ふかふか
人間はふかふかが好きな生き物だ。
ふかふかの毛布、ふかふかのコート、ふかふかの猫。触ると柔らかくて、包まれると温かくて、なんだかホッとする。
自分の巣は、ふかふかにしたい。寝所の居心地を良くするのは、生物にとってQOL向上の最重要課題である。ふかふかがあれば万事上手くいく。私も家中をふかふかもこもこふわふわにしたい。
だが、良いところがあれば、当然悪いところもある。真のオールマイティなど存在しないのだ。それはふかふかとて例外ではない。
冬、寒い季節。最もふかふかが活躍する季節に、そいつは現れる。毛布から出る時、服を着脱する時、ドライヤーを終えて髪を撫でつけるとき。
静電気である。
静電気がなければもっと冬を好きになれた。もっと言えば、乾燥さえしなければ、冬はもっと怯えなくていい季節だったのに。
あと、ふかふかは、掃除が大変。毛と毛の狭間の深いところに、お菓子のかすなんかが入った暁には、大変不快な思いをする。お毛狭間の戦い勃発だ。
あと、ふかふかは、夏は暑い。まとわりついてくる。離れてほしい。鬱陶しい。汗を吸う、におい立つ。洗う手間が増える。
あれ、そんな良いものでもないのか、ふかふか。全くダメという訳でももちろんないのだが、可もなく不可もなく。
人間が大好きなふかふか。居心地が良いふかふか。不可不可。人間の独りよがりな理想に対して、手触りだけは、異を唱え続けている。




