置で両手を左右に広げる朝田。


 その後方では、小暮達ファントムの面々が、ヘラヘラと笑っている。

 数で圧倒するような、あざける笑みだ。


 つまりあたしと虎太郎、たった二人じゃなにも出来ないと、高をくくっているのだろう。



 フーッと浅い息を吐き出す虎太郎。


 髪をオールバックに後方に撫でつけ、木刀片手に無言で走り出した。



「えっ?」

「まさかケンカを仕掛ける気か?」

「冗談だろ?」

 そして戸惑うファントムの面々を余所に、攻撃を開始した。


 虎太郎が髪をオールバックに撫で付けるのは、戦闘開始の狼煙だ。本気モードの表れなんだ。



 

「桜咲! てめーマジで、俺らにケンカ吹っかけるつもりか?」

 朝田が吠える。


 あたしは天に向かって大きく深呼吸を繰り出す。

 

「上等だよ! 祈れ!」

 そして朝田を睨みつけ、飛び出した。


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