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偶然
街中で、名前を呼ばれた。
振り返ると、ここ何年も会っていなかった旧友がいた。
今日は雨が降っていて、私は傘をさしていた。2月並みの寒い日だったから、昨年新調したコートを着込んでいて、先週髪も切った。その上マスク。だから、驚いた。
小雨が降りしきる中、ケーキ屋の軒下を借りて、立ち話した。積もる話があるならとっくに約束を取り付けて会って話しているだろうから、特に話も積もっていないだろうと思っていたが、思いの外、出てきた。
いま住んでいるところや、近況について、共通の知人の話、これからのこと、近い将来のこと。
お互い頑張らなきゃね、なんて言いながら、3、40分くらい話し込んでしまった。どうせならケーキ屋さんの中に入ってしまえばよかった。
でも、腰を落ち着けてしまったら逆に話が弾まなかったかもしれない。お互いいつ切り上げてもおかしくないという緊張感と、今度いつ会えるかわからないその場感、そして街で偶然再会したことへの高揚感が、お互いを離れ難くしたのだ。
また連絡するね、と言って、どちらともなく別れた。ふんわりと、やんわりと。どちらからも、たぶん連絡することはないだろう。
でも、また街で偶然あいたいな。




