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殺人鬼は異世界に来てしまったようです  作者: ひまめ
魔と聖が混濁する世界
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ミズガルズ。黄金と影法師

「中々、楽しませてくれる」

            byレジオン

「・・・凄いな」


俺は感嘆の息を吐く。今俺の目の前を景色が高速で後ろへと遠ざかっていく。俺達は今ある物に乗ってクラウンの本部へと向かっていた。たぶん向こうでもこれはそうそう乗る様なものでもないだろう。


「まあ、確かに凄いですが・・そんなに不思議ですか?蒸気機関車・・・・?」


「・・・・は?」


待て、此奴今何といった?蒸気機関車?


「貴方は地球・・から来たからてっきりこんなものは見慣れているかと」


地球?


「ちょ、ちょっと待て!お前今地球って言わなかったか!?」


「ええ」


「え、じゃあお前も――――」


「いえ、私は向こう出身ではありませんよ。ただ、知っているというか覚えているというか、向こうの知識のことは何故か昔から知っているんです」


何すかそれ。


「ってことは時計も?」


「ええ、知ってますよ。懐中時計というんですよね?」


その言葉に俺はもう外を見る余裕すらなくなった。は?何で知ってるんだよ。


「私だけじゃありませんよ。他のクラウンの皆さんも知ってますよ」


・・・・・・えーと、いや、ちょっと待て。クラウンの全員が向こうのことを知ってて、俺のことも知ってて、え???


「あ~~・・・・落ち着こうか」


冷静に考えろ。要約


クラウンの奴等は地球のことも俺が向こう出身だということも知っている。


よし、これでOK。正直解決になってないが知らん!それはもう少し余裕が出来てから考えよう。それがいい。


「じゃあ何だ?蒸気機関車これもお前らが造ったのか?」


「いえ、それはこの遺跡に埋まっていた物を掘り起こしたと聞いています」


神器・・・なのか?たぶん何百年と埋まっていたんだろうから神器なのだろう。所有者が誰かは知らないが。


「見えてきましたよ」


その言葉に俺は思考の波から意識を切り離しエルザの視線の後を追う。


「あれがクラウン本部、『ミズガルズ』です」


 ◆


そこは廃墟だった。おそらく再現すれば現代の社会の様になるのだろう。崩壊しているビル群。焼け焦げた跡のある大地。草木は一本も生えてなくおよそ生物の気配など感じられない。

そして何より


「・・・・・・ッ」


胸糞悪い気分になる。まるで此処には何もないかのように感じられる。足元すらも消え去り、天地の区別のない本当に何もない虚無の世界。

俺は思わず膝を着いた。全身から嫌な汗が噴き出る錯覚、目眩もしてくる。俺の異常さに気付いたエルザが近付く。


「よく来たな、黄昏の破壊者ロキ


突然聞こえて来る第三者の声。その声にエルザは固まり、俺は前を見る。

そこにはエルザと同じように軍服を身に纏い長い炎の様に赤い髪の女性が立っていた。その瞳に映っているのは苛立ちと嫌悪感。


「・・・大佐」


大佐と呼ばれた女性はエルザを一瞥すると再び俺を見る。


「大尉、既に全員揃っている黄昏の破壊者ロキも付いて来い」


それだけ言うと大佐は先に歩いていく。


「立てますか?」


「ああ、さっきの奴は・・?」


俺の問いにエルザは少し難しい顔をする。


「あの人は私が所属している軍の上司です。そしてクラウン序列第四位、あの人は正しく格の違う人ですよ」


「・・・・・・」


第四位。エルザが格が違うと言うということは別次元にいる存在なのだろう。今の俺では一瞬で消される。


「行きましょう。全員揃っているそうですしあまり長く待たせる訳にはいきません」


そう言うとエルザは歩いて行く。俺もその後を追うように少し小走りで歩いて行った。


 ◆


「―――――」


俺達が入ったのは廃墟の最も奥にあるドーム。その地下へ続く階段を降りたところにクラウンの本部はあった。薄暗い、だが全員の顔はハッキリと見て取れる程の明るさ。中央には大きな円卓と十三の席と俺とエルザを除く十二人。


「エルザ・アルリッヒゲン。只今帰還しました」


それだけ言うとエルザは空いている席へと座る。俺がどうすればいいのか分からず立っているとクロウリーが俺に手招きする。俺がクロウリーに近付くと共に奴は立ち上がり、席に座る全員を見て行った。


「此方が私の代行、クラウン序列第十三位『黄昏の破壊者ロキ』。私が誇るに至る男だ」


そんな大層な男でもないんだが・・・。俺は席に座る十二人を見る。その中には先程の大佐やエクレールへの途中で遭遇したジークフリートの顔がある。

全員を見渡し、俺は一人の男を睨み付ける。


黄金。そいつを表すにはその一言で十分だろう。黄金の髪を靡かせ俺を好奇の視線で見る男。俺の本能がガンガンと訴えかけて来る。あれは危険だ。影法師とはまた違う異質な物。人間が対峙していい男ではない。


「・・・ようこそ、と言った方がいいかね?黄昏の破壊者ロキ


男が口を開く。ただそれだけの筈。奴はただ口を開き声を発しているだけの筈なのに―――息が出来なくなる。

まるで何十倍という重力で上から押さえ付けられているような感覚。呼吸が困難になり指先一つ動かすことすら出来なくなる。


「・・・・っ・・・ぁ・・」


自然とその重圧に屈し俺の意思とは関係なく跪きそうになる。


「――――――!!」


ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!

認めない、何だその輝きは!そんなもの俺には邪魔だ!消え失せろ!そんな光など塗り潰してやる!

俺は先程までの自分を消し全力でその重圧に抗う。すると先程まで俺を押さえ付けていた重圧が消えた。


「・・・・ほう」


その俺を見て息を漏らす黄金。男の目の色が変わる。それは先程までの好奇の視線は変わらないものの得物を狙う獅子の様な視線が加わっている。


「・・・改めて、ようこそ黄昏の破壊者ロキ。私はクラウン序列第一位、ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ。クロウリーと共にクラウンを創設した者だ」


黄金、ロジオンはそう言ってクロウリーに目配せするとクロウリーはその意図を察したのか虚空から突如席を出現させる。


「・・・想像・・形成・・」


それを見た俺は半ば茫然とした様子で呟く。今の魔力もこの席の構成も俺の持つ想像形成とほぼ同じだ。


「然り。とは言え、君の物より遥かに強力だがね」


そう言ってクロウリーは俺に席に座るよう勧める。俺はその席に座るとそれに続く様にクロウリーも座る。


「ふむ、そろそろ我らも表へ出るか・・・」


「ええ、十三人・・・が揃った今、潜む必要などない」


その言葉に僅かに波が広がる。尤も俺には何を言っているのか分からないんだが・・・。


「大尉、大佐、シグルズは今と変わらず過ごせばよい。他の者もこれからは潜む必要はない。――――だが、あまり目立ち過ぎるなよ」


それだけ言うとロジオンは席から消えて行く。


「君も、今迄通り自由に過ごせばいい。必要ならばここの書庫に立入っても良い。君がまだ知らぬことがこの世界にはある」


俺にそれだけ言うとクロウリーもまた席から消える。

それに合わせる様に他のクラウンの面々も立ち上がる。


「響夜君」


「・・・エルザか」


そこには少し心配そうな表情をしたエルザの姿。あと君つけんな。


「何だ?」


「いえ、少し心配だったもので・・・」


「黄金。・・・化け物だな。あれは人の領域を超えてる」


「ええ、あれが黄金です。そしてその対となるのが影法師」


・・・化け物どもが。

突き付けられた現実に俺はギリッと歯軋りする。俺なんてあいつ等の足元にも及ばない。


「・・・エルザ」


「何ですか?」


「書庫ってのは何処にあるんだ?」


知識。クロウリーが言っていた俺の知らないこと。ああ、この世界のことなんて俺は全く知らない。マオからは知識は渡されているがそれも一部欠落している。


「・・・何時か追い付いてやる」


俺は堅く拳を握りしめエルザと共に書庫へと向かった。


 ◆


「中々、見所のある男だ。尤もまだ雛にすらなっていないようだが・・・」


ロジオンはそう呟くとその笑みを深くする。


「ええ、クラウンでの実力は最下位。ですが・・・」


「――――クラウンは力が総てではない」


「然り、だからこそ我らクラウンに序列がある」


そう言って影法師はその目を薄く開け、その笑みを濃くする。


「・・・それにしても、卿と同じ能力を宿すか」


「ええ、だからこそ私は彼を代行にした」


二人は笑う。片や薄気味悪い悪魔のような笑みを片やいっそ神々しく感じる程の笑み。


「「ああ、今幕が開ける」」


感想、批判、意見、評価がありましたらお願いします。



次辺りで恐らく第二章は終り。徐々に響夜がチートになっていきます。というか敵がみんなチートみたいなもんなのでチートにならないと勝てない。


少し展開を急ぎ過ぎたかも(汗)

前回何かテンションがヤバかったし・・・・。

多分第三章からこの作品での本番になるかと・・・

ではまた次回


あ、あと黄金は偉人にするとネタバレの危険性のため少し捻りました。基本って書いたから大丈夫・・・だよね?

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