28-① あっそびーましょー。いーやーだ。
ポーカーゲームは続いていた。
ゲーム毎にチップは大きく動き、いつも波乱を呼ぶ。
ケイトはこの違和感に気づき始めていた。
(俺、ポーカーなんて始めてしたっすけど……。こんなに毎回、誰かの手に、充分ゲームに参戦する余地のある強いカードがくるなんて……。おかしいっすよね?!……これも多分、友達集合の力のせい……!多分、最初からイーネさんと……。タトラスさんは気づいていたのかもしれないっす……!ほぼ毎ゲームに参加してる……。俺はチキりすぎて、強制ベット分もってかれるばかり……!それじゃ……、この力の下ではダメなんだ……。"楽しく遊ぼう"。よくゼット君がいってた言葉……。遊ばなきゃダメなんだ……!)
そう考えるケイトの手には{9スペード}{5スペード}の2枚がくる。
既に、前のボルドーとイーネがコールを宣言している。
ケイトが言う。
「……コール。」
そして、次のタトラスもコール。
(……まさかのリンプ……。)ケイト
リンプとは、だれも賭け金を釣り上げずに、強制ベット額のみでゲームがスタートすることを言う。
(……みんな大したカードは来てないのか……?)ケイト
場に3枚の共有カード{6スペード}{7スペード}{3スペード}が開示される。
つまり、ケイトの手には、数字はバラバラだが、マークが同じ、スペードの5枚が揃った。
(……こ、この時点でフラッシュが役としてできたっす……!)ケイト
すると、イーネが言う。
「……ベット200。」
次に、ケイトが思考して言う。
(……ここは強い手だと見せていいところ……!)
「…………コール。」ケイト
次にタトラスが言う。
「コール。」
タトラスの手は{5ダイヤ}{4クローバー}。つまり、タトラスの手にも、マークはバラバラだが、数字が連続しているストレートの役が出来ている。ケイトの役よりも弱い役だが、勿論、プレイヤー達には分からない。
次のボルドーがフォールドし、イーネ、ケイト、タトラスの3人での試合となる。
共通カードが1枚めくられ、{Kハート}が開示される。
タトラスが言う。
「ベット300。」
それにイーネが「コール。」を宣言する。
ケイトに順番が回る。
(……れ、レイズしてもいい…………!絶対……!絶対……!)
「…………コール。」ケイト
これで、タトラスのベット額に合わせて最後のカードが開示される。{3クローバー}。
すかさずイーネが言う。
「ベット500。」
ケイトが思考する。
(……ベット額がでけぇっす……。俺のチップ数だとオールイン……。くぅぅ…………。)
ケイトが言う。
「お、オールイン……。」
これでケイトは、自分の持ち点全てである1000チップを出してゲームに望む。
負ければ、もうこれ以降のゲームには参加できない。
タトラスにアクションがまわる。
タトラスにしては長考しているようだった。ポーカーにおいて、ストレートの役も十分強いからだ。
少し時間が経ってタトラスが言う。
「……フォールド。」
これで、イーネとケイトの一騎打ちとなり、互いの手札が明かされる。
イーネの手札は{3ハート}{3ダイヤ}。同じ数字が4枚の役。
「……ふぉ、フォーカード………………!」
ケイトのフラッシュよりも強い役の為、ケイトの敗北が決まった。
イーネに2800チップが移動する。
イーネ3200チップ、タトラス700チップ、ボルドー2100チップ。
ケイトはイーネに向かって言う。
「す、すみません……。イーネさん……。」
「問題ねぇよ。」イーネ
「…………うん。ですよね。そんな気がしてたっす……。」ケイト
すると、ディーラーであるゼットの視線がイーネ、ケイト、タトラス、ボルドーの背後に移った。
ゼットが言う。
「おっと。お客さんだ。」
4人の視線も背後に移る。
「………………なっ…………?!」イーネ
イーネが驚きの表情を浮かべる。
暗闇の中から1人、こちらに近づいてくる男性の姿。
「何だ。結局、皆んなで遊んでたの?」
そんな男性の言葉にタトラスが返す。
「遊ぶ気なかったってのぉー。」
ゼットも言葉を返した。
「いやー!今日はまぢ懐過ぎません?!久々っすねぇー!」
それに、暗闇から姿を現したガドが言葉を返す。
「久しぶり。」
ガドはそのまま、タトラスの背後から持ち点を確認するように顔を覗かせている。
ケイトは、始めてみたガドをまじまじと見ていた。
(……この人が……。ガド……。なんか……。もっとイカつい感じの人かと思ってた……。なんか……。優しそう……ってか……。……………………いくつ?………………年下?……タッパはあるけど……。顔が子供っす……。こんな人が、イーネさん達の……。)
そう思って、ケイトがイーネに視線をやると。
ケイトは背筋を凍らせて姿勢を正した。
怒りのこもった表情でガドを睨みつけるイーネが、そこにはいた。
ゼットが、ガドに話しかける。
「いやー!まだ生きてたんっすねぇ!死んでると思ってましたよっ!!」
それにガドが言葉を返す。
「ははっ。ゼットもね。」
「俺っすか?俺、まだ当分は事故らねぇ限り生きてそーっすよ?!寿命賭けて勝ったんでっ!相手死んだっすけどね!あはははっ!!」ゼット
仲の良いゼットから、とんでもない発言が飛び出して、ケイトは体を固まらせたまま驚いた顔をする。
ゼットが言葉を続ける。
「で。何っすか?何か俺に用があったんっすかぁ?!」
それにガドが答える。
「うーん。用っていうか……。今、皆んなで一緒にいるから声かけに来ただけだよ。」
「へぇっ!そりゃ面白いっすねぇ!なんか、パーティでもやりましょうよっ!!」ゼット
「ははっ。それもいいね。そーしよっか。」ガド
それにタトラスが苦言を呈す。
「いや!それもこれも!これに勝ったらね?!こっちが負けたらゼットの奴、核師側につくそうっすよ?」タトラス
「そーなの?」ガド
「あははっ!そーだったそーだった!!この調子じゃ、そっちでパーティできなそうっすね!!」ゼット
「負けてるの?」ガド
「…………その"白いの"見て分かりません?まじ抜け目ねぇ……。よっぽど強い手の時しか勝ててねぇっすよ。」タトラス
そこで、ガドの視線がイーネに移った。
イーネとガドの視線合う。
「……。」
「……。」
しかし、何の言葉も交わされず、ガドが視線を外していう。
「タト。変わるよ。」
「……ええ?!」
タトラスが驚いて言葉を返す。
「……代打ちっすか?……。ここのルール的にありっすけど、せめてボルドーと変わった方がいいっすよ?俺、今持ち点すくないんで。」
「いいよ。それで。」ガド
「……。」
すると、タトラスが立ち上がってガドと席を交代する。
ゼットが言う。
「いやー!面白くなってきたっつすねぇっ!!やりましょーよぉー!!!」
イーネ、ガド、ボルドーに手札が配られる。
タトラスは、ガドの座る椅子の背もたれに肘をついて、ガドの手札を覗き込んでいた。
(……あ。ゲームに参加してないから見ていいのか……。)ケイト
ケイトはそう思って、横のイーネの手札を確認する。
(……!{Aクラブ}{Aスペード}……!)
ケイトはイーネの邪魔にならないように、必死にポーカーフェイスをつくる。
すると、ガドが言う。
「オールイン。」
オールインとは、このゲームに、持ってるチップの全額を賭けることをいう。
「まじか。」と言ったのは、タトラスで、ガドは手札を表向きでテーブルに投げた。
ガドの手札が露わになり、{Aダイヤ}{Qダイヤ}が並んでいる。
ガドは、タトラスが元々持っていた持ち点の700チップを全て賭けている為、必然的に、このゲームから降りるという選択は無い。
次にボルドーが言う。
「コール。」
そしてイーネが言う。
「コール。」
場に3枚の共有カードが開示される。
{8ハート}{Jダイヤ}{Kダイヤ}。
「ひゅぅぅーう。」
ゼットが口笛っぽい言葉を漏らす。
ポーカーで最も強い役。それは、10・J・Q・K・Aが同じマークで存在する、ロイヤルストレートフラッシュ。
"10のダイヤ"が出れば、ガドにその役が完成する。
すると、ボルドーが手札を表向きでテーブルに投げ捨てて言った。
「僕もオールインすべきですかね?」
ボルドーの手札は{7スペード}{7クローバー}。つまり、ガドが勝ちそうな場面の為、自分の持っているチップをガドに移す為に、全額賭けるべきかと聞いている様だった。
ガドが言う。
「いや?まだ負けるかも知れないし。」
「……。」
ゲームはそのままの状態で進む。
もう1枚、場に共通カードがめくられる。
出たのは。
{10ダイヤ}。
ガドのロイヤルストレートフラッシュでの勝ちが決まった。
イーネが{Aクラブ}{Aスペード}を表向きでテーブルに投げる。
ガドに2100チップが移動する。
イーネ2500チップ、ガド2100チップ、ボルドー1400チップ。
イーネがガドに向かって言う。
「……………………何をした……。」
それにガドが答える。
「ゼットの能力下ではイカサマは一切出来ないよ。運"は"実力の内だ。」
「…………。」イーネ
またイーネ、ガド、ボルドーに2枚の手札が配られる。
イーネの手札は{5スペード}{5ダイヤ}。
ボルドーが300にレイズし、イーネとガドがコール。
場に3枚のカードが開示される。{Qダイヤ}{5クローバー}{7クローバー}。
イーネの手札には5のスリーカードの役が出来ていた。
ガドが言う。
「ベット300。」
それにイーネが間髪入れずに返す。
「レイズ600。」
それにボルドーがフォールドし、ガドが言う。
「いいよ。コールだ。」
これでイーネとガドの一騎打ちとなる。
場に、もう1枚のカード{Jクローバー}が開示される。
イーネがガドに話しかけた。
「…………何がしたいんだ……。お前は……。」
それにガドが答える。
「あ。やっぱり。アンカは何も言ってないんだ。」
「…………何だと?」イーネ
ガドが言う。
「向こうの世界に行くのに、道を繋ぐのを手伝って欲しい。それだけだよ。」
その言葉に、イーネは僅かに動揺したようだった。
それを見たガドが目を開いて言う。
「……驚いた。……記憶。あるんだ。てっきり覚えてないと思ってたよ。……これだから白は嫌だね。」
「…………。」イーネ
(何の話ししてるか……分かんないっす……。)ケイト
ガドが続ける。
「手伝ってくれたら、政令も取り下げさすし、ルアの呪いも解除するよ。」
「………………っ…………!」イーネ
ガドが続けて言う。
「ベット800。」
(……でかい……。)ケイト
これでガドは、1700/2100チップを賭けてることになる。
「…………コール。」イーネ
場にもう1枚のカード{Aダイヤ}が出る。
ガドが言う。
「オールイン。」
「…………っ……!」イーネ
ゲームが開始されてから、始めてイーネが顔を顰めてみせた。
ガドが言う。
「エースかクイーンを持ってる?」
「…………。」イーネ
(……相手のカードを聞くなんて……。こんな攻め方ありなんっすね……。)ケイト
ガドが言葉を続ける。
「ファイブの2枚なら……。やめた方がいい。」
「…………。」イーネ
(なんっすか?!この人!言い当てて……!って、俺が動揺したらいけないっ……!)ケイト
少しの間をあけて、イーネが言う。
「……フォールド……。」
これでガドの勝利が決まり、イーネ800チップ、ガド4100チップ、ボルドー1100チップとなった。
ガドがテーブルに手札を投げ捨てすると、弾みで2枚のカードが表を向いた。
{Aクローバー}{3スペード}。
(…………Aのワンペアのみっす…………!)ケイト
「あぁ。…ごめん。」ガド
「……クソが。」イーネ
(……イーネさんがブラフで負けた…………っ!)ケイト
また、3人に2枚のカードが配られる。




