表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星が墜ちた夜から  作者: Guru
7章 4つの点
58/76

第57話 “鍵”

 勇次の表現する──夢の濃さ。

 聞いてる限りだと、確かに俺と2人では、その“濃さ”とやらの違いはありそうだ。


 しかし、それだけを理由に、俺の夢が正しいと決めつけられては困る。


「おいおい……過信しないでくれよな。実際に俺の日にちと、決まったわけじゃないぞ?」


「分かってるって。その可能性が高いんじゃないかって話だ」


 それでもやはり勇次の持ち出した説は何の根拠もなく、何だか腑に落ちない。

 

 俺の見た悪夢の日にちは24日だが、勇次の場合は、俺の日にちよりも手前の20日だ。

 こちらの可能性を否定するわけにはいかない。


「それにしても、まず今日から一番近い日にちは、勇次の見た悪夢だろ。これを無視はできないよな……」


 今日は16日。まだ猶予はある。


 慎重派の芽依は俺の意見に賛成だったのか、すべての夢の日にちを網羅するつもりだ。


「そうね。可能性があるかぎり、その日は東京遊園地に向かいましょう。タイミングもよく、そろそろ夏休みに入ることだし」


 気付けばもう7月の終わり。学生は夏休みを迎える。特に大学生の夏休み期間は長い。


「そうだな。俺は明日、下見がてら遊園地を見に行ってみるよ」


 積極行動の勇次は、早速明日、直接現場に足を運ぶようだ。


「俺も行きたいけど……明日は大学に行かなきゃなんだよな……」


「無理には大丈夫だ。誠人。それに全員が同じ行動を取っても仕方がない」


「そうね、それぞれが出来ることをしましょう。私も大学があるから、帰りに寄れたら遊園地に寄ってみるわ」


 芽依は都内の大学に通っているため、比較的遊園地には近い。行ける距離だ。

 

 とりあえず今日は、これにて解散することになった。

 次の集合日時は、明後日の18日の夜に決まる。




・・・




──各々が情報収集を済まし、約束の18日の夜。バー・眠れる羊(スリーピングシープ)にて。


 

「俺は昨日遊園地に行ってみたけど、2人はどうだ? 何か分かったか?」


 勇次が場を仕切り、スマホをテーブルの上に置いた。


「写真をいくつか撮ってきた。園内はこんな感じだ」


 何十枚も色々な角度から写真は撮られている。

 今一度、それぞれの夢の配置を確認しながら、その写真を眺めた。

 

「確か俺は前にメリーゴーランドがあったんだよな。そうだ、こんな感じだった」


 俺の目の前で、2つの連なったコースターが落ちる。いくつかのメリーゴーランドの乗り物を直撃していた。


 芽依がいたのはジェットコースター乗り場。

 勇次はフリーフォールの傍にあった、コーヒーカップの近くだ。

 確か、その辺りにもコースターは落ちるはず。それは倒れるフリーフォールの反対(・・)サイドに当たるはずである。



「写真を撮るときに気付いたんだけどよ……俺達の悪夢……誰もフリーフォールが倒れる位置にいないんだよな……」


 そう……なんだよな。

 非情なことに、一番犠牲が出たであろう、折損(せっそん)したフリーフォールが倒壊した位置……それが俺達には分からないのだ。


「もしかして……この悪夢を見たのが……(さとし)……」


 やはりここに来て、最難関の問題が発生してしまう。

 どうしていつもこう、智が“肝心な悪夢()”を握っているのか。


「それでもフリーフォールだけじゃない……ジェットコースターには人が乗っていた。犠牲者は他にもいるぞ」


「あぁ、分かってる。もちろんその人達も助けなきゃならない。けどよ……」


 悪夢では、フリーフォールが倒れる際、おびただしい数の悲鳴が聞こえていた。

 果たして一体、どれだけの犠牲者が出てしまうのだろうか……想像しただけでも身の毛がよだつ。


「そう言うと思って、一応私も昨日見に行ったわ。私が行ったのは、遊園地ではなくて、“その隣”だけど」


 どうやら芽依も昨日の大学終わり、遊園地に足を運んでいたらしい。

 しかし、芽依が行ったのはその隣の施設のようだ。

 この東京遊園地には、隣接してもうひとつの大型施設が存在する。


 それは──“東京球場”。

 最大5万人が収容できる、ドーム式の大型野球場である。


「勇次が遊園地を見てくれてると思って、私はこっちを見に行ってたわ。これがその写真よ」


 芽依は勇次と違い、スマホで撮った画像を、実際の写真にして持ってきていた。

 その何枚もの写真を、テーブルの上に並べていく。


「なるほど。こっちのが見やすいな。俺も必要な写真を現像してみるか」


 勇次が感心したところで、俺はその写真に目をやった。


「──ん? この写真って……」


 芽依が撮ってきた写真は、野球場が写されているのかと思いきや……どれもこれも、その外周。通路の写真ばかりである。


「どうして、“外”の写真ばかりなんだ?」


「それはね、私の夢の位置からは、なんとなく倒れる位置が見えたのよ。折れたフリーフォールは、球場の方までは届いてなかったはず。倒れたのは上の階にあたる通路の部分」


 この遊園地は、当然の話だが、すべてのアトラクションは1階に建てられている。

 しかし、隣の東京球場の入り口は“2階”にあるのだ。

 道路を挟み、遊園地と球場を繋いでいるため、1階は一般道。2階は歩いて行ける連絡通路となっているわけだ。

 そして、そのまま2階は球場の外周となっており、番号が振られたいくつもの通路と入り口が存在する。


「そうか……フリーフォールが倒れても、球場までは届くわけがない。連絡通路の上に倒れたか、それとも一般道の方に倒れたか……その2択になるって話なのか」


 芽依が何枚も通路の写真を撮っていた意味が分かった。

 だが、明確な位置までは芽依にも分からなかったようだ。


「だけど、倒れた詳しい位置が私にも分からなかったの……私はジェットコースター乗り場の下の階にいた。事態にいち早く気付いて、上まで昇ってれば見えたかもしれないのに……」


 芽依は自分を責めた。勇次は慌ててフォローする。


「仕方ねぇよ。何が起こるか事前に分かるわけじゃねぇんだ。芽依が責任を感じることではない」


「でも……」


 芽依は完全に意気消沈気味だ。本当に勇次の言う通りなのに。

 確かに倒れる位置が分かれば、多くの犠牲者を防ぐことができるかもしれない。それだけに後悔の念が強いのだろう。



──しかし……その芽依の落ちた気持ちを、一瞬にして吹き飛ばすかのような出来事が、このあと起こる。


 俺達のテンションは一時的に下がり、静まり返っていた。

 そのせいあってか、黒のカーテンの外から、声が漏れ出ている。



「どうしたのです? こんなところで。中に入らないのですか?」


 これは……店のマスターの声だ。


 そのマスターと思われる声に続いて、今度は別の声が聞こえてくる。


「いや、私はここで大丈夫です。邪魔なら帰りますが……」


──あれっ? この声……どこかで聞いた覚えがあるな……


 謎の人物とマスターとのやり取りに疑問を感じた俺は、ソファーから立ち上がり、思いきってカーテンを開けた。

 すると……




「あなたは……ゲンさん!!」


 そこには通称、ゲンさん。埼玉県警の現田警部補の姿があったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ