表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星が墜ちた夜から  作者: Guru
4章 悪循環
30/76

第29話 “時間稼ぎ”

 銀行強盗事件が起きるまでの数日間、俺達はどうすべきか考えていた。

 特に俺と芽依は、この現場に向かうことすら否定的だ。

 しかし、日に日にその時が近づくにつれ……俺らに心境の変化が訪れる。


 これが何度目になるだろうか。もう数えることをやめたくらいに、俺はこの悪夢の存在を恨んでいた。

 

 こんな悪夢さえ見なければよかったのに……

 知りさえしなければよかったのに……


 いくら嘆いたところで、俺達は犯行の場所、日時、すべてを把握している。

 やはり黙って指を咥えたまま、見過ごすわけにはいかない。

 

 そのような心境の移り変わりがあったのだ。

 余計な正義感が、俺達を危険にさらす。


 そこで出た結論は、『命を最優先に』、『無理は絶対にしない』──主にこの2点。


 それらをモットーとし、結局のところ俺達3人は、現場に向かうこととなった。

 

 ただ、気を付けなければならないのは、俺達の悪夢は“不完全”であるということ。

 (さとし)の分が補完できない……


 そんな不安を抱えながらも、当日を迎える。




・・・




──事件当日。午後2時過ぎ。

 俺達3人は、銀行前に到着した。



「ここだ。その銀行は」

 

 三橋銀行駅前店。悪夢では外観は分からなかったが、ここで間違いないはずだ。


「誠人はこの系列の銀行を使っているのよね? それならいいでしょうけど、私と勇次は、この銀行の口座を持っていない……どうしたらいいかしら……」


 芽依は銀行の目の前で、自分が銀行内に滞在する理由を探していた。


 もしかしたら俺が夢の中に実在していたのは、この事が深く関係していたのかもしれない。

 本来、勇次と芽依はこの銀行に来る用事はなく、その場にいたら辻褄が合わなくなってしまう。

 だから、その可能性のある俺だけが、夢の中の事件に参加していた可能性が高い。



「まぁそこは誠人の付き添いってことで、座って待ってればいいだろ」


「2人は俺の保護者かよ。まぁうろちょろしてるよりはマシか」


 勇次が適当な理由を付け、俺達3人は銀行の中へと入った。

 入ると早速、受付の女性が俺の対応をする。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」 


「えっと~……保険のことについて知りたくて」


 俺は銀行内を眺めた。

 やはり夢の中同様、並びはすべて同じである。


 俺が夢でいた場所は4番窓口。ずらっと横並びに並んだ窓口の、一番右奥のところだ。

 即ち、窓口は全部で4つということになる。


 だいたい銀行の窓口は、用件によって呼ばれる場所が決まっている。

 奥の場所は、大抵時間の長くかかるものが利用されることが多い。だから俺はあえて4番窓口を使用するであろう、“保険”を選択した。


「かしこまりました。こちらの番号札を持って、お待ちください。お連れ様はどのようなご用件でしょうか?」


「私達は関係ないので大丈夫です。友人の付き添いで来ただけですので」


「左様でごさいますか。空いてるソファーにお掛けになってお待ちください」


 俺達は空いていた中央のソファーへと移動し、腰をかける。

 自動ドアを通って、ほんの少し真っ直ぐに進んだ位置だ。前方に窓口はなく、2番と3番窓口のちょうど中間辺りといった所か。


「まずは入れたな。あとは時間を待つだけだ」


 事件が起きるのは2時23分。

 今は2時過ぎのため、まだ大分時間はあるが、俺達はあえて現場に早めに来ていた。

 なるべく夢の中と同じ状況にするために、俺は奥の4番窓口に座る必要がある。

 時間ギリギリだと、座れないかもしれない。そのために早く来ていたわけだ。


 しかし、平日の午後とあってか、銀行は比較的に空いていた。

 想像よりも早く、俺の順番は訪れる。

 まだ入店してから5分くらいしかたっていない。



「──もう呼ばれたか。だいぶ早いな。うまく時間を稼げよ。誠人」


「あぁ、分かってる」


 勇次にそう忠告を入れられながらも、俺は4番窓口へと向かう。



 席に着いてから、保険について担当女性から色々説明を受けた。

 だが、正直俺はその話に興味がない。それに加え何だか難しい話ばかりしており……全然耳に入っていなかった。

 言い訳に近いが、これから起きる大事件のことばかり、頭にあったからかもしれない。


 数分間説明を受けた後、まだ早いと思った俺は時間を稼いだ。


「あの……すみません。もう一度、最初から説明してもらってもいいですか?」


「最初から……ですね。分かりました」


 さすがのお姉さんも、露骨に嫌な顔をしている。

 長々した説明を、また最初からやり直すなんて……とんだアホがやって来たと思っているに違いない。


 俺はそんな無限ループを何度か繰り返していると……

 左端の奥に、芽依が立っているのが見えた。


 何やら芽依は壁にあるパンフレットを眺めている。

 確か芽依が夢の中にいたというのは、俺とは反対側の1番窓口の辺りだ。

 その近くに、背の高い強盗犯は現れるはず。すでに準備を始めているのだろう。


 それに勘づいた俺は、スマホを取り出し時刻を見た。

 時刻は2時22分。事件の起きる1分前だ。

 

 とうとうその時が──来る!!



「手をあげろ!! ここは俺達が占拠した!! 貴様、このバックいっぱいに、ありったけの金を詰めろ!!」



 来た……時間ぴったしだ。

 俺達の悪夢との戦いが幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ