祭りと酒
「明日は年に1度の祭りの日です。お仕事が終わったら、せっかくなので参加していってください」
依頼を終えて帰るのは明後日の予定だ。
今回の依頼は町への荷物運びの護衛だった。
また盗賊に襲われでもしたらという思いは杞憂に終わり、特に何事もなく荷物を運び終えて街に戻ろうというところだった。
「私、お祭り大好きなんです! 参加しましょう!」
私は年に1度、故郷の村と近隣の村が合同で開くお祭りが好きだった。唯一の外の人との交流の場だったし。
というか、娯楽が少なかったので楽しみがそれくらいしかなかった。
「・・・・・・お前、酒飲めるのか?」
「飲んだことないです」
ジェスタさんから聞かれる。
一応、国では15歳で成人扱いだが、酒を飲むことは18歳からと定めている。
私は当然、しれっと嘘をついた。
(まあ、村ではバレないように飲んでたけどね)
当たり前だが、ルールに厳しい場所だったら罰則がある。
しかしながら祭りなどではそんなルールは取っ払われる。
飲みたいやつは飲めばいい、そんなところだ。
「自信があるなら、大酒飲み対決にも出てください。それに祭りの期間中は参加費30ゴールドで屋台は飲み放題ですので」
「ふうん。レイチェルが見ていきたいというのなら、せっかくだし少し滞在していこうか」
この町は、そこそこ大きな町で、たぶん人口は千人くらいいると思う。
私の住んでいた村とは規模が違う。
なので、私は明日のお祭りがとても楽しみだった。ワクワクでその晩はよく眠れなかった。
翌朝祭り当日、準備が終わり、祭りの開始の合図に鐘が大きく何度も鳴らされる。
通りには屋台が立ち並び、老若男女問わず鮮やかな色の着物で着飾っている。
町の真ん中の広場では楽器の演奏や歌声が響いている。
私はその広場にいた。
(すごい人の数! どこから回ろう?)
芋洗い状態というほどではないものの、油断していたらすぐに財布でも盗まれそうな人混みだ。
もちろん、不要なお金は宿に預けている。
セローさんとジェスタさんは2人とも適当に回るから気を付けて行ってこいとのことだ。
(2人も見てないし、お酒飲もうっと)
私は屋台の飲み物が飲み放題になるチケットを広場の端にあるテントで買う。
一応、普通のフルーツジュースなんかも飲み放題らしいが、これを買う人はお酒目当ての人がほとんどだろう。
数人の並びの列に混じって並んで、特に何も言われずに買うことができた。
(えっと、大体お酒1杯が5ゴールドから20ゴールドくらいだから、4杯くらい飲めば元が取れる!)
貧乏性の私は飲み放題の元を取るのが目下の目標になった。
(とりあえず高いやつ飲んでみようかな?)
「すいませ~ん。このヨモギのやつくださ~い」
看板には定価は18ゴールドと書いてある。
そう注文して、店員の人から渡されたグラスには黄色と緑色の中間くらいの色の液体が入っていた。
グラスの大きさはちょうど両手で包めるくらいで小さい。
屋外に設置された近くの椅子に腰かけ、飲んでみる。
(!!!!)
恐る恐る一口、口にしてみたが・・・・・・
正直、とてもじゃないけどグラス1杯分飲み干せる味と香りじゃなかった。
(苦いし、すごい葉っぱの香りだし、これが一番高いの!?)
度数も強いのか、喉が焼けるように熱い。
「レイチェル、そんな顔をしてどうした?」
(やば、セローさんに見つかった!)
「いやいや、なんでもないですよ~」
私はとっさに笑顔で取り繕う。
「うん? それは酒じゃないのか? まあ君も分別はある方だし好きにすればいい」
「え? はい。わかりました」
怒られるかと思ったけど、意外にもお咎めなしだった。




