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星が墜ちた夜から  作者: Guru
5章 正義のヒーロー
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第49話 “いつもの光景”

 勇次の笑顔に見事やられ、すっかり心を許した俺に対し……

 芽依はまだ不安が残っていたのか、勇次の心境の変化について問いかけている。


「それにしても突然どうしたの? あれだけ参加しないって話だったのに、協力してくれてさ。その心変わりは何だったのよ?」


「それか……俺はおまえらに事件の場所を知らせないために、全部黙ってたつもりだったけどよ……それでもおまえらは必ず無理するだろう? 何としてでも、事件を防ごうとする」


「うん」


 芽依による、何の曇りもない一言。

 やはり自分の考えは間違っていなかったのだと、改めて勇次は確信を持つ。


「……だと思ってよ。そしたらおまえらのことが気になって気になって、仕方がなくなっちまった。突き放すつもりが、気付けば余計にな……しまいには現場にまで向かう始末よ」


「なるほどね。最初っから、気にしないってのは無理があった話なわけね。だったら──もうあの辞めるって件は、無かったことでいいのかしら?」


 自ら去った勇次からしたら、今の芽依の言葉は助け船となったはずだ。だいぶ救われたに違いない。


「あぁ……おまえらが頼りなさすぎるからよ。仕方ねぇから一緒にやってやるよ! 仕方なく……だぞ?」


 勇次はお得意の上から目線で、“仕方なく”を強調する。

 しかし、それでも俺は否定することせず、あえてその勇次の言葉に乗っかって見せた。


「そうだな。仕方なく……な」


 俺達3人は笑顔に包まれる。

 本当は誰が一番、離ればなれになるのが辛かったのか、耐えられなかったのか……俺には分かっていた。


 でも、そこはもう言及する必要もないだろう。

 いつもの勇次が戻ってきたんだ。それだけでいい。


 ちょっと甘い気もするけど、別に勇次は悪いことをしてたわけじゃない。今回の件は、一時的な考え方の不一致によるものだしな。

 とにかくすべては、うまい酒と一緒に飲み込もうか!


 俺達は一斉に酒を胃袋に流し込んだ。

 これで綺麗さっぱり水に流れた……ってわけだ。

 大学生でも、たまには親父ギャグを言ったっていいだろう?



「あ、そうだ。2人にいいものを見せてやろうと思ってよ!」


 勇次はこのいい流れになったところで、話を切り出す。


「何? いいものって」


 芽依はテーブルに身を乗り出し、早くも興味津々だ。


「これだよ。ここ、よく見てみろ」


 勇次が持ってきたのは、昨日の新聞だった。その新聞をテーブルの上に広げ、ある1つの記事を指差している。

 俺と芽依は一緒になって、その記事を読んだ。


「なになに……『お手柄!! 大学生3人組が殺人を防ぐ!!』──だって!?」


 その記事には、何と俺らの事が書かれていたのである。

 それはとても小さな記事で、あまり目立ったものではない。

 しかし、その記事には白黒写真が付いており、大部分は逮捕された犯人が写されているが……その隣に俺達3人が、ちょろっと写真付きで載っているのだ。


「凄いわね。勇次。こんな小さな記事、よく見つけたわね!」


「当たり前だろ。俺を舐めるなよ? 何社か見たが、この新聞一社しかなかったがな」 


 あぁ……なるほど。めちゃくちゃ探したわけだな。

 俺達の活躍が記事になってないか、新聞を買い漁って探し回ったんだ。

 容易にも、そんな勇次の姿が俺の目にすぐ浮かぶ。



「なんだ。誠人。そんなこれが気になるのか?」


「──えっ?」


 俺は単に勇次の必死こいて新聞を探していた姿を、思い浮かべていただけなのに……

 勇次の目には、俺がよほど食いついているように見えていたのか、勇次は新聞を手に取って俺に差し出した。


「だったらこの新聞、おまえにやろうか?」


「いや、いいよ。これは勇次のものなんだろ?」


「大丈夫だ。だって──」


 勇次はバックを開け、中からまた何かを取り出す。



「──5つも買ったからよ。なんなら芽依の分もあるぜ?」


 そう言って、勇次はテーブルの上に同じ新聞をズラリと並べた。


「そ、そう……いいかな。私は」


「なんだ? 遠慮してるのか? ほら! 誠人も、芽依も! ほら! 受けとれよ!!」



 何だか……やっぱりこいつは、やかましいやつだ。


 まぁ何はともあれ、“あの”勇次が帰ってきたんだ。俺達の知る、いつもの勇次が。

 彼の底抜けの明るさは、決して折れてなんかいやしなかった。

 勇次が笑えば、俺達も笑う。

 俺達は──普段通りの光景(笑顔)を取り戻した。




・・・




 俺達が祝杯をあげ、若干1名が浮かれている頃。

 “ある人物”の元に、俺達が見ているものと全く同じ新聞が回ってきていた。



「見ましたか。この新聞の記事」


「新聞?」


「えぇ、これですよ。小さな記事でしたけど、たまたま見つけたんです。これ、どう思います? “現田警部補”は」


 その、ある人物とは──埼玉県警の現田である。


 現田は部下からもらった新聞の記事を見た。


「──これは……」


 それは白黒写真の、ほんの僅かな部分。

 この“3人”のシルエットを現田が忘れるわけがない。


「また彼らはやってのけたのか? その──“悪夢”とやらの力を使って」


「そうかもしれません。やはりそうですよね。この写真」


「間違いないだろう。よく見つけたな。よし……今一度、彼らを徹底マークするぞ!」


「はい!」

※ここで、5章は終わりです。次の章は、また一風変わった悪夢をお届けします。

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