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阿喜多騒動

桃の節句に重い話です。


ジャーラン。


金を手に、現地のあどけない少女を犯そうとしている友人が、貴方の目の前に居たら、貴方ならどうしますか?




………………俺は努力義務だけはしっかり果たそうと思うよ。うん。


これ、女性の意見聞きたいなぁwww




1564年、和泉にて。


「お久しぶりです、殿」


「鎌房か。紀伊平定、大儀であった」


「はっ、有難く」


俺は、親父が生きている限り絶対に家督を継が無いと決めているので、元服後から、公式の場では親父の事を殿と呼んでいる。


「此の地も粗方片付いた。次は河内じゃ」


「はっ!」


俺達、一条家の評定衆が一斉に頭を下げる。親父はその姿を見て、楽しそうに頷いていた。




場所は変わり、一条鎌房の陣の中。


「播磨、丹波はどうなった?」


俺は、親父への監視も兼ねて、親父の軍に捻り込んだ源康政と久々に話をした。


「若様の指示通りに致しまして、赤松氏と波多野氏は従属を示しております。

一昨年、初陣を飾った小寺官兵衛に接触致しました。齢は19。若様の仰る通り、非常に才が感じられる好青年でありました。


峰子様との婚姻に関しては、本人は非常に乗り気では有りましたが、父親の黒田職隆から丁重に断られてしまいました。


因みに、浦上清宗殿は御存命の事。官兵衛殿には娘は居らず、妹が居る様です。


一応、婚姻の日には、赤松政久殿に注意する様にはお伝え致しました」



「うん。まぁ、官兵衛の親父だから超絶優秀なんだろうな。

凄まじく深読みしまくったんだろうか?素直に、官兵衛を欲しいだけなんだがな。


で、朝倉は?」



「殿は、全く何も接触されておりませんが、如何致しますか?」



「いや、何もしなくていいよ。それより、京極は?」



「阿久姫殿と賢政の不仲、昨年の浅井の美濃攻め時に六角氏と共闘し撃破し、浅井氏を大きく弱体化させました。

小谷城を攻め落とし、鞠姫マリア様を保護し、我等一条家の庇護の元、無事御出産されました。

即座に、祝いの品を送り、只今、京極家と若様・・は同盟関係であります。

京極高吉殿は若様と共に上洛を果たしたいとの事。六角氏は如何されますか?」


「京極の方は良いんじゃない。

六角ね。別にどうのこうのって無いけど。強いて言うなら、蒲生定秀・賢秀親子を此方陣営に引き込みたい。

と、云うか、俺の家臣にしたい。氏郷産まれてるかな?

その後の六角は用事無いから、朝倉にとやかく言われる前に迅速且つ隠密に処分して欲しいな」


「蒲生定秀殿、賢秀殿共に、六角の重臣で有りますので、素直に此方に靡くとは思えませぬが」


「影丸を使え。とりあえず最低でも、息子の賢秀と孫の氏郷だけは抑えろ。」


「はっ!」



阿久姫はデブ&デカで有名な姫さん。


当時の平均身長150cm位から20センチも高く、それ故に寺に入れられた人。当時は、身長がデカい女=醜女だったからね。


そんな評価を受けている一方、年下の賢政は家臣からも可愛いお姉ちゃんからもモテるモテる。


誰にも愛されないデブスが、人生謳歌してますとキラキラのオーラを放つ出来るリア充を妬むのは必至。

わかるよ。めっちゃよく分かるよ。痛い程分かるよ!と、分かるの三段活用を繰り出しちゃうわ。


大抵、そういう奴に限って、外面より内面とか言い出して、お前みたいなイケメンに言われたくねぇよと、なるんだよね。本当に死ねって思うわ。


って云う事で、物理的に爆ぜさせる様に誘導。俺自身がむっちゃ理解を示すから、此処は本気出さざる得なかった。



1563年に起こった観音寺騒動で六角氏は筆頭家臣の後藤賢豊を失い、大きく弱体化した。これを切っ掛けに、その3年前、1560年での野良田の戦いで大きく名を轟かした浅井賢政の元に六角氏の家臣達は靡き、彼等の力をもって、浅井賢政は美濃攻めを行ったのだ。


史実ならば、背後から迫り来る六角氏の軍勢を叩きのめし、更に天下に名を轟かす原因となったのだが、今回は分が悪かった。


戦の全貌を知っている俺の指示の元、北畠・一条連合軍が、六角と浅井が戦っている所へ横槍を入れ、双方の軍勢を撃破。浅井に討たれた事にし、木造具政もちゃっかり処分した。一石三鳥だな。


年同じく、京極高吉に嫁いだ賢政のもう一人の妹、鞠姫こと、京極マリアは、史実ならば、下克上して兄の浅井が入城している小谷城で、1563年に高次を産んでいる。


高次は、妹の竜子が秀吉の側室に、自身は秀吉の正室の淀殿(茶々)の妹である常高院(初)を嫁に貰っており、彼女達のお陰で秀吉から優遇された、蛍大名と、呼ばれる運命を歩む。


しかし、彼自身は無能では無く、大津城の戦いでは、西軍・約一万人の大軍を退かし、関ヶ原に向かわせない等、大活躍する人物だ。


俺は、罵られようが、蔑まれようが、自分の武器である妹や嫁さん達を最大限に利用し、戦国乱世を生き抜き、それどころか、京極家を復興させた所を物凄く評価している。


1572年に産まれる弟の高知君も兄と共に頑張った有能な子なので、京極家は今後が楽しみだ。彼は、秀吉亡き後、家康に接近する状況把握能力が凄まじく高く、岐阜攻めや関ヶ原で武功を立てている有能な子。俺の息子の時代に頑張ってくれ。


一条家による京極マリアちゃんへの謎の超絶大接近プレゼント企画だったが大成功。俺は本人とは直接会えていないが和歌を送っておいた。


竜子ちゃん産んだら愛でたいな。2年前、だから、1562年に産まれた俺の息子の側室とかにしよう。そしたら、俺が可愛がれる。


因みに、息子の名前は千寿丸にした。流石に、千寿王にしてしまうと、足利家への煽りが見え見えなので、そこは自重しつつも千寿丸で妥協した。


嫁さんも良い名前だと嬉しそうだったからな。それで良し良し。後は、俺の智力&武力を引き継いでいてくれたら文句無しだ。俺が生きている間に、千寿丸の乳母一族を抹消したら、俺も家督を譲ろう。



「若様」


可愛い嫁さんの事を考えていたから顔が緩んだのだろうか。俺は、キリッと、言いながら引き締める。


決して、息子については感情移入しないと、俺は心に誓っているからな。あの赤猿みたいな餓鬼には関与しない。精々、超えられない壁として父親である俺を敬うが良い。


「ん?何?」


「殿が、勝手に北畠具房殿や織田信長殿に会う事を余り宜しく思っておられません」


だろうな。親父はその二人とそこまで仲良くないから、不安なんだろう。


「織田信長殿は面白い御方だよ」


面白いと云うか、現実主義者なんだよな。


でも、まだ若い。あの覇王の雰囲気は、何か興味を引いた物の説明を受けていると、途端に崩壊する。


そういや、俺ってどんなオーラが出てるんだろう。元々、平和な時代に産まれた只の一般人。しかも、高校生だからな。オーラとか無いんかな?


あっ、分かった、ってか、思い出したわ。根暗&近寄るなオーラだな。此処から根暗さえ外れれば立派な恐怖政治だ。目指そう。脱根暗。


「左様ですか」


「うん。結構好きだからまた会いに行くかもね。次の上洛戦では不参加でお願いしたいし。アレを敵に回すのは馬鹿だよ」


銭で雇った鉄砲を担いだ兵隊。一条家の軍勢の様に、大日本帝国陸軍に酷似した階級制度では無いものの、大勢の訓練された兵士が集まる常備軍。


連絡伝達網や兵糧の確保のシステムが、まだまだ一条家には及ばないのが唯一の救いだろう。でも、信長の事だから直ぐに真似しそうで怖い。


「信長はなぁ……」




俺が信長の恐ろしさについて語りだそうとした途端、伝令の兵士が陣内に駆け込んだ。


「若様、奥方様が!」


おくがたさまが?……はっ!?


「姫ちゃん!?」


俺が驚いて立ち上がると同時に、陣の中に……


「阿喜多……?なんで此処に居るの?」


北の方こと、嫁さんに手を引っ張られ、連れられた妹、阿喜多が入って来た。


「御兄ぃ様ァ!」


ちょっとよく分からない独特なアクセントの御兄様コールを頂いた俺は、人払いを命じてから、どうして此処に居るのかを聞いた。



「チッ……お前なァ……北畠がどれだけ対織田の防壁になってるのか分からんのかッッ!!!この馬鹿野郎!今すぐ、具房殿に謝罪して来い!出て行け!」


あ〜あ。ひっさびさにマジギレしたよ。

阿喜多、甘え過ぎ。戦国乱世の婚姻を舐めまくってるやろ。せめて、畿内が安定してから出奔しろよな。


俺に初めて怒鳴られたからか、状況の理解が出来ず、驚いた顔をしている阿喜多。そんな妹に俺は無情なまでの仕打ちをした。そう、抜刀だ。


「此処で死ぬか、自害するか、具房殿の元へ帰るか選べ。もう、お前は俺の妹では無い」


陣の外にまで聞こえていた怒鳴り声のせいで、辺りは水を打った様な静けさ。

そこに唐突に現れた白刃の輝き。嫋々たる微風が人々の頬を撫でた時に、緊張は最大限に高まった。


「さぁ、選べ」


少し掠れた、低くて恐ろしげのある声でそう告げると、阿喜多は泣きながら陣内から出て行った。


その後ろ姿を認めた俺は、鞘に刀を納めると、嫁さんにも釘を刺しておいた。


「お前も京に帰って上洛した時の準備をしろ。戦場ココは女の来る場所じゃない。さぁ、早く行け」


俺をキッと、睨んだ嫁さんは侍女達と共に踵を返した。

嗚呼、男はつらいよ。


「影丸、二人が父上の所へ行くのならば殺せ。脚丸、具教殿に事の顛末を」


何処からとも無く現れた黒装束の男達は、酷く神妙な顔をして跪いた。


「父上の上洛の邪魔をする者は、例え、我が妹といえども容赦せん。鎌房のこの言の葉、しかと日の丸中に伝えよ」


起こってしまったものは仕方あるまい。ならば、それを最大限に利用するまで。


にしても、こうやって親父を立てるのも最後だろう。

親父の存在意義もそろそろ無くなってくるし、後は隠居して千寿丸の教育だけして貰うか。


それか…………殺すか。



そもそも、今の二頭政治的な体制は、一条家を大きくしたい俺が、大きくする為に、家臣団達を纏め上げて、己の戦略眼を押し通す事を目的として出来上がり、嫡男と云う特性を持つ、名目上の筆頭家臣的存在である俺を、親父が認めたので成り立っている。


これは、俺が、元服以前から評定衆としての立場を保持し、且つ、嫡男としての教育が不要だった半人前の武士である、限られた期間にのみ通用するもの。


元服も終え、一条家内だけで無く、外からも俺が次期当主として認められ、逆に明日にでも俺が当主になっていてもおかしくはないと、思われているこの現状では、最早通用しないのだ。


つっても、天下取りたく無いし、取っても直ぐに大政奉還一直線だからな。俺は、源氏の棟梁より、右大臣の方が良いよ。




一条鎌房は戦国時代に慣れちゃいましたね……


それが良いのか、悪いのか。


未来からの知識チートは、金か?押し付けている金か?


戦国乱世という少女を、現地人じゃない外部者が


そんな行為に走っていいのか?

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