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殺人鬼は異世界に来てしまったようです  作者: ひまめ
魔と聖が混濁する世界
38/91

力の差。これが常識らしいです

「・・・・そんなチャチなもんが効くかよ」

                   byシグルズ


「邪魔だ」


俺は襲い掛かる水蜥蜴人を両断し前へ歩く。

あれから宿へ行き荷物を回収した。その際部屋の方は帰って来るまで取っておくと言われた。いや、結構ありがたいが客には大丈夫なんだろうか・・・。


「ウサ公」


「みゅ!」


俺は肩に乗っているウサ公に呼び掛けるとウサ公は目の前に障壁を張る。


「ギt―――!?」


飛び出してきた水蜥蜴人が武器を振り下ろそうとした瞬間障壁に顔面からぶつかる。


「わざわざお越し頂きありがとう」


俺は火球を放ち燃やしつくす。泣き喚く水蜥蜴人を無視し俺は疾走する。既に前には無数の水蜥蜴人達が蠢いている。


「戻っとけウサ公」


俺はウサ公を戻すと右腕を引く


「疾走する魔狼のフェンリス・ヴォルフ!!!」


放たれた極大の魔法。その一撃は前に蠢いていた水蜥蜴人達を呑みこみ更地へと変える。


「疾走する魔狼フェンリル!」


獄炎に包まれながら現れた機械仕掛けの魔狼。俺はそれに飛び乗ると同時にアクセルを踏む。


「邪魔なんだよお前ら!」


俺は業火を放ちながら疾走する。既にその速度は音速を超えている。遅れてやって来る衝撃波ソニックブームと業火で水蜥蜴人達は次々にその身体を灰すら残さず消えて行く。


「―――――ったくよぉ。何でこう面倒臭いことになるんだよ」


水蜥蜴人達の群れから抜け出した俺は漸くその速度を緩める。あれだけの異変が起きた原因。俺は少しだけ思い当たることがあった。


「あの詐欺師が何かしたか・・・」


だとしたらとんでもねえ。これだけの異変を一人で起こせるわけがない。


「・・・どれだけ掛かるか」


俺はそんなことを考えながら走らせていると森を抜けた。


「あと二週間位か?」


俺は先に広がる草原を見て呟く。途中休憩や、魔物との戦闘を考えればそれほどだろう。俺は煙草を一服すると再びアクセルを踏みバイクを走らせる。

しかし、どうやって城へ入ろうか。恐らく真正面から言っても入るのは難しであろうことは容易に想像できる。ならばどうする・・・・


「もう一度姿を消すか・・・?」


いや、それでも結局はメイドに会う為に姿を現すのだ。意味はないだろう。


「何か分かりそうなものを―――――」


俺はそこまで考え自身の使い魔を思い出す。


「・・・・・やってみるか」


俺は呟くと先程よりも速くバイクを走らせた。


 ◆


「・・・何でこう俺は運がないのか」


何処ぞの不幸少年じゃねえんだぞ。面倒事は御免こうむる。500m程だろうかそこには石で出来た人が歩いていた。いや、あくまでも人型と言うだけだ。彼らはただ命令に従うだけそこに意思など無い。それがゴーレムなのだから。

ズシン、ズシン、と巨人は此方に向かって歩いて来ている。顔は俺を見て眼は無い筈だが視線の様なものを感じる。完全に捕捉されているらしい。


「やってらんねえよクソ」


俺は頭をガシガシと掻きながらそう吐き捨てると目の前に立ち塞がるゴーレムへと加速する。此奴が此処にいるということは術者も近くにいる可能性が高い。巡回様だとしてもこんな何もない所を通る訳がない。もしかしたら異変によるものかもしれないが・・・・


「何にせよ―――」


「破壊するだけだ!」


瞬間、疾走する魔狼から炎が噴き出す。それは俺を覆い周囲一帯を焦土と化す。


「私は貴方を愛してしまった 孤高なる者よ その罪を卑しさを 私諸共食潰して欲しい」


「どうかこのおもいを引き千切ってくれ」


「疾走する魔狼フェンリル!」


本来の物より短くなった詠唱。それは俺がこの神器を使いこなしてきていることを意味する。機械仕掛けの魔狼はその炎を緋色に煌めかせ以前とは違う力強さを魅せていた。


「邪魔なんだよ人形!」


俺はより加速し既にゴーレムはその姿を捉えられていない。更に不幸なことにゴーレムは身体が大きい程に一撃の重さの代わりに速さを失う。そして一撃の重さなどこの場では不要。


「鈍臭いんだよ!!」


俺はゴーレムの身体を一瞬で破壊し止まることなく進んで行く。既にゴーレムの体は首から下が炎と衝撃で跡形もなく破壊されている。

俺はそれを一瞥すると炎を纏いながらも加速した。


「こんな所で余裕ぶっこく暇もねえんだがな」


そう分かっていながら俺は速度を緩める。このまま進むにしても炎を纏いながらでは目立ち過ぎるし、速度の出し過ぎは衝撃波で色々問題が起きる。・・・・今更等と言ってはいけない。言った奴には短剣を穴に刺す。

平原をとうに超え辺りは荒野だ。先程もそうだが隠れる場所はなく速度の出し過ぎは魔物達に目立ち過ぎる。困ったもんだ。


「・・・・もう少し進んだら休むか」


俺はウサ公を呼び出すと周囲を警戒しながら進んで行く。まだ道のりは遠い。恐らく今日はこのままキャンプにでもなるのだろう。


 ◆


既に夜空には満天の星が輝いている。魔王城での世界での夜空と外の世界での夜空はやはり違う。何というか、新鮮な気がする。向こうの月や星も奇麗だが俺にはどこか霧掛かっている様に視えたのだ。だがあくまでも「気がする」というだけ、此方の方が少しだけ本物に近い。そう言う様な物だ。

何故かは分からないが俺にはどうしてもそう感じてしまう。その理由も分からない。


「・・・まるで誰かが創ったみたいだ」


俺は仰向きになりながらぽつりと呟く。ウサ公は既に眠ってしまったのだろう。直ぐ傍から気配が感じられる。

俺はそれを確認するともう一度月を見てその目を瞑った。


 ◆


「・・・・・・・」


朝、まだ太陽は地平線から昇るころだった。


「そういえば最近言ってなかったな」


俺はそう思うと太陽を見て吐き捨てる。


「・・・相変わらずうざったい」


俺はそれだけ言うと立ち上がる。最近言ってなかったからな。言う暇がなかったとも言えるが・・・・。


「魔物は寄ってこなかったか」


一応結界とピアノ線での罠もしかけといたから問題はなかったのだが・・・。今度は回収するのが面倒臭い。想像形成で創っても良いがあれに頼ると腕が鈍ることもあるからな。人間楽ばっかじゃダメだろ・・・。


「ウサ公、起きろ」


俺はウサ公に呼び掛けるが気持ち良さそうに眠っていて起きる気配はない。


「仕方ねえ」


俺はウサ公を抱きかかえると神殺しのグレイプニルで俺の胸の前に固定する。これなら多分落ちねえだろう。


「一気に飛ばすか」


このまま何日も掛ける方が面倒臭い。俺は全速力で疾走する魔狼フェンリルを走らせる。すると爆音を立てて疾走する魔狼フェンリルは急加速をする。背後からは遅れて破壊音が聞こえるが聞こえた瞬間には俺はその場所から遠く離れている。


「速い速い」


この分なら明日の午後には着くだろう。俺はそのまま加速し続ける。


「・・・遅い」


アレイスターはこの程度の速度じゃ超えられない。あいつに追い付くにはもっと速く――――


「――――速く、速く、速く」


俺の思いに応える様に疾走する魔狼フェンリルは徐々に加速していく。


「―――ッ!?」


俺は目の前にいる何かに気付く。それが俺を見た瞬間ざわざわと嫌な気配がする。


「――――」


遠かったからか、それとも俺が加速していたからかは分からない。目の前にいた男が何かを呟くと同時に


「うおっ!?」


俺の周囲の地面が飲み込まれた。足場を失ったことにより疾走する魔狼フェンリルはバランスを崩しその勢いのまま地面と激突した。その衝撃で宙に飛ばされた俺は体制を整え着地する。


「お前が黄昏の破壊者ロキか・・・」


男はフードをかぶっている為顔は見えない面倒臭そうな奴だというのは一発で分かる。


「そういうテメェは誰だぁ?」


俺は念の為形無き略奪者ジェロジーアを呼び出しておく。


「・・・・・クラウン序列六位ジークフリート」


「―――――――」


ほうら、厄介事だ。予想よりも100倍やべえけど・・・。


「で?クラウンの奴が何の用だ?」


「・・・ただ見に来ただけだ。あの影法師の代行がどんな奴なのかな。テメェの案内は戦乙女ヴァルキュリアの仕事だ」


「・・・戦乙女」


エルザが案内ならマシな方か。知らねえ奴が来るより余程安心できる。


「あとは・・・」


男が構える。奴の表情は見えないが何となく笑っている気がする。


「テメェと殺り合うだけだ!」


男が消えたと思った瞬間背後から衝撃が襲う。


「―――面倒臭いんだよ!!」


俺は吹き飛ばされながらもその狙いを男、ジークフリートに定める。


「我が軍勢レギオンよ!」


轟音と火薬を撒き散らせながら放たれる銃弾。それはジークフリートに次々に吸い寄せられ穴を開けていく。その銃弾の雨の中を駆け俺は奴の懐に入る。


「疾走する魔狼のフェンリス・ヴォルフ!!!」


全力で放たれる零距離での一撃。この技が最も威力を発揮できる距離での攻撃だ。

視界を砂埃で包まれながら俺は奴がいた場所を睨む。


「かはは!やるじゃねえか!!今のはちっとばかし痛かったぜ!!」


砂埃を晴らし出てくるのは黒髪の精悍な顔をした男。歳はおそらく二十代後半程だろう。ただ異常であるとすれば男の腹、そこだけが毒々しい紫の色をした鱗包まれている。そこには先程の銃弾と拳による外傷など見受けられない。


「だが、まだまだだな。そんなんじゃ俺は殺せねえぞ」


反転。俺は宙を飛んでいた。


「・・・・・は?」


見えなかった。どうやったのかも、そもそもあいつが何時動いたのかも・・・。


「これで終わりだ」


鼻先にまで迫っている拳。それを見た俺は反射的に


「―――――っぺ」


唾を吐き掛けた。


 ◆


「うわ、きったねえ・・・・」


 ジークフリートは自身の拳を見て顔を顰める。拳速で吹き飛んだとはいえやはり精神的に感じるのだろう。誰だってそうだ。


「しかし、どうして反応できねえのに唾を吐き掛けられたんだよ」


 呆れ顔で響夜を見るジークフリート。その顔は如何にも疑問だとあらわしている。


「ま、影法師よりは何百倍とマシだな」


 そう呟くとジークフリートは何処からともなく剣を取り出す。


「あいつが不死身的なこと言ってたからな・・・」


 その切先を響夜の首に向ける。


「シグルズ」


 だがそれを遮るように首に添えられている騎士剣。


「お早い御到着で、戦乙女」


 首に剣を添えられていながらも悠々と話すジークフリート。背後にいるエルザはそんなジークフリートを睨み付ける。


「つうか人前でその名前で呼ぶんじゃねえよ。此奴が起きてたら聞かれてただろうが」


「・・・・それについては謝罪します。ですが彼を殺せなどとは言われていない筈です」


「そうだな。だが、何時か死ぬんだったら今死ぬのも変わらねえと思うぞ?」


 僅かに剣を持つ手に力が籠る。そして放たれている濃密な殺気。エルザはその首を何時でも刎ね飛ばせるよう構える。


「・・・私は冗談が嫌いです」


 普段の彼女からではとても想像できない程の冷めた声。その声にジークフリートは背筋が寒くなるのを感じた。


「わ、分かった。止めるからこの剣退けてくれ!」


 その言葉エルザは僅かな間を置き、やがて信じることにしたのか剣を鞘に納めた。漸く動けるようになったジークフリートはその顔を青ざめながらも安堵からか息を吐く。


「良かったですね。あれが大佐でしたら灰も残らず燃やされてましたよ」


「洒落にならねえこと言うんじゃねえ。あいつならマジでやるだろうが・・・」


 その姿を想像したのかジークフリートはげんなりする。


「・・・俺もう帰るわ。あとよろしく」


 そう言うやいなやジークフリートの姿が消える。転移したのだろう。エルザは溜息を吐きながら気絶している響夜を見る。


「まったく、貴方も不幸ですね。あんなのに目を付けられるなんて・・・」


 そう言いながら響夜の襟首を持つと引き摺るようにエルザもまた転移していった。


感想、批判、意見、評価などがありましたらお願いします。



少し間を置いての更新。けれどこの文章量。・・・・すみません!

クラウンがまた一人でてきまし!正直序列に迷ったというのは秘密。

これからもよろしくお願いします。

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