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ユニコーンの角

「ユニコーンの角、ですか?」


 セローさんが聞き返す。

 薬師の人は答えを返す。


「ええ。1本でいいんです。開業するにあたって、どうしても手元に置いておきたくて。なんとか手に入りませんか?」

「ユニコーンは国で保護されていて、一般的に入手困難だということは承知していますよね?」

「もちろんです。だが、すぐに欲しい。ですので、相場の2倍の10万ゴールドをお支払いいたします」

「・・・・・・わかりました、1週間ほどで手に入れてきます」


 話はまとまったみたいだ。

 薬師の人は契約書にサインをして、何かもう1つ書類に書き物をしてから一礼して去っていく。


「そういうことで、ユニコーンの角を手に入れる」

「セローさん、なんでユニコーンの角なんて欲しがるんですか? あんな大金を払ってまで?」

「ユニコーンの角というのは、煎じることで万病に効く万能薬として有名な代物だ」


 私も絵本の中でユニコーンという生き物がいることは知っている。


「その角の効能から、乱獲される危険があり、生息域全体を国が管理していて許可なしで狩ることを禁止されている」

「確かに、そんな便利なものだとお金欲しさに狩る人が多いでしょうね」

「もちろん、角以外の部位も希少で、革や肉もとても高値で取引される」


 セローさんが高価、という場合は本当に一般人では手に入らない値段を指すことが多い。


「ジェスタはいつものセットを頼む」

「あいよ」


 そう言って、一足先にジェスタさんは事務所を出ていく。


「この依頼、初めてじゃないんですか?」

「そうだな。今までで数回受けている。ところで、君は処女か?」

「え? はい、たぶん?」

「なんで疑問形なんだ?」

「今までの間に2人に気づかないうちに襲われてたら、と思いまして」

「ないから心配いらない」


 絵本の中でも、ユニコーンは穢れなき無垢な人間にしか近づかないと書いていた気がする。

 なので、それを聞かれたのだろう。


「じゃあ君は道中の食料を調達してきてくれ。5日分だ。余りは魔導書でも買うといい」


 そう言われて、いつも通り100ゴールドの硬貨を渡される。


「俺も少し準備がある。全員戻ってきたら出発する」


 私は市場に行って、干し肉、干し魚、干した果物、瓶入りの野菜の酢漬け、乾パンなどを調達して、事務所に戻る。

 食事に幅を持たせるのは当然、飽きるからだ。

 事務所に戻って、2人を待つ。


(たった1本の角で10万ゴールドの価値かぁ・・・・・・)


 10本でなんと100万ゴールド、1日100ゴールド使う生活でも1万日生活できる。1年は360日、人間の寿命は70年くらい。下手をすると一生分近い。

 この街の一般的な月収は4000ゴールドほどらしい、それを考えるとユニコーンが国の管理下にあるのも当然の話だ。


「セローは?」

「買い物だと思いますけど?」

「透明薬が高いからどうするか聞かねぇといけねぇ」


(前に使ってた姿が消える粉のことかな?)


「いくらくらいするんですか?」

「2000ゴールドだとよ。作れるやつが少ないからって足元見やがって」

「高っ! そんなものゴブリン討伐で使ってたんですか?」


 ポンポン使ってたら普通に赤字だ。依頼1回で2000ゴールド使ってたら経費のほうが高くなる。


「あれは貸しがあったから10回分貰った残りだ。セローは報酬が金じゃなくても依頼受けやがるからな」


 ジェスタさんは自分の椅子に座って頭を掻きながら答える。


「昔っから頼られたら絶対に助けに入るんだよな。あいつ」

「へー。でも、自分から助けないんですね」

「なんか線引きがあるみたいでよ、そこは俺にもわかんね」


 動く理由はお金でもないし、自分から助けるヒーローでもないらしい。


(でもセローさんらしいかも)


 カランという入口のベルが鳴る。セローさんが帰ってきていた。


「準備はできたか? 遠いから早く出発するぞ」

「透明薬を買ってねぇんだ。2000ゴールドだと、どうする?」

「ふむ・・・・・・」


 セローさんは何か考え込む。

 そして、本棚にあった高級そうな革張りの本をめくる。

 パラパラと本をめくり、目当てのページにたどり着いたようだ。指で文章をなぞっている。


「透明薬は必要だ。ジェスタ、どこで買おうとした?」


 本をパタリと閉じて言う。


「あん? フミワの薬屋」

「ならば出発前にもう一度行こう。ついでにこいつを渡せば安くなるだろう」


 セローさんは、いつぞやかに採取しに行った薬草を1掴み分持っていた。

 たくさん生えていたけど、そこそこ希少なものだったらしい。

 私たちは出発前に薬屋と呼ばれる店へと向かう。

 私とジェスタさんは店の前で待っている。


「香水と透明薬で1000ゴールドまで値切った」


 セローさんは店から出てきて商品の入った紙袋を見せてくる。

 半額でオマケ付きになっているあたり交渉上手らしい。


「香水って何に使うんですか?」

「君が使うんだ。ユニコーンなどの動物に好まれる匂いらしい」


 荷物を持ってユニコーンの角の採取へ出発だ。

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