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星が墜ちた夜から  作者: Guru
7章 4つの点
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第68話 “星が墜ちた夜から”

 車を路肩に停めたあと、俺と勇次は後部座席にいる芽依の話をよく聞くために、身を乗り出した。

 芽依はメモ帳のページを白紙の部分に変え、1から書きつつ、ある“新事実”を説明する。


「おばさんの話を聞いて、私達にあった法則が分かったの!」


「法則?」


「えぇ、私達が“共有していた悪夢”……それらは、だいたい私達が住んでいた近い場所が多かった。勇次は今は引っ越して、誠人の家の近くになっちゃったけど……」


「そうだな。それまで俺は千葉に住んでいた。千葉と言えば……俺達の最初の悪夢の、自殺未遂の女の子の事件がある」


 勇次がそう言うと、芽依はメモ帳の右側に“千葉”と書き始める。


「そう、最初の事件は千葉だった。次は……銀行強盗の事件」


「あぁ、それは埼玉の銀行だったな。確かに俺の家からそれほど遠くない、同じ埼玉県内だ」


 今度は俺がそう言うと、芽依はメモ帳の下の方に“埼玉”と書く。


「次は私と誠人で挑んだ、私の家の近所の公園……」


 芽依は自らそう説明して、メモ帳の上の辺りに“神奈川”と書き込んだ。


 ここまで聞いても、よく意味が分からなかった勇次は芽依に尋ねる。


「芽依の言う通り、みんなそれぞれ近場の場所での悪夢だったけどよ……それがどうかしたのか?」


「えぇ、この“3つ”の段階では、私も何とも思ってなくて、ピンとも来なかった……仮にそこで気付いても、単なる偶然で終わる……でも私達にはもう1人……智の分があって、全部で“4つ”あるのよ!」


 芽依は最後に、その4つ目となる“山梨”をメモ帳の左側に書き加えた。


「私、おばさんに智の亡くなった川の場所を今日初めて聞いて、もしかしたらと思い始めて……さっきからずっと調べてたの」


 今までメモ帳に書き留めた4つのワード。

 “千葉”、“埼玉”、“神奈川”、“山梨”──


 芽依はそれら4つの点を線で繋いでいく……

 すると、その“点”は、“四角形”へと姿を変える。


「……この出来上がった四角形……これらの“4つの点”の位置は“関東の地図”を表しているの。そして、照らし合わせた結果、その中心に来るのが──“東京”となる!」


「おおっ!」


 勇次はこの時点で驚いていたが、芽依は更なる驚愕の事実を明かす。


「驚くのはまだ早いわ。この点の位置……何も適当に打ったわけじゃない。これらはすべて、地図上での事件が起きた場所に相当する位置よ!」


「えっ……この点って、芽依がそれとなく打った位置だったんじゃなかったのか……?」


「──違うわ。ちゃんと位置も正確に打ってるつもり」


 俺が芽依の言葉を、そっくり聞き返したのにも理由があった。

 図で表せば、四角形の“□”の形が回転され、“◇”となるが……

 この四角形は、4つの線がほぼ同じの、綺麗な正方形(・・・・・・)となっていたからだ。偶然にしては、出来すぎている。


「どうやら違和感に気付いたようね……誠人は! それでね、この点の残りすべてを、更に結んでいく……“+”の印を作るようにね! すると、その交わる点……いわゆる、四角形の中心部に当たるところに……ある場所が浮かび上がってくる! それが──“東京遊園地”よ!!」


「えぇーーっ!!」


「嘘だろ……マジか……」



 これは……信じられないことが起きた……

 俺達が共有していた、今までの4つの悪夢の場所を照らし合わせていくと、その中心に現れるのが、今回の事件が起こる──“東京遊園地”だと!?


 これが偶然なわけ……ないよな!?

 すべてが計算づくされた形となっていたのだから……

 だとしたら……その計算ってのは……


 俺はここに来て、ようやく理解する。

 芽依が本当に伝えたかった、“真”の事実を。



「もしかして芽依……今回の事件の悪夢を見た時……俺達全員が感じていたデジャブって……」


「えぇ……その可能性は十分あるわ!! あれは……私達の勘違いだったのよ!!」


 1人まるで話についていけていない勇次は、車内で騒ぎ、暴れまくる。


「おい! どういうことだ!? 俺にもちゃんと教えろ!!」


「だから……勇次。俺達は遊園地の悪夢を見た時、全員どこか一度見ていたような気がしていただろ? あれは先月の結婚式の演出と類似してたからじゃなかった(・・・・)──って話なんだ! たまたま直近に起きた出来事に、俺達の意識は持っていかれていた!」


「違うのか? みんなで、そう結論付けてただろ?」


「あぁ、一度はな。でもそれは実は間違いだったんだ! 過去に起きた4つの悪夢が、すべて計算されて配置されていたと言うなら、それは──“最初”からってことになるんじゃないのか!? じゃなきゃ“すべて”は成り立たない! “1”からどころか……“(ゼロ)”から計算されていたんだよ!!」


「ゼロって……もしや……」


 勇次も薄々気付き始めてきたのか、身震いしている。


「そう、俺達のすべてのきっかけである……あの大きな“流れ星”のことだ!! あの流れ星を見たのは、みんなで遊園地に遊びに行った帰りの出来事だったはず!!」


「遊園地……言われてみれば、そうだったかもしれねぇ……」


 自信無さげに答える勇次に対し、芽依はきっぱりと答えた。


「えぇ、私もそう記憶してるわ。私達4人は遊園地から帰る際に、あの流れ星を見た。即ち……遊園地の()で、このイルミネーションの演出を見ていた! だから私達は、このイベントを見たのが初めてな気がしなかったのよ!」


 芽依の言う通り、俺も遊園地の外……

 今回の悪夢のフリフォールが倒れると予測される、あの“連絡通路”から遊園地の中を眺めていた覚えがある。

 だから……あれは単なる“流れ星”なんかじゃない。



「俺達が見た、大きな流れ星……あの正体は…………“光るジェットコースター”だったんだよ!!」


「ジェットコースターって……まさか……今回の事件の……」


「あぁ、そのまさかのまさかだ! 常識的に考えて、ジェットコースターが空を飛ぶわけがない……だからそれを俺達は、流れ星と勘違いしていたんだよ!! 俺達は小学生の時点で、今回の“悪夢”をすでに見ていたことになるんだ!!」


「あれが悪夢……そのせいか! まるで夢かのように家で目が覚め、誰に話しても、流れ星を見たなんてやつはいなかったのは……」


 勇次がすべてを理解したところで、芽依はひとつの推測を立てる。


「えぇ……それですべての辻褄が合う。それでね、思ったのよ私。私達は、この予知能力に目覚めるのに、随分と時間を要した。目覚めた時期は、みんなバラバラ……そう考えると、もしかしたら智は誰よりも早く、この予知能力に目覚めていたのじゃないかしら!?」


 芽依の推測に俺は納得する。

 そして、智がなぜ去年、突然亡くなったのか……その理由をも理解した。


「そうか……智はすでに1人で戦っていたんだ……俺達のように、悪夢を防ごうと!! それに失敗した智は……水難事故に巻き込まれ、命を落としてしまった……」


「なんだと!? バカ野郎!! それならどうして、俺達に言ってくれなかったんだ!! なんで1人きりで……あいつは!!」


 勇次は悔しさからか、車の座席を力一杯殴った。


 でも……俺にはその智の気持ちも、分かる気がしていた。



「怖かったんだよ……きっと。智は俺達に話すのが……」


「えっ……?」


「俺達だってそうだったじゃないか。俺達3人出会うまで、全員悪夢の話は黙ってたじゃないか!!」


「そういえば……そう……だったな」


「しかも、皮肉なことに、俺達がこの悪夢を知るきっかけとなったのは、智の葬式で再会できたからだ……それを機に、こうして俺達は再び集まることができた」


「そうだったわね……久しぶりに会った日の飲み会で、私が悪夢の悩みを打ち明けて……そしたら、皆が同じ悩みを持っていた……」


「あぁ……智は俺らと違って、その“確認”すら取れやしない……4人が同じ予知夢を見てたかどうかすら、智には分からなかったかも知れないんだ!!」


「そうか……あいつは……1人で戦うしか……それしか手段がなかったのか……」


 勇次はようやく納得し、俺から顔を背けた。

 もしかしたら、泣きそうになったところを、俺に見られたくなかったからなのかもしれない。



 俺達の悪夢との戦いは、何も今始まったわけではなかったんだ。

 今までのは予行練習だとばかりに、最後にデカイ任務を俺達に持ってきていた。


 あの“(ジェットコースター)が墜ちた夜から”──物語はすでに始まっていたんだ。

 よくタイトルの漢字を「星が堕ちた夜から」と間違われますが、こちらの“堕ちた”は、良いことから悪いことに変わる際に使われるそうです。

 有名なところでは、地獄に堕ちる、堕天使……などがありますね。


 そして、正確なタイトルの方は「星が墜ちた夜から」です。

 この“墜ちた”は、高いところから落ちるという意味があり、主に──“墜落”で使用されます。


 紛らわしい漢字ですけども、迷った時には、この回のことを思い返してもらえれば幸いです。


 さて、事件はまだ未解決ですが、ここで7章は終わりとなります。

 続きの8章も、読んでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。  

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