第38話 意思を継いで
アルバードファミリーとの戦いを終え、スルガ達はネクレスの所へと向かっていた。
「団長。先程の技って……」
「あぁ、飛燕万丈の事かい?」
リアナは凄い勢いで首を縦に振る。
「あれは、遠い東の国の居合って技さ。本来なら、専用の剣があって、こういった両刃の剣は不向きな技なんだよね」
居合は刀であってこそ、技本来の力が発揮される。
反りのない剣では、抜き放つ動作の際に引っ掛かりが生じて上手く出来ない。
「それなら何故そんな技を……?」
怪訝そうにリアナが聞くとスルガは苦笑する。
「向いてないはずなんだけど、自分にはこの技が一番手に馴染むんだよ」
「……」
リアナは暫く考え込む様に沈黙した。
そしてちらりとスルガを見る。
「私にも出来ますか?」
「やってみれば良いよ。ただし見た目以上に難しいぞ」
スルガは何処となく嬉しそうだった。
それがまた自分に対して向けられるかも知れないのに。
もしかすると最初からこうなる事を期待していたのかも知れない。
「絶対に体得してみせます」
簡単ではない事は、目の当たりにしたリアナ自身も理解していた。
それでもスルガを越える為に必要な努力は惜しまない。
「そうまでして強くなりたいのはどうしてなんだい?」
「お父様を倒す為です」
リアナは即答した。
「そろそろ命を狙うのは飽きてきませんか?」
「飽きません」
その言葉に一切の迷いはなかった。
スルガは大きな溜息を吐く。
「そんな溜息ばかり吐いていると幸せが逃げますよ」
「娘から命を狙われている時点で幸せは行方不明だよ」
そんなやり取りをしている中でも、リアナは無表情だったが、何処か嬉しそうにも見えた。
スルガはもう一度溜息を吐きながら、頭を掻く。
「団長」
「なにかな?」
「セリナちゃんは大丈夫でしょうか?」
村を無くし、両親を失った少女。
意識を取り戻した時、全てを悟る事となる。
「……彼女の辛さは自分達には理解はしてあげられない。だからこそ、しっかりと寄り添い、支えてあげる事が大事なんだよ」
辛かった、可哀想、大変だった、そんな言葉だけでは本当の意味で彼女の辛さは表す事が出来ない。
小さな子供が抱えていい問題ではない。
だが、現実は容赦なくセリナに試練を与える。
「彼女が間違った道を進んでしまわないようにね」
不条理な世の中に対しての復讐か。
周囲の人間に対しての嫉妬か。
あの始末屋が始末屋としての道へと進まざるを得なかったような、悲しい選択を彼女にさせないように。
「そう……ですね。私達がセリナちゃんを支えてあげないといけませんね」
リアナは小さく頷いた。
自分の父親がスルガでなかったら。
あるいは、常に辛い環境に身を置き続けていたら。
スルガの背中を見てきたからこそ、今の自分がある事を実感していた。
だからこそ、今度は自分が誰かを支えたいと思えた。
「さて、ネクレス君はしっかりと彼女を守ってあげられているかな」
人の心を理解していないネクレスに、セリナが目を覚ました時にどう対処するのか、それだけが不安だった。




