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魔法の練習台

(つまり・・・・・・毒を流し込んだとか?)


 おそらく私の推測は当たらずとも遠からずという感じだと思う。

 何をしたか教えてくれないのは悪用されないためだと思うけど。


(付き合いの短い仕事仲間には教えられないようなことっていうことなのかな)


「教えてくれないのは構わないんですけど、その理由は教えてくれないと納得できません!」

「そうだな、では理由だが・・・・・・君が魔法を使えるからだ」

「・・・・・・はい?」

「それ以上は無い」

「魔法を使えると、ドラゴンに何をしたか教えてくれないと?」

「ああ。あとは君が考えろ」


 というような回答をされたので、私は寝床のテントの中で考える。


(全然わかんないや。寝よう)


 まるで眠れそうに無いのがすぐにわかったので、前にセローさんから貰った睡眠薬を飲んで無理やり眠りについた。


「う~~ん。今日も見張りかぁ」


 朝に起きてテントから出て、伸びをしながら独り言ちる。

 早くもドラゴンの死骸には野鳥が住み着いてしまいそうだった。

 そういうことで、私たちの仕事はドラゴンを汚すものを追い払うことになった。


「ちょうどいいじゃないか。レイチェル、風の魔法をぶつけて野鳥を追い払ってみろ」


 簡単な朝食を摂った後にセローさんから私へ指示がくる。

 

(やってみよう)


「風よ、私の思い通りに吹け!」


 杖を構えて、超初級の風魔法を使う。呪文も本で読んだそのまんま。

 杖の先からヒューっと、そよ風より少し強い風が吹いて、ドラゴンの上にとまっている鳥を襲った。

 ・・・・・・襲うというほどでもない。煽った。

 だが鳥は驚いて飛び立った。魔法で追い払うのは成功だ。


「まあぼちぼちだな。風の刃を出すにはほど遠いが」


 見守っていたセローさんが感想を述べてくれる。

 私は慣れない風魔法を使って少し体がダルい。


「セローさん、まだ風魔法は何回も撃てません」

「そうか。経験が足りないようだな。2時間で10回くらい使っても立っていられるくらいに練習しろ」


 それからというもの、日が暮れるまで鳥がとまっては魔法で追い払うのを繰り返していた。


(疲れたー。よく寝れそう・・・・・・)


 寝袋に潜り込んだらすぐに睡魔が襲ってきた。

 翌朝、


「順番に村へと戻ってシャワーでも浴びてこよう」

「いいんですか!」

「そろそろ汗くらい流してきてもいいころだろう。ゆっくり食事もしてくるといい」


 セローさんの提案に大喜びの私だ。

 携行食にも飽きてきたし、息抜きには丁度よいころだった。


「村長の家に行けばもてなしてくれるだろうよ」


 私は手早く最低限の荷物を持って、村へ戻る。

 村長さんの家でシャワーと食事をいただき、ドラゴンの死骸の元へ戻る。

 が、問題発生。


(戻る道がわかんない!?)


 行きはジェスタさんがいたし、戻りは村が見える方へ行けばよかったけど、ドラゴンへの道筋は覚えられなかった。


(これ、どうすればいいんだろう? 村で待ってればいいのかな?)


 山林への入口で私はどうするか迷っていた。

 すると、道の先から見覚えのある人影が迫ってくる。


「やっぱセローの言ってた通りか。俺も飯食ったら一緒に戻んぞ」

「あ、道案内に来てくれたんですね・・・・・・」


 信用されていないのは少し残念だが、私ではどうにもならないので助かった。

 ジェスタさんが諸々を終えるまで待ってから出発して、ドラゴンの元へと戻った。


「やはりジェスタが必要だったようだな」

「はい・・・・・・助かりました」


 ジェスタさんと共に戻った私は、今日も鳥を追い払って過ごした。

 翌日の昼前、ついに解体職人の方たちが私たちの元へたどり着いた。

 解体の人たちは、10人以上いるかという大所帯だった。

 私たちの見ている前で、次から次へと解体が始まっている。

 それを横目に撤収作業をする私たち3人。


「ずいぶんと数が多いですね」

「道案内に力自慢に魔法使い、大型の魔物は解体作業に様々な技能が必要とされるからな」


 筋骨隆々の人が巨大な包丁で解体し、解体したその翼を魔法使いの人が浮かせて大型の荷車へと乗せている。

 確かに1人や2人でどうこうできる作業ではなさそうだ。


「運ぶ金額を調整してくる。2人は村へ戻って帰る支度をしておいてくれ」


 セローさんは解体職人のほうへと話をしに行った。


「じゃあ戻りましょうか」

「そうだな。金はアイツに任せときゃあ安心だ」


 私たちは村へ戻り、セローさんが戻ってきたところで馬車を使って街の事務所へと帰ったのだった。

 後日、


「では、こちらが今回の作業の内訳と差し引いた金額です」

「・・・・・・はい、確かに。また頼むよ」


 事務所でセローさんはこの前の解体職人の方と書類のやり取りをして、革袋を受け取った。


「思ったより高かった。今日の夜は俺の驕りだ、下から好きな物を頼むといい」


 職人が帰ったあとに私たちに革袋の中身を見せてくれる。


「えっと・・・・・・じゅう・・・・・・にじゅう・・・・・・31万ゴールド!?」


 とんでもない大金が手に入った。


(ドラゴンってこんなお金になるんだ・・・・・・)


 私は驚き半分、心配半分の感情でこの仕事のことを深く考えるのだった。

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