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第86話 異質な紋様


「イズナさん、目を閉じてください! 魔法を唱えます!」


「えっ、ちょっと待っーー」


「ーー光り迸れ! 雷光!」


 魔法を唱えた直後、掌から目が眩むほどの強い閃光と糸のように細い雷撃が、枝分かれしながら広範囲に放たれた。

 前回使用した時は川の中であったために閃光をまだ抑えられていたが、今回は遮るものがなく、想像以上に強い閃光により、興味本位で少し目にしただけでも自身の目を眩ませてしまう。


「うわっ!?」


「きゃっ!?」


『ギャウンッ!?』


 うっかりイズナも巻き添えにしてしまったようだ。申し訳ない……

 だが魔物達も完全に直視したようで、幾重にも重なった鳴き声が聞こえてきた。

 すぐには目視できないため魔力探知で様子を見ると、54匹のうち動きを見せているのは僅か6匹。

 その6匹の魔物達は仲間の合間を縫ってこちらへ向かっている様子で、魔力探知だと反応が重なってしまいイマイチ分かりづらい。


「分かりづらいな……でも、接近してくれば今度は気配察知で……」


 迫りくる魔物達に狼狽えることなく冷静に状況把握をしていると、思い切り目を眩ませたイズナが口を開く。


「ねぇ! 大丈夫なの!? なんか足音が聞こえてくるんだけど!?」


 どうやらイズナは脚力の他に聴力も高いようで、迫りくる魔物達の足音を正確に聞き取れている様子。

 ただそれを目視で確認できないので不安に思っているのだろう。

 だが安心してほしい。既に気配は察知してある。

 もうすぐ姿を見せる魔物達からイズナを守るため、イズナの真正面に立って襲撃に備えると、魔物の群れから1匹ずつ魔物が飛び出してきた。



「右、左、前、左、前、右……2割でいけるか?」


 次々と襲い掛かる魔物達へ力加減を気にしつつ、左フック、右後ろ回し蹴り、左アッパー、右掌底、左前蹴り、右肘鉄と連続で当てていくと、6匹の魔物達は打撃痕を残したまま吹き飛んでいき、左アッパーで空中に飛ばされた魔物が地に落ちる頃には他の5匹は既に事切れていた。

 そして、空中に飛ばされた魔物は「ドンッ!」と地に落ち、その音を耳にしたイズナは驚きのあまり声を上げる。


「きゃっ!? えっ、何!? 一体なんの音よ!?」


 俺も目を閉じているから気持ちはよく分かる。

 視覚のない状態で聞く音は、やけに生々しく聞こえては耳に残るらしい。

 そう考えれば、視覚に頼らず生活している人達には尊敬の念を抱かずにはいられない。


「そういえば、会う度にいつも目隠ししてたな、あの人……今思うと凄いことだよな……」


 様々な既存魔法を俺に見せてくれたある人物は、異質な紋様が施された目隠しを常にしているにも拘わらず、普通に生活を送れているのだ。


「本当に凄い……けど、それより気になるのは目隠しに付いてるあの紋様だ……確か、十字架に蛇が巻きついてる……」


 いつの間にか考え事に熱中し、腕組みしながらブツブツと呟いていると、瞳の調子が戻ったイズナが背後から俺に話し掛けてくる。


「ねぇ、何をブツブツ言ってるの? 目ならもう治ってるでしょ? 全く……残りの魔物、倒さないなら私がもらっちゃうわよ?」


 イズナの呆れた声を聞き、やはり呆れた表情なのかな? と気になったので、確認も兼ねて後ろを振り返るのであった……


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