決着の剣
「...ば、馬鹿、な」
「ごめんね。せめて、安らかに眠って」
セインが突き刺していた剣を引き抜くと、シャルムは力が抜けたようにそのまま地面へ倒れ込んだ。
勝負あり、か。
「シャ、シャルムゥゥゥゥ!! てめぇ、絶対許さねぇ!」
その一部始終を見ていたスパードは、大声を上げてセインへと迫る。だが、
「おい、相手を間違えるな。お前の相手はこの私だ」
その進路を妨害するように、イヴェルがスパードの前に立ちはだかった。
「どけぇ!くそアマ!てめぇごとき、ワシの敵じゃねぇんだよ!」
スパードは余程急いでいるのか、手加減など考えてもいない恐ろしい速さで剣を振るう。
「そうか。ならば試してみるといい。今の私は先ほどまでの私とは違うぞ」
イヴェルはそれを、軽い剣裁きですべて捌き切った。
「!!?」
「終わりか?では、私から行くぞ」
まさか防がれると思っていなかったのか、その剣戟を全て捌き切ったイヴェルにスパードは目を見開いて驚く。その隙をつき、イヴェルは攻撃に転じる。
「グッ、グウゥ...」
それを受けるスパードの表情にはまるで余裕がない。
それもそのばずでイヴェルの剣戟は先ほどまでと比べて数倍速く、その分威力も向上している。スパードの表情も演技ではないだろう。
このままいけばイヴェルの勝利は間違いない。
誰もがそう思ったとき、
パキンッッ
「「「!?」」」
イヴェルの剣がその中心から真っ二つに折れた。彼女の剣戟に耐えられなかったのだろう。
折れて宙を舞う剣を見たスパードは、その途端に勝ち誇ったような顔をする。
「...フ、フハハハ!神はワシに味方したようだな!死ねぇぇぇ!」
途中で折れた剣を持つイヴェルに、スパードは手加減なくその剣を振り下ろす。
ガキンッッ
そんな金属と金属の擦れ合う音が鳴った。
「は?」
完全に己の勝利を確信していたスパードは素っ頓狂な声をあげる。
なぜならイヴェルの剣は既に折れていて、その折れた剣なんかで”剣技”スパードの攻撃を受け止められるはずが———
「剣が折れようが関係ない。剣は、ここにある」
しかし、スパードの剣を受け止めるイヴェルの右手には、一振りの剣があった。
それは折れた剣ではなく、赤い装飾の施された美しい剣だ。更にそのイヴェルの周りには、色から大きさまで多種多様な剣が何十本と浮かんでいた。
そして、その全ての剣先はスパードの方を向いている。
イヴェルの固有スキル、剣創生。
文字通り剣を一瞬で生成することの出来るスキルで、剣の個数、形状は自分の思い通りに調節可能。更にそれら剣は自身の思うままに操ることができる。剣聖である彼女にぴったりなスキルだ。
確か小説では、イヴェルが卒業したあとに取得するスキルのはずだが...
「ちょ、ちょっとやめ——」
「いけ」
宙に浮かぶ数十本の剣は、イヴェルの声に合わせて一斉にスパードに向かって飛んでいった。
「グゥぅァァァァァァァァァァ!!」
流石のスパードと言えど、それらの全てを防ぐことはできない。宙を舞う剣達の一斉攻撃を受けたスパードは、血だらけになりながら地面にその膝をついた。
「...」
顔を俯かせているスパードに、イヴェルが歩いて近づく。
次の瞬間、
ブォァァァ!!
そんな音と共にイヴェルの姿が炎の中に消える。その炎の出どころには、スパードの姿がある。彼が火の上級魔法を放ったのだろう。
「!!?」
「同じ手が私に通じると思ったか?」
しかしスパードの放った炎は、イヴェルが剣を大きく横に薙ぐことで跡形もなく消失した。彼女は最初から読んでいたのだろう。
「ア、アァ...」
「お前はここで確実に仕留める」
イヴェルはその剣を三日月型に薙いだ。
そして、スパードの首は胴体から離れ、そのまま地面へと落下した。
ウォォォォォォォォ!!
その瞬間、観客席から大きな歓声が上がる。七魔仙の二人を倒したのだ。無理もないだろう。
「...セインもイヴェルさんも勝ったみたいだな」
「はい、そうですね」
「それじゃあすまないが、俺は少し寝る。実は眠くて、仕方ないんだ」
「そうですか。でしたらこのまま寝てしまって大丈夫です。......アルトさん、死なないでくださいね。もしアルトさんが死んじゃったら、私も死にますから」
「ははは...そうか。なら、死ねないな」
「はい、死んでも私からは逃げられませんから。では、お休みなさい」
体力と気力の限界に迫っていた俺はそんなアーネの恐ろしい言葉に突っ込むことも出来ず、そのまま深い眠りへと落ちていった。




