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星が墜ちた夜から  作者: Guru
7章 4つの点
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第66話 “メッセージ”

 俺達はそのまま車で移動し、出発してから約2時間後。

 山梨県にある、智の実家へと到着した。


 俺と芽依は運転手の勇次を残して、一旦車の外へと降りる。



「ここか……落ち着いた、いいところだな」


 そこはとても静かな田舎町といったところだった。

 智の実家は平屋で、とても大きなお家だ。


 15分ほど前に、芽依がそろそろ着くことを電話で伝えていたためか、家の外で智のお母さんが待ってくれている。俺達を出迎えてくれていた。


「あら、久しぶりね! みんな! 大きくなっちゃって!」


 小学校の頃、よくみんなの家に出入りして遊んでいたので、それぞれの両親とは全員面識がある。


 実際俺達は、去年の智の葬式の時に智の母親(おばさん)には会っているのだけど……

 あの時の精神状態では、俺達の顔などよく覚えてはいないだろうな。


「すみません。今日は突然の連絡で、お邪魔する形になってしまって」


「いいのよ! 智も喜ぶことでしょうし! 車はその辺に適当に停めてもらって大丈夫だから。さぁ、何もないところだけど、上がってちょうだい」


 勇次が車を停めるのを待った後、俺達は智の実家へと上がらせてもらうこととなった。




・・・




「まさかあなたが、あの芽依ちゃんとはね。綺麗になっちゃって。誰だか分からなかったわ」


「いえ……ありがとうございます」


 おばさんは昔から明るく、よく話す人だ。

 まずは智の仏壇へと案内してくれているらしい。

 俺達は家の廊下で、おばさんと他愛もない会話をしていた。


「誠人君もあんなに小さかったのに、随分大きくなっちゃってねぇ」


「はい、昔はかなり背が小さかったですから。智とは兄弟とよく間違われたものです」


「あら、そんなことあったっけ? でも勇次君は……ちっとも変わってないわね。見た瞬間、すぐ誰だか分かったわ!」


「えぇっ! そうですか……喜んでいいのやら、何のやら……」



 長い廊下を歩いた後、俺らは智と久しぶりに再会する。


「ほら、みんなが会いに来てくれたわよ。智」


 智に話しかけるように、仏壇に向かって、おばさんは明るく声をかけていた。


「智……」


 仏壇の上には、亡くなる直前の智の写真が何枚か飾られている。

 中学を卒業以来、智とは数えるほどしか会っていなかったため、俺達の知らない智の姿が写真には収められている。


 1枚の写真からでも真面目さが(うかが)える黒い髪の毛に、ほんのり焼けた小麦色の肌。いかにも好青年といった感じだ。


 智……遺影だけではよく分からなかったけど……こんな風になってたんだな……


 俺がまじまじと写真を眺めていると、おばさんは寂しそうな声で言った。


「あまり写真という写真がなくてね。これしかなかったの……もっと写真、撮っておけばよかったわ」


 確かに、女子ならまだしも……

 男の俺には気持ちがよく分かる。どうも歳を重ねるにつれ、写真を撮るのが小っ恥ずかしくなってくるんだ……

 俺ももうちょっと、今からでも写真を撮るようにしとこうかな。



 俺達は1人1人、線香をあげながら、智と会話をした。

 特に俺は、“どうか力を貸してくれ”……そう強く願った。



 智との対話を終えた後、おばさんは居間でお茶を入れてくれた。

 ちょうどこの部屋からでも仏壇を眺めることができる。

 そのため、智も交えた気分になって、昔話に花を咲かせた。意外にも、おばさんとの思い出話も多い。


 あれだけ俺達は仲良く、常に一緒にいたんだ。

 俺達が小さい頃の記憶を覚えていないだけで、おばさんは色々と覚えているみたいだった。



「あぁ、そうそう。これ、渡しとくわね」


 会話の途中で、おばさんは何かを思い出したかのように、突然立ち上がる。

 ゆっくりと智の仏壇へと向かい、仏壇の引き出しから、“あるもの”を取り出した。


「はい、これ」


 そして、おばさんは偶然近くにいた俺に、その“あるもの”を、そっと手渡す。

 

「──これって……」


 俺が手にしたもの……それは──“1枚の写真”だった。


 昔よく遊んでいた、あの頃(小学生時代)の懐かしき写真である。

 そこには、笑顔の俺達4人の姿が写っている。背景からして、智の埼玉時代の家の前で撮ったものだろうか?


 しかし、この写真……おかしな点がある。

 随分と折れ曲がり、汚れているというか……かなり濡れた跡が残ってしまっているのだ。


「これ……なんでこんなに濡れて……」


「それね、智が亡くなった時に、お財布の中に入ってたものなの」


 そういう……ことか……


 俺は今のおばさんの発言で、ピンと来ていた。

 智が亡くなったとされる場所は、山梨県のとある川だ。水難事故に巻き込まれ、突然の死を迎えている。

 それを知ってから改めて写真を見ると、この折り曲がった跡や、濡れた跡は……いかにも生々しい。



「──川での事故だったからね……中々遺品は出てこなかったんだけど、バッグの中の財布のその写真は、不思議と綺麗に残ってたのよ」


「そうなんですね……」


 ふと、何となくで俺は、その写真の裏側を見てみた。

 すると、そこにはマジックか何かで、文字が書かれている。


「なんだこれ……」


 俺はその文字を読もうとしてみたが、水で濡れてしまったせいか、真ん中辺りに書かれていた範囲が認識できない。

 端の辺りだけは、かろうじて読むことができるため、その読める部分だけを、とりあえず読み上げてみる。


「“みんな────ように”……かな? 後は、ほとんど滲んで読めないな」


 隣に座っていた勇次は、疑問に感じていたのか、おばさんに写真のことについて尋ねていた。


「この写真って、大人になるまで財布に入れてたんですかね? 昔からずっと」


「いえ……違うと思うわ。あれは亡くなる半年くらい前かしら。急に智が『昔の写真はないか?』って、騒ぎだしたのよ。財布の中なんて普段覗かないから分からないけど、きっと入れたのはその時だと思うわ」


 ここで芽依は、何かを思い付いたかのように、強引に俺から写真を奪い取る。


「ちょっと貸して」


「おっと……」


 食い入るように写真を眺めた芽依は、この謎の文字に、ある違和感を覚えたようだ。


「おばさんの言う通りかも……この字……明らかに大人になってからの字ですもんね。智は字が綺麗だった記憶はあるけど……さすがに子供の書く字じゃない」


 確かに……言われればそうかも。

 どうみても、この当時写真を撮ったときに書かれた文字ではない。

 だとしたら、なぜ智は急に俺達の写真を……


 これは……もしかして、俺らに対するメッセージなのか?

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