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星が墜ちた夜から  作者: Guru
5章 正義のヒーロー
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第48話 “閉幕”

 まさに勇次は正義のヒーローだった。

 諦めかけていた俺には希望を与え、犯人である男には絶望を与えている。


「勇次……おまえがどうしてここに……」


 俺がそう尋ねると、勇次は照れ臭そうにしながら、右手で後頭部を数回掻いた。


「俺にはこの悪夢が見えてたからな。簡単なことだよ。来ないつもりが……おまえらが心配で、結局来ちまったじゃねぇーか!」


 やはりこの抜け道が車によって塞がっていたのは、偶然なんかではないようだ。

 勇次が意図的に、この場所に車を停めていたのである。


 勇次は悪夢として、男の逃げるルートが分かっていた。

 どうやら俺の悪夢で逃げた出口は記憶違いで、勇次の悪夢の方が正解ルートだったらしい。


 それを思うと、俺の悪夢は事件現場となる場所と、犯人の特徴を捉えるために必要だったのだと考えられる。

 しかし、芽依が偶然、この公園の場所を知っていたおかげで、俺の予知夢の効果は半減。

 本来芽依の役割は、事件の“その瞬間”を確かめるためのものだったのだろう。

 残された(さとし)の悪夢は、犯人が睡眠薬を入れるところでも目撃していたのかもしれない。


 まぁいくら推測を立てようが、真相は闇の中だ。

 何にせよ、結果的に犯人の男を追い込んだことに変わりはない。



「何なんだこいつらは……どうしてこうも、俺の行動が読まれる……」


 男は膝から崩れ落ち、その場に座り込んだ。

 何としてでも逃げるために、別ルートを探すかと思っていたが……

 それよりも男は、俺らに対する“恐怖心”の方が勝っていたみたいだ。


 なぜか睡眠薬のことを知る、謎の女……

 その時点で頭は真っ白であったのに、今度は自らの行動を読みきったように、突如別の人物が現れる……しかもその人物は、俺らの知り合いだ。


 これでは、男の理解が追い付かないのも無理はないだろう。

 きっと俺らのことが怖くて怖くて仕方がなかったはずだ。

 男は観念した様子で、涙を流しながら俺達に動機を明かした。


「許せなかったんだ……あいつが!! あいつは……浮気をしてやがったんだよ!! だから……だから……」


 男は地面に顔を伏せ、両手に握りこぶしを作って何度も地面を叩いている。


 男の涙ながらの話をよく聞いてみると、どうやら2人は正式に付き合っていたカップルだったらしい。

 だが、彼女は彼の純粋な気持ちを裏切り、浮気をしていたそうだ。

 それが男はどうしても許せなく、彼女殺害の計画を立てた。この初デートをした、2人の思い出の地である公園で。


 男は悔しかったのか、それとも自分自身が許せなかったのか……どちらかは分からないが、泣き崩れていた。

 この哀れな姿を見ると、同情してしまいそうでもある。

 しかし、殺害を企てようなんて……例えその理由が何であろうと、決して許されることではない。


 数分後、パトカーがやってきた。

 芽依が男が逃げている隙に、警察に電話をかけていたのだと思われる。


 男は殺人未遂で、その場で逮捕。

 ほぼ男による自首に近かったが、そうさせたのは紛れもなく俺達だろう。

 しばらくして眠らせていた女性も目を覚まし、警察に保護される形となった。



 見事な推理を見せた芽依──おいしいところを全部持っていた勇次──そして、俺のささやかな活躍により……この事件は幕を閉じた。




・・・




──数日後。

 俺達は事件を無事に終えた喜びを分かち合うため、祝賀会を3人(・・)で開催していた。場所はごく普通の居酒屋だ。



「いやー、本当に無事に終わってよかったよ」


「ほんとね。2人でどうなることかと思ったわ」


 ほっと一息をつく俺と芽依。

 今日は一段と酒がうまい。勝利の美酒だ。


「よくやったよ。俺抜きでよ。でも……結局最後は、俺の力が必要だったみたいだけどな」


 やたらと勇次は得意気に語っている。

 何だか鼻につくな……俺と芽依は愚痴をこぼす。


「調子いいなー。こっちは日にちも時間も分からず、大変だったんだからな!」


「そうよ。勇次がいれば、時間だって簡単に分かったはずなのに」


 勇次は俺らの文句をものともせずに、笑い飛ばした。


「はっはっは! そうかもな。俺には時間や逃げるルートが見えていたからな。だからあの場所に車を停めれたわけだしよ」


「その時間が分からなかったせいで、俺達ずっと公園で張ってたんだぞ!? もう見飽きたよ! あの景色は!!」


「まぁそう言うなよ! 結果的にうまくいったんだから、もういいじゃねぇか!」


 勇次はケラケラと笑っている。

 本当はもっと怒りたかったところだが……何だかその笑顔を見ると、自然と俺の怒りは消えていた。


 あれだけのことがあったのに、わだかまりなど俺達には一切ない。

 すっかり元の関係性に戻っている。もしかしたら、それが何よりも俺は嬉しかったのかもしれない。


 勇次もよほど嬉しかったのか、絶えず笑いっぱなしだ。

 

 どうも俺は、この男の笑顔に弱いらしい……

 なぜかこの笑顔を見ると……すべてを許せてしまうような……そんな気がするんだよな。

 

 彼の笑顔には、そんな不思議な魔法の力があった。

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