27-⑤ 遊ぼうぜぇっ
全員が強制ベット100チップを支払ってプレイが始まる。
最初のアクションはボルドーだった。
ボルドーの手は{Kクローバー}と{10スペード}。
(……微妙だけど。)
「レイズ300チップ。」
レイズとは、賭け金の上乗せのことをいう。
それにタトラスが茶化すように言った。
「ひゅぅー。やるねぇ。」
「ちんたら戦ってても仕方ないじゃないですか。それに。こっちはプレイで負けても……。」ボルドー
ボルドーは、イーネとケイトに視線をやる。
「バトルで勝てるんですから。」
ポーカーは心理戦。相手に、このゲームで負けてはならないというプレッシャーを与えるのは、十分に効力のあるものだった。
そのやり取りを見ていたゼットが言う。
「ボルドー!いいねぇっ!楽しいねぇっ!!」
「……うるさいディーラーってありなんですね。」ボルドー
煽りともとれる発言を、ゼットはまるで気にしていないようだった。
次のアクションがイーネにまわる。
イーネが自分の手札を確認し、ほんの少しの間をあけて言った。
「リレイズ。600。」
場が僅かにどよめいた。テーブルにカードがない状態で、600/1500。決して小さな額ではない。
(…………こいつ……。)ボルドー
次のアクションがケイトにまわる。手札は{7スペード}と{2ダイヤ}。
(…………リレイズされたこの場で、戦う手札じゃないっす……。)
「フォールド…。」ケイト
フォールドとは、このゲームから降りることを言う。強制ベットの100チップは戻らず、ケイトは手札を捨てることになる。
次のアクションがタトラスに移る。
手札は{Jハート}と{Jクローバー}。
(……いい手だな……。これで降りるってのはない……。ここは……。)
「コール。」タトラス
コールとは、レイズされた金額に合わせて賭け金を出してゲームに参加することを言う。
また、アクションの順番がボルドーに移る。
「…………コール。」ボルドー
これで、イーネがレイズした分、600チップに合わせた状態で、テーブルに3枚のカードが開示される。
{5スペード}{7ハート}{Qダイヤ}。
ボルドーとタトラスの手札には、影響を及ぼさないカードだ。
アクションの順番はイーネにまわる。
「チェック。」
チェックとは、追加のチップを出さずに様子を見ることだ。
アクションの順番はタトラスにまわる。タトラスが言う。
「これさぁ。意味あるの?このゲームで君達2人が勝ったとしても。ゲームが終わった瞬間に制圧するよ?それに、当初の目的である、俺達を待ち構えるって目的も果たせてないわけじゃん?なに?無駄な足掻きってのに付き合わされてるわけかな?俺達。」
それにイーネが答える。
「無駄じゃねぇよ。"友達集合"。この能力がこっちにつくだけで、俺にとっちゃ、十分有益だな。」
イーネが、タトラスを見て不敵に笑って言う。
「……いくらでも、やりようはあんじゃねぇか。」
(…………。やっぱり。組み合わせとしては最悪だな。)タトラス
タトラスが言う。
「チェック。」
アクションの順番はボルドーにまわる。
イーネが言う。
「むしろお前らが、確かにゼットのことを呼びに来たってことを知れただけでも、こっちとしちゃありがてぇ情報だよ。」
それにボルドーが答える。
「タトラスさん世代の人、皆んなに声をかけてるんで、特別って訳では無いよ。」
「えぇ?!特別だといってくれよぉ!!」ゼット
「……あ。あぁ。すみません……。」ボルドー
「あと、俺ら世代ってのもやめて?歳を感じるから。」タトラス
「十分過ぎるくらい歳いってるでしょ?」ボルドー
「タトラスお前!まぢで若作りしすぎだろっ!!そこまでいったらまぢ病気だって!」ゼット
「若くて何が悪いんですかー?!」タトラス
「はいはいはい。チェック。チェック。」ボルドー
話しが大きく逸れそうなタイミングで、ボルドーのチェックによってゲームが進む。
場に追加で1枚のカードが開示される。
場に出たカードは{4スペード}。また、タトラスとボルドーの手札には影響を及ぼさないカードだ。
ボルドーは思考する。
(……僕の手には何も役はない……。けれど……。)
ボルドーが言う。
「ベット200。」
(ブラフで勝負だ。)
ボルドーは、1番最初にレイズで賭け金を上げている分、このブラフが効く。
イーネは自分の手札を確認し、少し間を置いて言う。
「……コール。」
そして、タトラスが思考する。
(……ボルドーが初手でレイズ、イーネがリレイズ。……この卓で更にベット…………。俺は、手元のJのワンペアのみ……。)
「…………フォールド。」
これによって、タトラスがこのゲームから降りたことになる。
ボルドーとイーネの一騎打ち。
更に、場に新たなカードが開示される。
{2スペード}。
ボルドーの手持ちでは役が無い。
「…………。」
ボルドーは暫く考えて言う。
「ベット200。」
「……レイズ500。」イーネ
(?!……。まじかよ。すでに持ち点の1300を出すをことになるんだぞ?!)ボルドー
イーネの表情からは何も読み取れない。
ボルドーは暫くの間沈黙する。
このままゲームを続けたければ、イーネのベット額500にコールするか、リレイズしかない。
ボルドーの手持ちに、役は無い。
「……………………フォールド。」
これによってボルドーがこのゲームから降りたことになり、イーネの勝利が確定する。
さらに、この場合、イーネの手札は周囲に開示されない。
イーネに、賭け金の3000チップが移動する。
イーネ3200チップ、ケイト1400チップ、タトラス900チップ、ボルドー500チップ。
イーネが言う。
「ナイスハンド。」
「……………………っ……!」ボルドー
緊迫したゲームが幕を開けた。
――――――――
ゼットの仕掛けた"友達集合"によるゲームは、いつでも波乱を呼ぶ。
それをゼットが望んでいるからかも知れない。
タトラスの手札に{Aハート}{Aクローバー}が揃う。相当に強い手だ。
まだ、共通カードの出ていない場面。
タトラスが言う。
「……レイズ200。」
それにイーネだけがコールし、イーネとタトラスの一騎打ちでゲームがスタートする。
場に3枚のカード、{6ダイヤ}{2ダイヤ}{7クローバー}が開示される。
イーネがチェックし、タトラスが言う。
「ベット200。」
それに少しの間をあけて、イーネが「コール。」という。
これによって、タトラスのベット額に合わせてゲームが進み、追加のカード1枚{5ダイヤ}が開示される。
タトラスが言う。
「……ベット100。」
(……乗ってこい。)
暫くの沈黙の後、イーネが言う。
「……フォールド。」
イーネがゲームから降りたことによって、タトラスの勝利が確定し、手持ちの札は開示されないまま、このゲームに賭けられた1100チップがタトラス移動する。
イーネが言う。
「俺の手はKKだった。」
自分手持ちとなる2枚のカードの中では、AAが最も強いカードであり、次に強いのがKKの組み合わせだ。
この手札を捨てることはあまり無い。
タトラスは、ほんの僅かに動揺してしまったようだった。
イーネが言う。
「AAか。……残念だけど、向いてねぇなぁ。……先生?」
そんなイーネを横目に、ケイトが(……こ、怖ぇぇ……。)なんて感想を抱いていた。
タトラスが言葉を返す。
「…………調子のってんなよ?クソガキ?」
ゲームは進む。




