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星が墜ちた夜から  作者: Guru
8章 友達
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第70話 “強行手段”

 ゲンさんは俺の決意を受け止めてくれた。

 俺に感化されてか、ゲンさんも熱が入る。


「連絡通路にいれば、誠人には危険が伴う……だが、安心してくれ。私が園長を説得し、イベント自体を中止にさせてみせるからな!」


 金子さんと共にジェットコースター乗り場に位置する予定の芽依も、ゲンさん同様、すでに気合いは十分だ。


「私だっているんだから。ジェットコースターさえ動かなければ、事件は起きない。心配しないで! 誠人!」


 コーヒーカップ付近に位置を取る勇次は、万が一の事態に備える。


「例え何があっても、そこには俺達がいる。目標は死傷者0で行こう!!」


「あぁ、ありがとう。みんな。全員で力を合わせていこう!!」


「では、私は園長のもとへ行ってくる。念のため、君達は準備を頼む」


 そう言って、ゲンさんは1人この場を離れた。

 ゲンさんが前回と同様に園長を説得させ、イベント開催そのものを中止にさせるのが、何より一番だ。




・・・




──施設の4階にある、園長室にて。

 現田は園長大原に、イベント中止を要求する。



「また君か……見ただろ、君もこれを!」


 園長はデスクの上に、あの週刊誌を投げつけた。


「存じております」


「このせいで、今でもクレームの電話が鳴り止まない! どうしてくれるんだ!!」


「クレームとは……イベントを中止にしろといったものですか?」


「違う!! ふざけてるのか!? 客は説明を求めているんだ! なぜ警察がいたのか……なぜ20日の日、突然イベントを中止したのかのな!!」


 その理由は……やはり現田には明かすことができなかった。

 予知夢の話など、この男が信じる訳がない。

 

「お願いです……きっと今回が“最後”です。園長、お願いします!!」


 現田は園長の前で、またしても土下座をした。

 誠意……やはりこれしか、現田に伝える術はない。


 現田は今日こそが、事故が起こるその日だと信じていた。

 元々は、芽依の悪夢がこの先の日にちに控えている。

 しかし、連続して誠人が見た悪夢の日にちは、すべてが今日の24日であった。きっとこの現象にも“意味”があるはず。


 また、何度もこの頭の固い園長を説得させることなど、困難を極める。

 現田は、もうこの日にすべてを賭けるしかなかったのだ。



「フン! またか……安い土下座なもんだ。だが今、はっきりと言ったな? 今日で……“最後”だと?」


「はい……二言はありません。これで最後です。どうか……お願いします!!」


 現田は更に強く床に頭をつける。

 警察の人間に、これほどできる者が一体どれだけいるだろうか。

 すべては人の命を守るため……そのためだったら、現田は何だってする。一切の恥すらをも捨てる覚悟だ。


 大原は深い溜め息をつき、ゆっくり目を瞑った。


「はぁ……頭をあげたまえ。これでは私が悪いことをしているみたいではないか」


「園長! では……」


 すかさず現田は頭をあげ、大原を見るが、早くも目を見開いていた大原の顔に──笑顔はない。


「フン……早まっては困るよ。約束はできない。まだイベントまで時間はある。考えておこう」


「ありがとうございます!! お願いします!!」


 現田は今一度、感謝の言葉と共に、“最後の”土下座をした。




・・・



 

 時刻は8時40分。イベント開始の20分前。

 俺はすでに連絡通路の前で、1人待機していた。


 もう時間も迫っているというのに、未だにイベント中止のアナウンスはない。

 そして、悪夢と同じように……いつの間にか雨が降り始めている。


「雨……やはりそうだ。事故が起こる日は……間違いなく今日だ」



「誠人!」


 ようやくここで、ゲンさんが持ち場の連絡通路へとやって来た。


「──ゲンさん! とりあえず刑事さんと一緒にカラーコーンを置いて、連絡通路を封鎖してみたけど……どうかな?」


「あぁ、上出来だ」


「よかった。それで、ゲンさん。話はつけれたのか?」


「一応やってはみたが……絶対の自信はない。警戒は怠らないでくれ」


「……そうか。分かった」


 この時間帯となってから、やたらと球場の外周に、人が増えてきている気がする。

 もしかして野球の試合が終わり、球場にいた人達が外へと来てしまっているのだろうか?


 野球場の客の中には、9時からのイベントを楽しみにしてる者も、数多くいたのだと思われる。

 連絡通路の通行止めに、不満が出ている。


「なんだよ……通行止めって……イルミネーション見に行こうとしたのに」


「下に降りて、道路を渡って遊園地まで行きましょう!」


 今の若いカップルの声が聞こえたゲンさんは、瞬時に危険を察知し、機転を効かす。

 用意していた拡声器を使い、客を園内から遠ざけさせるためにハッタリをかましたのだ。


『現在、園内は入場規制がかかっています。下に降りても園内には入れません。混雑を避けるため、これより先には近づかないようお願いします』


 さすがだ。ゲンさん。ナイス判断。


 だがここで、明らかに運営スタッフでも警察でもない俺の姿に(ひが)んだのか、別の客が暴言を飛ばす。


「あいつ……ただの学生じゃねぇのか? あいつは中に入っていいのかよ。傘もさしてねぇし、何やってんだ」


「ほんとだ……こっちは刑事だよな? まさか、あの週刊誌の件って……」


 様々な声が、あらゆるところから飛び交っている。


 視界が悪くなるのを避けるため、傘をさす余裕は俺とゲンさんにはない。

 そこまで大粒の雨ではないが、濡れた体と周囲からの視線は想像以上に冷たく、俺の体は震えていた。


 その震えが見て取れたようで、ゲンさんは拡声器を外し、俺に直接声をかけてくれた。


「堂々としていろ。気にするな。誠人は事故のことだけを考えていればいい。この人だかりのことは、私がなんとかする」


「……はい。分かりました」


 言葉が身に染みる。少し落ち着きを取り戻せた気がした。

 イベント開始時刻までは……あと僅かだ。




・・・




 そして、時刻は9時を迎える。

 結局、イベント中止のアナウンスはなかった。

 その辺の決定権は、園長が持っているのだろう。


 連絡通路の前は、次第に人で溢れかえり始めていた。

 皆、言いつけは守って中には入ってこないものの、外からイルミネーションは見たいのか、その場に残り続けている。


「9時を過ぎた……でも、アトラクションの電気は点いたままだ」


 イベント通りに事が進むならば、一旦すべてのアトラクションの電気は消えるはずである。

 しかし、そういった傾向もない。

 これは……イベント中止となったのか?




──だが……この遠い連絡通路にいた俺達には、分からなかったんだ……


 少しずつ……ひとつだけ電気が消えたジェットコースターが、ゆっくりと動き始めていることを……



 異変にいち早く気付いたのは、ジェットコースター乗り場にいた、芽依と刑事の金子である。


 それでも、2人が気付くまでにはだいぶ時間が掛かってしまっていた。

 イベントを今か今かと待ちわびる客は大勢おり、その者達の声がコースターのレールを昇る音をかき消していたのだ。


 園内からのイベント中止の合図は出なくとも、警察は強行手段に出ていた。

 ジェットコースター含め、その他の被害が出ると思われるアトラクションには、警察が乗り場の前に立ち、封鎖をしている。


 その油断もあってか……

 ジェットコースター乗り場の1階で、人が入らぬよう待ち構えていた芽依と金子は、遅ればせながら動くジェットコースターの存在に気付く。


「──ん? なんか音が聞こえてこないか……」


 金子にそう言われた芽依は、空を見上げた。


「えっ……ジェットコースターが……勝手に動いてる!? どうして!!」

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