第27話 “足手まとい”
翌朝、俺は早速昨夜の銀行強盗の悪夢を、勇次と芽依にメッセージで知らせた。
やはり今回の悪夢は、ランクの高い悪夢と言えるのか、3人とも同じ夢を見ていたようだ。
ここからは直接話しあった方がいいだろう。
俺達はいつものバーに集結することにした。
・・・
──その週の金曜の夜。バー・眠れる羊にて。
今日こそは勇次より先についてやろうと、俺は集合時間の20分前に来ていた。
一番乗り間違いなしと、奥の個室に入るも……
「おっ! 今日は早いじゃねぇか誠人」
──結局、勇次が一番乗りだった。
「勇次! もういるのかよ!! 今日こそは一番乗りだと思ったのに……一体、どれくらい前からいるんだよ……」
「ん~……1時間以上前かな?」
「1時間!? 何でそんなに早く!?」
だったら、集合時間を1時間早くしろよ。
俺はそう思った。
しかし、どうやら勇次は、知り合いであるマスターと話をしたいがために早く来てるらしい。
なんだよ。単に用事があって早く来てるだけか。無駄な争いだったようだな。
もう勇次より早く来てやろうなんてことは、金輪際やめることにしよう。
芽依が来るまでの間、勇次と他愛もない会話をして過ごした。
何でも勇次は、また新たにバイトを始めたらしい。
どうして以前のバイトを辞めたかというのは……俺の記憶には残っていない。俺は何も知らない。まぁ、そういうことにしといてくれ。
「仲良さそうね。2人とも。早く集まっちゃってさ」
そう言いながら、約束の5分前に芽依はやって来た。
みんな律儀に時間を守る、素晴らしいグループだ。
そして、芽依が到着して早々、今回の悪夢の作戦会議が始まった。
日時の件はともかく、俺は運良く銀行の場所を知っている。これはきっと有力情報となるはずだ。
まずは俺が最初に話を切り出した。
「今回の銀行強盗の現場は、俺が利用したことがある銀行だったんだ。場所は埼玉県の……“三橋銀行駅前店”だ!!」
自信満々に店名まで告げるも、芽依はそっけなく言葉を返す。
「やっぱり。間違いなさそうね」
「──えっ? 場所知ってたの? どうして分かったんだ?」
「だって、店内の至るところに書いてあったもの」
そ、そうか──もしかしてこれって、たいした情報じゃない!?
どや顔で言っていた自分が恥ずかしい……
次に勇次が、俺の知ることのない、時間と日にちの情報を提示する。
「日にちは27日。時間は昼間の2時23分だ。白昼堂々、銀行強盗とは……恐れ入ったものだな」
勇次に続く形で、芽依は更なる情報を述べる。
「私もほぼ同じ時間だったわ。曜日は“水曜日”。そうなると、来週になるでしょうね」
「今度は曜日まで……どうしてそこまで分かるんだよ?」
気付くと俺は質問ばかりしていた。
完全に足手まとい……何の情報提供もしていない……
「それも銀行内にあったのよね。木製のオブジェクトで、日にちと曜日が分かるやつ。日めくりカレンダーのように、曜日とかも自分で合わせていくのよ」
実物を見たわけでないが、芽依の説明により、それとなく想像することができた。
芽依の着眼点のよさに、思わず勇次も感心する。
「さすがだな。芽依。細かいとこに気が付く! これで来週の27日の水曜の昼ってのは、間違いなさそうだな。あとは、どうやって強盗を退治するかだ」
勇次はやる気満々だが、相手は拳銃を持っている。
さすがに俺は不安に陥っていた。危険すぎる。
「本当に俺達だけで、どうにかするつもりなのか? 今回ばかりは相手が悪い気がするんだけど……」
「それが、そうでもないんだよな!」
不安な顔をする俺に対し、勇次は笑みを見せていた。
なぜ強盗相手にまで、そんなに強気に出れるのか……それには理由があったのだ。
「あの拳銃だけどな……あれは単なるオモチャだ」
「オモチャ!?」
俺は驚いて声をあげるが、芽依は頷いていた。どうやら、勇次と同様の感想を持ち合わせていたみたいだ。
「やっぱりあれ、そうなんだ。私の近くには背の高い強盗がいたんだけど、確かにあの拳銃……チープというか、作り物っぽかったのよね。まぁ本物なんて見たことないんだけど」
勇次だけなら、記憶違いの恐れがある……
しかし、芽依もそう言うのならば、あの拳銃は偽物なのだろうか?
仮にそうだとしたら……俺達が銀行強盗を退治できる可能性は、幾分か高まったかもしれない。




