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星が墜ちた夜から  作者: Guru
7章 4つの点
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第59話 “新メンバー”

 埼玉県警、警部補──“現田(げんだ) (みのる)”。33歳。


 頼りになる男が、協力者となってくれたようだ。

 今回の遊園地での大事故は、多くの犠牲者を出す恐れがある。

 正直、俺達だけの力ではどうにもならないレベルだ。警察の手を借りられるとなれば、少しは希望が沸いてくる。


 俺達は今のところ出揃っている情報を、現田さんに伝えた。



「そうか……君達自身、迷っているところがあるのだな。候補となる日にちが3日あると……」


 現田さんは、警察手帳とは別のノートをカバンから取り出し、あらゆる情報を書き込んでいた。

 さすがにそのノートは他の事件のこともあるため、機密事項。中身までは見せてもらえない。



 そういえば、現田さんが割り入ったせいで、俺が調べてきた情報をみんなに話すのを忘れていたな。タイミングを完全に逃してしまっていたんだ。


「そうそう、俺もちゃんと調べてきたんだぜ? 聞いてくれないか? 俺は2人みたいに現場には行けなかったから、ネットを駆使してだけど」


 俺は用意していた、ある紙をテーブルの上に出す。


「何これ……」


「遊園地のイベントだよ。見やすいようにと、プリントアウトしてきたんだ」


 芽依はその紙を手に取り、上に書いてある文字から読み始めた。


「えっと……何々……“あの夏の一大イベントが今年もやってくる”──ですって?」


 その後も、芽依は律儀に読みあげていく。



──今年もやります! 昨年大好評だった、あの企画。

 いつもより“ちょっと速い”ジェットコースター”。いつもより“ちょっと高い”フリーフォール。そして、いつもより“超ド派手な”打ち上げ花火──



「……だって! 何よこれ……おもしろそうじゃないの!!」


 このイベントが、恐らく事故の原因になるはずのものだと言うのに……なんとも芽依は呑気な事を言っているのか。


「おいおい……きっとこれのせいなんだぞ……事故が起きるのは……」


「だって、本当におもしろそうと思っちゃったんだもの」


「まぁ何でもいいけどさ……調べた結果、これは去年から始めたイベントみたいなんだ。動画サイトに去年の様子があった。それがこれだ」


 俺は今度はスマホをテーブルの上に置き、誰かがアップロードしたであろう、動画の再生ボタンを押した。


「ん? なんだよ。真っ暗じゃねぇか」


「慌てるな、勇次。最後まで見てろって」


 確かに勇次の言う通り、最初画面は暗く、何も映っていない状態だった。

 ざわざわとした、人の声だけが聞こえている。

 しかし、その僅か数秒後……音楽が鳴り始め、ジェットコースターに明かりが点灯した。

 その時点でジェットコースターはすでに一番上の高さの位置にあり、まさに急下降する直前だ。


 そして、ジェットコースターは猛スピードで動き始める。

 コースターの周りを飾る明かりが光輝き、とても綺麗だ。


 悪夢で見たのと同様に、ジェットコースターを皮切りにして、次はメリーゴーランドが光り、動き出す。

 順を追っていくように、次はコーヒーカップ、その他のアトラクション……と、次々が同様のシステムで動いて行くのだ。


 最後に、フリーフォールが頂上から真下へと落下した時……

 音を立てて何発もの花火があがった。これにて、グランドフィナーレである。



「すごい……綺麗ね! 素敵な演出(・・)じゃない!!」


 動画でイベントの一部始終を見た芽依は、ご満悦な様子だった。


「なるほどな……イルミネーションとアトラクションを組み合わせてるわけか。だから最初は暗闇で、ほぼすべてのアトラクションは止まり、明かりも消えている。確か悪夢の始まりも、似たように暗かったもんな」


 勇次もイベントの内容を把握したようだ。

 しかし、そこで勇次の話は終わらず、先程の芽依の発言に苦言を呈した。


「それにしても……さっきのは、わざとくさいぞ。芽依」


「えっ? 何が?」


「“演出”の部分だよ。強調しやがって。どこか見たことあると思ったら……芽依が考えた先月の結婚式の演出と似てる。知っててわざと言いやがったな?」


「……あっ、バレてた?」


「当たり前だろ! 自画自賛もいいとこだ!」


 どうやら勇次達も、俺と同じような印象を受けていたみたいだ。


「やっぱりそれ思ったか。これを考えた芽依は本当にセンスあるよ」


 割りと俺は本音で言っていたのに……

 芽依には(おだ)てているように聞こえてしまったらしく、嫌味たっぷりだった。


「いいのよ? 誠人。自分があの時ミスしたからって、無理に褒めなくても」


「いや、そういうわけじゃ……」


 全く話についていけてなかった現田さんは、ずっと険しい表情を浮かべている。

 そして、おちゃらけた雰囲気を壊し、話を元に戻した。


「……そろそろいいかな? 話に戻っても? 私もあまり時間がない」


「はい……すみません。会議を続けましょう!」


 こんな下らない話をしている時間も、もったいないくらいだったかもしれない。

 俺達は今一度、気を引き締め直す。


 現田さんは、俺らがふざけていた間も、俺が持ってきた資料をずっと眺めていた。


「先程の動画は、去年の映像。まさしく、これと同じことが今年も行われるというわけだな。この資料によると、イベントの日にちは、7月20日から31日までとなっている」


 それを聞いた勇次は、大声をあげる。


「7月20日って……俺が悪夢で見た日にちじゃねぇか!」

 

 ようやくそこに気付いたか。勇次。遅いくらいだぞ。


「あぁ、そうなんだよ。でも、それだけじゃない……俺と芽依が見た日にちも、そのイベントの期間内に含まれる」


 恐らくこのイベントは、主に小さい子供達を対象に行っているのだろう。

 大抵の学校が、7月20日の海の日を境に夏休みとなる。

 遊園地側としては、その夏休みの始めに、人を呼び込む作戦に違いない。

 お盆休み辺りになれば、大きなイベントを開かなくても、勝手に人は訪れると計算しているのか、あえてこの時期の期間にイベントを開いていると予測できる。


「誠人、もう一度よくその紙を見せてくれ」


 勇次は資料を手に取り、改めて隅々まで確認し直した。


「肝心なのは、イベント開始の時間だ。時間は……“夜の9時から”みたいだな。俺と誠人の悪夢は、まさにその9時付近で、芽依は9時半過ぎだった……そうなると、芽依の悪夢の方の時間は記憶違いか?」


「決めつけはよくないわ。私の悪夢の正確な時刻は9時32分。もしかしたら、何かしらの都合で、30分遅れただけの可能性だってある」


 芽依の用心深い考え方に、現田さんも賛成のようだ。


「そうだな。楽観的には考えないことだ。そうすれば、最悪な状況に追い込まれたとしても対応することができる。常に物事は悪い方向を想定しておくんだ」


 さすがは刑事さんだ。言葉に説得力がある。

 そして、現田さんはもうひとつアドバイスを送る。


「それに吉川さんの場合の悪夢は、2人よりも日にちが後だ。後回しで考えることができる。先に考えなければいけないのは、直近の武藤君の方だろう」


 ごもっもな意見だ。すべては現田さんの言う通り──と、俺が納得していると……


 名字呼びが気に食わなかったのか、勇次は一回り以上歳の離れた現田さんに、偉そうな口を叩く。


「ゲンさん、水くせぇじゃねぇか。“武藤”じゃなくて、“勇次”でいいぜ!! 俺達もう仲間なんだしよ!!」


 おいおい……自分の呼び方よりまず、その“ゲンさん”呼びはいいのか?


「そ、そうか? じゃあ勇次……そう呼ぶよ」


 現田さんの方が、こちらに歩み寄ってくれたのをいいことに、芽依も便乗する。


「私も! “芽依”でいいわ!」


 そうなると、ここは俺も合わせるしかない。


「なら……俺は“誠人”で」


「そうか。なら私も……“ゲンさん”と呼ばれるべきなのか?」


 ちょっと……現田さん!! この人、もしかして天然か!?

 まぁ親しみやすいってことで、いいか!!


 よろしく頼むぜ。ゲンさん!!



 こうして、俺達は現田刑事と打ち解け、悪夢の戦いのメンバーとして、新たに“ゲンさん”が正式に加入した。

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