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かび
かびが生えていた。
いつも目にするところなのに、気がつかなかった。よくよくみると自生していた。
洗剤を吹き付けて、古い歯ブラシで擦ってみるが、なかなか取れない。私はムキになって歯ブラシの角でがりがりやる。かびの方も、せっかく見つけた住処を、そう易々と明け渡してたまるかと言わんばかりに、びっちりしがみついて離れない。往生際の悪いかびである。
私は歯ブラシを傍に置くと、次々と新兵器を投入した。
研磨スポンジで磨いた。
それでもかびは落ちません。
たわしで擦った。
それでもかびは落ちません。
より強力な洗剤につけ置いた。
それでもかびは落ちません。
私は大きなかびをもう一度みてから、あーーーー、と低い声でため息をつき、項垂れた。




