記憶のかけら集め
昔のこと、あの頃あんなに執着していたもののことを、簡単に忘れている自分がいる。
ふと思い立って、中学生の頃に利用していたメールアカウントにログインしてみた。IDやパスワードを思い出すのには苦心したが、当時の思い出とともに奇跡的に蘇った。
メールボックスには、いまの自分には考えられないほど、整理されていた。メールする相手によってフォルダを分けて、その相手の名前をつけて保管していて、誰と何通やりとりしたかが一目でわかる。そのやりとりの量で親密度を測っていたようだ。ソートのやり方がわからず、氏名の前に、メールが多い順に「あ」「い」「う」…とつけて、順番を並び替えていたことが、我ながら愛らしい。
メールの中身は本当にたわいもない短文ばかりで、誰が好きだとか、宿題がどうだとかいう話が終始繰り広げられていた。最後は高校受験の合否報告でほとんどのフォルダは終わっていた。高校からは携帯を持つようになって、PCメールは、タイムカプセルになった。
一番驚いたのは、好きなアーティストが同じ子と、メールが弾んでいたことだ。その子が好きだというアーティストを、私が後追いで好きになったのだが、今となっては、そのアーティストが好きだったことさえも、忘れていた。
ああ、私は、そのアーティストが好きだったのではなく、あの子と仲良くしたかったのだな。
あの頃の何かを一つ取り戻せたような気がして私は、メールボックスからログアウトし、再び思い出に鍵をかけた。




