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ホーボー・ホーボー魔導具を巡る冒険  作者: アトアン・グリューゼン


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第九十八話 二つの銃声

 アンリは走りながら氷の短刀を形成し、祭壇に転がってるカサンドラの大型拳銃を拾いあげようとする。ルーネもアンリをフォローする為、並走する。


「させませんわ……」


 カサンドラはルーネのポールアックスの一撃を搔い潜り、ルーネに掌底を叩きこむ。


「ぐっ!」


 吸血鬼の重い一撃を受けたルーネが片膝をつき、口元を苦しそうに歪ませる。


「次」


 祭壇にころがった大型拳銃へ手をかけようとしたアンリを蹴り上げ上体浮かせを浮かせ、渾身の回し蹴りを叩きこみアンリの身体を後方の壁に叩きつける。ルーネとアンリの血が祭壇の白い石材とカサンドラの黒いドレスに赤い染みをつくりだす。


「ザルトさん、申し訳ありません、あなたの獲物でしたね……」


 吸血鬼カサンドラは返り血を拭うと、大型拳銃を拾いあげながら、足を組み浮遊する女へ語りかける。


「天雷!」


 ハイディの光術の雷撃が上空から二人を襲う。女は右手を掲げ、ハイディの攻撃を防ぐ。


「流れ落ち塵焦がす星の涙、スタークリーク!」


 続けざまにハイディが魔法銃を掲げ光術を放つ。無数の光弾が地底湖に降り注ぐ。


「この程度?つまらない女」


 足を組みながら女は疲れた様子のハイディに向かい笑みを浮かべる。その時、女の背後に素早く回り込んだヴィルジニーの魔力を込めた矢が襲う。


「……黒の衝撃」


 女はヴィルジニーの方へ振り向き障壁で矢を防ぎ、淵術の波動をヴィルジニーに向け放つ。


「躱されたか?」


 ヴィルジニーは素早く移動しながら火炎瓶を女に投げつける。女は炸裂した火炎瓶の爆炎でヴィルジニーの姿を見失う。


「っ!どこへ!」


「ザルトさん慎重に……!!」


 ……アルラウネの騎士レダが左腕から蔓を伸ばす。蔓が吸血鬼カサンドラの足絡みつき、転倒させる。蔓が女吸血鬼の自由を奪う為、全身へまとわりつこうとする。


「この!」


 カサンドラは蔦が全身に回る前に右手で大型拳銃を構え、レダの左肩に狙いを定める……銃声が地底湖に響く。レダの左肩から血が流れ落ちる。


「ぐうっ!まずい……はあはあ……」


 レダの蔓草で吸血鬼の白い肌を保護していた黒いドレスとヴェールの様々な場所が傷つき、血が滲んでいる。

カサンドラは手負いで動きの鈍っているレダの斬撃を拳銃の銃身で防ぎながら、レダに踵落としを喰らわせる。


 もう一発、銃声が地底湖に轟いた。


「……!?……なんだ……こ……」


 浮遊していた女の背後から魔力が込められた銃弾が撃ち込まれ、白霊布のドレスが血で赤く染まっていき、祭壇に置かれた白い石棺に赤い血が流れ落ちる……更に銃弾に込められた魔力から生じた氷の刃が女の傷跡に深く突き刺さる。


 ……アンリは隠し持っていた拳銃で背後から女を打ち抜いた。

 

「闇を彷徨う見えざる剣の刃、魔剣の疾走!」


 更にルーネの淵術の一撃が動揺する女の身体を切り裂く。白霊布で形成されたドレスが破け、赤く染まる。


「っぐ!ああっ」


「しまった……ザルトさん!」


 ゴブリンの女戦士ヴィルジニーは魔力で筋力強化しつつ、カトラスを振るい、カサンドラを足止めする。


「邪魔ですわ……」


 ハイディは大型拳銃の弾丸で左肩を打ち抜かれたレダの負傷の治療に回る。


「レダさん大丈夫か?とにかく止血を……」


「……ありがとうございます」


 レダは苦しそうに呼吸する。


「あまりしゃべらないほうがいい……ん?あれは……」


 戦闘の余波で祭壇の石材が傷ついている……ハイディは祭壇の石材の下にある何かに気づいたようだ。


「ちっ、油断した……」


 女の傷が少しづつ再生していく。


「さて……」


「ザルトさん……退きましょう」


 ヴィルジニーの攻撃をさばきながら、カサンドラが語りかける。


「まだ……カサンドラさん、やれますよ」

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