トイレットペーパーの芯の頼りなさよ
トイレットペーパーの芯を立てて、その上に乗ったことがあるだろうか。
案外立てる。垂直からの力に対して、芯は自分の能力以上のものを発揮する。使い方次第ではその能力は何倍にもなるのだということを思い知らされる。
しかし、芯は横からの攻撃にはめっぽう弱い。あるいは横たえて、コロコロと転がる状態にして乗ると、いとも簡単に潰れる。乗ると言うよりも踏むと言う方が相応しい。こちらが悪いことをしているような気持ちになる。
「自分、こう見えて案外丈夫なんですよ。試しに乗ってみます?」
芯が誘いをかけてくる。
私は大丈夫かなと思いながらも、誘いを無下にするわけにもいかず、最初は遠慮がちに、徐々に体重をかけていく。あるタイミングで、あれ、結構大丈夫なんじゃないかと思い、ええいと重心を移すと、普段の自分よりも10センチほど高い景色が目に映った。本当は潰れそうになったらすぐにでも降りれるように準備していたのだが、そんな心配も徒労に終わった。
「ね、意外といけるでしょ?」
なんて、芯は余裕綽々な笑みをこぼした。腰には、最後に使い切れなかったペーパーの切れ端が風に揺れている。
「じゃあ今度はこっち。鍛えてるんすよ」
そう言って芯は自ら体を横たえた。
さすがにそれはいけない。思いながらも、あまりにも自信に満ちた表情を向けられるので、口には出せなかった。
私は慎重に、柔らかな感触を確認するように足を乗せるが、少し体重を移しただけで、ぺしゃんと潰れた。
「まだまだですね」
芯は両端に折り目をつけて、潰れた顔でそう言った。悔いはない、と表情が物語っていた。
私は潰れた芯を優しく持ち上げて、ゴミ箱へ捨てた。夜は更けていた。




