2.入学したし遭遇した
気づけば前世を思い出してから1ヶ月ほど経った。
この1ヶ月、ありとあらゆる手段でどうにかゲームの学園への入学をしないようにしようとしたが、入学試験はもう合格してるし、制服採寸も終わってるし、もう準備万端だった。めっちゃ入学準備してた。一応、親や兄弟姉妹達に「学校行きたくないんです」的なのを超絶オブラートに包んで言ったら、「学校生活不安なの？大丈夫だよ」とめっちゃ励まされた……ありがとう……でも慰めて欲しかったわけではないんだよ……
もう全てが詰んでる状態だったので、早々に抵抗を諦めた。前世を思い出すのがもうちょっと早かったら大丈夫だったんだけど、無理だった(遠い目)
あと、私の脳みそで考えられる限りの変装として伊達メガネかけることにした。(……馬鹿にすんなよ……？？)これでもっと地味になるといいんだが……
でも実際問題、私は隠し攻略対象だ。ゲームに出てくる主要キャラと関わらなければ、エキストラとなんも大差ない。そう、『大差ない』(重要なので2回言った)のだ。
なので、関わったところ彼らにとって、私の存在は背景となんら大差ないはずだ。完全に同化していると言っても過言ではないはずである。いや、むしろ背景とかじゃなく透明人間レベルかもしれない…
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月日が流れるのは早く、もう入学式当日になってしまった。
今日は朝から素晴らしく鳥が囀りまくっていた。……いや、鳴きすぎだろ。空は恐ろしく快晴で超絶綺麗な青だった。……いや、澄みすぎだろ。
私は何気に一人暮らしなので電車通学だ。私の両親の会社が海外経営が主たるもので、仕事が海外への出張が多く、そのまま現地に住むことも多い。流石に高校に入ったばかりの私を連れ回すわけにもいかず、なおかつ、実家から高校までは遠かったので、私の一人暮らしが確定した。両親はじめ兄妹達にはめっちゃ心配されたが、前世ではもちろん一人暮らしだったから、何も心配いらんかった。その旨を伝えたらなぜか「不安なのに隠すなんて……！！」と泣かれた……中身成人しているので、なかなかに複雑だった。
ちなみに、私の住んでる学校から徒歩と電車で30分のこのマンションは、私の父親の弟さん、つまり「叔父」にあたる人の経営しているマンションだ。その一室を借りさせてもらっている。
前世じゃ足元にもつかなかった超高級マンションなんだが、叔父様は「狭くてごめんね」と言っていた。唖然としたのは言うまでもない。……金持ちやべぇよ……と心の中で盛大に引いてた。
とにかくこの高級なタワーマンションから私が通う学園を目指す。
『私立青蘭学園』
これが私の現世で通う高校の名前。また、乙女ゲームにおいて主人公が攻略対象達と愛を育む場でもある。
古くから名を知られた超有名私立学校。学力も普通にいい。
ただ、小学校からあるので、内部生が圧倒的に多い。そのため外部生は数人しかいない。学年に多くて十数人という、外部の受験生には圧倒的に狭き門。よって、外部で入るのは倍率何十倍を超えなければならない。そう考えると、ヒロインはとっても凄いわ。特待生だし……
電車に揺られて既視感半端ない学園の門まで来た。(途中で高級車が凄い数停まっていたのは見なかったことにしよう…)友達が死ぬほど見せてきたオープニング画面に凄い似てる。
改めて見るとほんとにゲームの世界に入っちゃったんだなぁ…これからはとにかくヒロイン達と関わらず平和な高校生活を過ごしていきたい。
……ええと？新入生はこっちか
ドンッ
「いてっ」
「おっと」
方向転換が急すぎたのだろう。移動した先で思いの外近くにいた人にぶつかってしまった。へぶっ！と変な声も出してしまった。……いや、聞かれてないはず…
「ごめんなさい。」
ぶっかった鼻を押さえながら謝る。押さえたところが少し痛い。これは赤くなってんな……
「いやぁ、全然いいよ。」
前世からの偏見でお金持ちは結果屁理屈言うタイプなのかなとか思っていたが(失礼)、違う人種もいるようだ。…あぁ、よかった。
「むしろ誘われてるのかと思ったわ。」
……は？？
「朝から大胆だなぁってさ……？？」
いや、何言ってんだよコイツ。ぶつかっただけだよな？？ヤベェ奴じゃん…と思って思い切って顔を上げると、
「おでこもちょっと赤いね？大丈夫？？」
慣れた手つきで私の前髪をさらりとあげる、金髪にピアスが似合った男子生徒……………おいちょっと待て。
「あれ？もしもし？聞こえてる？？」
覗き込んでくる顔は陶器のような肌に色素の薄い切長の大きな瞳。いや、どこの神話から出てきたねん？て言うくらい色気たっぷり。……………………いやいや待て待て。
「あれ？見かけない子だね？外部生？？」
私はそいつの言うことなんて右から左へと聞き流していた。問題はそこじゃない。待て待て待て。…こいつ……………こいつ！！！！
「…………日高……礼央…」
「俺の名前知ってんだ？君は？？」
攻略対象のチャラ男『日高礼央』じゃねぇか！！！！！！！
あけましておめでとうございます。更新亀並みに遅くなってごめんなさい。最近忙しすぎて全然更新できないと思いますが、気長に待ってくださると幸いです。
