誰も笑わない。
翌日の事だ。
彼は男に見つからないように逃げ帰る。
カバンをだきうつむきつつも周りを警戒している。
走れば逆に目立つと考えるがそもそもカバンを抱く姿が既に異様なのだが、彼の臆病な性格は彼のカバンを意味のない隠れ蓑の役目をやめさせることはないのだ。
彼が一番警戒する男は面倒見が良く、すぐには帰らない。
それでも彼をいじめる者、男以外にもたくさんいる。
いままで彼は要領が悪く捕まる事もあったが、今日は難を逃れた。
帰り道に見られる小学校、男が彼をいじめる理由。
彼は男の弟をいじめていた。
彼は自分より弱いものには強い。
一年も前、なんの情状酌量の余地もなく彼は男の弟に大怪我をさせた。
彼の弟の足は一生完治はしない。
夢だったサッカーの選手にはきっともうなれない。
1年経ち、ようやく監視の目が甘くなった。
皆に優しかった兄はいじめをするような人間に。
弟はびくびくと周りを恐れり人間になったのだ。
彼が相談しない理由があると言ったがそれは弟に対する負い目ではない。
そんなものがあれば今日小学校に等気はしない。
彼は言い訳が好きだった。
だから彼はいじめられても相談をしない。
自分もする、相談してしまったら、次大事になったとき言い訳のしようがない。
昔いじめた弟を前に彼は思い出している。
昨日の彼の言葉。理不尽に対し、何も助けるものがないと知ると人は悟り、そして笑う。
弟は彼を見つけ逃げようとするが、足が悪い。
あの番組でみた防犯カメラの映像と同じ。
彼は弟を引き倒し殴る。
昨日の男と違い、目立たない場所等は考えない。
いや、興奮して忘れた。
彼は説明しない。
説明したから自分が笑わなかったという経験からだったが、途中からは何も考えられていなかった。
自分より弱いもので憂さ晴らしをする。
彼は鬼ではなく獣だった。
弟は泣き叫び兄に助けを求めるが誰も現れる事はない。こんな所にいるわけがない。それでも他に助けを求める相手はいない。
昨日の彼とは違う。
それでも弟は笑う事はなく。彼は諦めて帰る。
「この事をバラせばお前の兄の事もバラす」
彼はそうすげみ脅迫し最後に弟の足を強く踏みつけた。
弟明らかに顔が腫れている。
彼はそれを考慮に入れられない。
バレないわけがない。
弟は自分の部屋でサッカーのマスコットキャラの人形を殴っている。
足を怪我した当初には兄は何度かそれを目にした事があった。
今、弟の部屋はは鍵がかかっている。
それでも弟が人形を殴りつけている音に違いない。
泣き声が聞こえる。
「うっ、うっ」
弟の声。兄は急ぎ部屋に入ろうとドアをたたく。
笑い声が聞こえる。
「あははははははは、あははははは。」
弟の声ではない。
人形が笑っている。
彼は自分の気持に嘘をついた。
彼は絶望しなかったから笑わなかったと言ったが、
彼が笑わなかったのは自分より弱いものがいたからだった。
人形は笑うしかない。




