がに股
がに股が苦手だ。その理由を考えてみようと思う。
まず、何かを苦手だと思うことには、一つ、嫌な経験と結びついている、一つ、何かを想起させる、一つ、自分とは異なっている、一つ、害を及ぼされるおそれがある、一つ、肌に合わない、とまあこの辺りが相場だ。
がに股が何か嫌な経験と結びついているか。いや、今まで出会ってきたがに股の人は、人間としてさっぱりしていることが多くて、好感がもてた。むしろ、がに股じゃなかったらな〜なんて思うこともあった。
がに股が何かを想起させるか。がに股と言って思い出せるものは、棒が長く見える錯視図形や、さすまた、ペンギン、アヒルのコックさん、バス停(なぜ?)、そんなところ。無論、悪いイメージはない。
自分とは異なっていることに関しては当てはまると言える。しかしながら、自分とは異なるからと言って嫌悪する理由にはならない。異性を好きだと言えるし、背の高い人を素敵だと思える。
がに股に害を及ぼされるだろうか。いくらがに股と言えども、身幅をはみ出すことはそう無いだろうから、足をひっかけられたなんて思い出もないし、これからもないだろう。
では、肌に合わない、か。がに股が肌に合わない人間がいるのか。いたとしたら、たいそう奇怪だ。がに股アレルギーだ。
結局のところ、こだわり、美意識に反するということなのだろうか。でも美意識に反するからと言ってそんなに苦手意識を持つものなのか。
思い当たることがあった。
たとえば、目の前にスイッチがあったなら、押したくなるのは多くの人に当てはまると思う。箪笥が少しだけ開いていたら、閉めたくなると思う。豆電球では寝れない(これは個人差がある)。
つまるところ、自分が作用したくなってうずうずしてしまうのが、居心地悪いのだ。
あれ、でもそうした場合、内股も気になるはず。なぜ、がに股だけ。
わかった。さっきも検討した危害を及ぼされる可能性のカテゴリーにも属するが、どこに行くのかわからない不安が、がに股にはあるのだ。
つま先が外に向いていると動線が見えない。
ぶつかるかもしれないし。
かかとを目で追うと、足を踏まれそうだし。
だから嫌なのだ。あーすっきりした。そういうことか。




