表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/130

第87話 アンタ


「!? おぉ……」


 振り返り目にした光景は、やはり呆れた表情で、俺と同様に腕組みしたイズナの姿であり、その姿は勝ち気な性格と相まってとても絵になっていた。


「な、何よ……人の身体をジロジロ見て……なんか気持ち悪い……」


「なっ!? き、気持ち悪いって、そんな……」


「あっ、それより! 早く残りを倒してみんなを助けないと! アナタがやらないなら私がやるわ!」


「あっ!? イズナさん、ちょっーー」


 止める間もなく魔物達に向けて駆け出すイズナは、駆けながら双剣を構え、纏雷を再び掛け直して加速すると、視覚が戻り始めた魔物達に紛れて次々と辻斬りして回る。



「あはっ! あははっ! すっごく楽しい! あはははははははっ!!」


「い、イズナさん……人格が変わってる……」


 嬉々として辻斬りして回るイズナを目の当たりにし、恐怖を覚え、可愛らしいと思ったことを撤回する。

 しかし、確実に魔物の数は減ってきており、流石は一流冒険者だと感心したのもまた事実だ。

 そして、雷光による雷撃を受けずに生き残った25匹の魔物達は、視覚が完全に戻る前にイズナの手によって見る見る倒されていき、反撃すらできずに全滅となった。


「あ〜楽しかった! やっぱり魔物討伐は最高ね!」


 爽やかな汗を流し、スッキリとした表情を見せるイズナの周りには、斬り刻まれて討伐された魔物達が屍となり横たわっている。

 その屍の中にはヘルハウンドも含まれているのだが、背中に斬痕があることから、恐らくはイズナの素早い動きに反応できなかったのだろう。

 因みに他の屍も確認したが、殆どの屍の背中に斬痕が見られ、逆に抵抗の痕跡は見られなかった。

 

「ねぇ、いつまで魔物の死体を見てるつもり? ほらっ、早く助けに行くわよ!」


 まるで俺を待っていたかのような言い草をするイズナは、俺からの返答を待たず、すぐさま魔物の群れが向かった方角へと駆け出すが、結局は俺が付いてきているのかを気にして、駆けるなか、何度もチラ見してくる姿が見て取れた。

 そんなイズナがまた可愛らしく思えるも、先程の人格が変わる姿が脳裏に浮かび、首を横に振りながら「違う違う」と可愛らしく思ったことを改めると、気持ちを切り替えるためにイズナの元へ向かうことに。



「あ、あら、そんなに急いでどうしたの? もしかして、置いてかれたのが寂しかったのかしら? ま、まぁ、私は別にどっちでもいいんだけどね!」


 何やら嬉しそうに話すイズナ。

 追いつかれたことがそんなに嬉しいのだろうか? 首を傾げてそう思ったが、それより今は、あの5人の冒険者達を一刻も早く助けなければ。


「あの……これから急ぎますけど、俺に付いてこれそうですか?」


 なんの気無しに尋ねてみたのだが、何故か急にイズナは怒声を上げた。


「なっ、舐めないで! 誰がアンタみたいなFランクに後れを取るものですか! もう! こんなことなら待たずに置いていけば良かったわ!」


「あ、アンタ……」


 嬉しそうな表情から一転、凄い剣幕で怒るイズナは、再び俺を置いていこうと速度を上げる。

 怒る理由は全く分からないが、あの速度なら助けに行くのも早まるだろう。

 そう感心したあと、何故怒っていたのかを不思議に思いながら、イズナの背中を眺めていた……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 戦いが続いて楽しいのですが、 戦闘後の人間関係がどうなるか興味ありますね。 [一言] 更新頑張ってください!
[一言] 前書きの警告要らないんじゃ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ