姫を守護するナイト
「クソッたれ、てめーらみたいなお遊び集団に、コケにされて堪るか!」
眼前で朝田が吠える。
「お遊び集団で結構。人を裏で馬鹿にして、真っ向から向かってこない外道よりはマシさ」
「なんだよ? あんな写真で悔しがってんのか? 嫁に行けないって泣いてんのか? 所詮てめーは性格ブスなんだよ!」
「うるさい! いつも人をじろじろ見やがって! てめーこそ、女にモテない寂しい青春を味わえってんだ!」
そのあたしの台詞に、朝田の表情が変わる。モテないって言葉に反応したようだ。
「消えろ外道が!」
あたしは朝田の鼻頭を強襲した。
「ゲホッ?」
血が弾け飛び、後方に弾ける朝田。
「ザケンな!」
それでも踏みとどまり、拳を振り出してくる。
「遅いよ!」
あたしはその拳を蹴り落とす。
クルリと回転して、左の裏拳をその頬にぶち込んだ。
「ゲハーッ!」
よろよろと後ずさる朝田。
「女だてらに、調子に乗りすぎなんだよ」
だが突然後方から、羽交い絞めにされた。
「さ……触るんじゃねー!」
それは小暮だ。小暮があたしの背後に回り、その身を拘束したんだ。
あたしは怒りを覚え、裏肘を叩き込む。
「暴れんなよ、飛んだじゃじゃ馬だぜ」
しかしそれは、ほとんど小暮には効き目がない。拘束されてるから、力が入らないんだ。
「クソッたれ、よくもやってくれたな」
その間に、朝田は滴る血のりを腕で拭き取り、剣呑な表情を見せる。
「ボコボコに叩きのめしてやってもいいが、それだけじゃつまらん」
そして一変、にやけた表情を見せ始めた。
あたしは背筋に、冷たい感覚を覚える。
「先ずは楽しませて貰おうか?」
それは男が放つ、独特のエロオーラだ。
朝田が卑下た視線と共に、あたしの胸目掛け、腕を伸ばし始めた。
「この外道が!」
あたしはありったけの声を振り絞った。
有り得ぬ展開に、グッと瞼を閉じた。
嫌だった。龍次ならともかく、こんな豚野郎に胸を揉まれるなんて。
バキーッ! 凶音が響いた。
あたしは恐る恐ると瞼を開く。
目の前に見えるのは、木刀の切っ先。血と雨が混じって、ポツリポツリと滴っている。
「姫に手を出すなよ、この野郎」
それは虎太郎だった。
虎太郎が朝田の背中に、木刀を叩き込んだんだ。
「サンキュー虎太郎。助かったよ」
あたしは言い放った。心から嬉しかったんだ。
一瞬だけ、いつもの笑顔を見せる虎太郎。
「てめーもいい加減、イノリの身体から離れろ!」
そして虎太郎のターゲットは小暮に成り代わる。
「おっとアブねー」
殺気を覚え、あたしの拘束を押し放し、後方に飛び退く小暮。
「げはげは、こんちきしょうが。そんなモンで喜んでる場合じゃねーだろ?」
背中をさすり、むかつくように睨みを効かす朝田。
「どの道てめーらは二人、俺らは二十人以上。勝つ見込みはねーんだぜ? 散々いたぶって、終いには、まわされてお終いなんじゃコラ!」
その朝田の台詞に、多くの男達があたし達を取り囲んだ。
既に朝田の表情に迷いは見えない。本気で怒って、本気であたしを奪うつもりだ。
「二人? ……騙ってんなよ、豚が。俺達は三人。デュランダルなめんな」
低い声が響いた。
「龍次?」
「龍次!」
「少し寝たから、頭がすっきりしたぜ。所詮てめーらは、豚と猿なんだ。龍と虎、ましては祈り姫に、勝てる筈はねーんだぜ!」
それは龍次だった。あれだけの怪我にも関わらず、堂々と立ち尽くし、更なる気を吐く。




