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星が墜ちた夜から  作者: Guru
3章 知念青年の些細な事件簿
23/76

第22話 “引っ越し”

 章タイトルはふざけてますが、これも歴とした悪夢のお話です。

 いつとは違ったドキドキを、お楽しみください。

 俺達の悪夢は“4人”揃って、初めてひとつのものとなる。

 その事を告げたあの日の夜から、5日がたっていた。

 

 あれから俺も悪夢は見るものの、例の自殺未遂事件以降、みんなで共有する夢を見ることはなかった。


 もしかしたら、見る悪夢にも“ランク”のようなものがあるのかもしれない。

 人の命に関わるような大事件は、みんなが同じ夢を見る……それ以外の些細な出来事は、個人の悪夢となる……

 

 今回の事件は、そのランクで分けで言えば、最低ランクのレベルに当たる話だ。


 ここらで一息、コーヒーブレイクじゃないけれど……

 重い話ばかりじゃ胃もたれしてしまうはず。

 たまには、そんな小話もいいだろう?




・・・




 俺は探していた1人暮らしの物件をようやく見つけ、引っ越しの作業を行っていた。

 初めての1人暮らしのため、一通り家具を揃えなければならない。出費が激しすぎる……


 そんな金欠状態となっていた俺に、救いの神は現れた。

 その神とは──勇次のことだ。


 どうやら勇次も引っ越しをするらしく、いらなくなった家具をもらえることになったんだ。


 俺らはこの悪夢によって、近頃頻繁に会っていた。きっとこれからも密に接していくだろう。

 そうなると千葉に住む勇次にとって、毎度都内のバーに行くのは億劫(おっくう)だったようだ。


 しかも、喜ばしいことに、どうやら勇次の引っ越し先は、俺の家の近くらしい。


 やはり都内と埼玉では、家賃はかなり違ってくるからな……

 俺の家の方からなら、そこまで都内に行くのも遠くないし、ありっちゃありだろう。


 俺は勇次の引っ越しを手伝いがてら、家具をもらいに、勇次の新しい家へと足を運んでいた。



「本当にいいのか? こんなにもらっちゃって」


「あぁ、全然構わねぇよ。むしろ要らないもの引き取ってくれて、助かってるところだ」


 俺はとりあえず先に家だけを借りている状態で、ほとんど家具がない。そのため、まだ実家に住んでいる。

 少しずつ荷物や家具を揃えて、(じき)に1人暮らしを始める予定だ。



 俺と勇次は、いくつかの家具を車の後部席に乗せていった。

 この車は勇次の実家の車で、荷物運び用にわざわざ借りてきてくれたらしい。

 基本みんなの実家は埼玉にあるため、距離的にはそこまででもない。


 引っ越し会社に頼むと、それこそ金がかかるしな……

 何から何まで、勇次には本当に感謝だ。頭が上がらない。まさに神と言える。



「なぁ、誠人。俺さ……」


 荷物を運んでいる途中に、神……いや、勇次が俺に話しかけてきた。


「──ん? 何だ?」


「俺……好きな人ができたかもしれない」


 突然の勇次のカミングアウトに、俺は動揺する。


「お、おい! なんだよ急に! 今そんな話は止めろよ!」


 今は勇次からもらうテレビ台を運んでいる最中だ。

 ここで手を離したりでもしたら、俺の足が死ぬ……変な話はやめてくれ。



 なんとか手は離さず運び終え、俺達は車の中へと乗り込んだ。

 勇次の運転で、俺の家まで向かう。

 その間、俺は先程の話の続きを始めた。


「さっきの続きなんだけどさ。好きな人ができたんだって? それにしても、随分急な話だな」


「あぁ、なにせ昨日の話だからな。これぞまさに、運命の出会いってやつなのかもしれねぇ」


 あぁ……だめだ。これは。勇次は完全に“あっち”の世界に入ってやがる。

 

 とりあえず俺は半ば呆れながらも、詳しく話を聞くことにした。


「それで……誰なんだよ? 昨日はどこかに出掛けたのか?」


「昨日はバイトだったんだ。こっちの埼玉の、新しく始めたバイトのな。そこで出会ったんだよ。一目惚れってやつだ」


 どうやら勇次は、すでに新たなバイト先も決めていたらしい。

 俺なんて、ようやく引っ越し先を決めたばかりなのに……


 本当に勇次の行動力には驚かされる。

 引っ越しから新たなバイト先まで、思い立ったらすぐ行動に移す。

 悪く言えばせっかちだが、何をするのものんびりな俺からしたら、尊敬すら覚える。

 しかも、恋に落ちるまでも早いとは……

 とてもじゃないが、真似できない。



「ここか。誠人の家は。もう着いたのか。本当に近いな」


 俺と勇次の家は、駅ひとつ分くらいの距離だった。車ならあっという間で着く距離だ。

 もう少し詳しく話を聞きたいところだったが、早くも目的地へと着いてしまったようだ。

 

 一旦話は終了とし、荷物を家の中まで運ぶ。

 わざわざ勇次も家の中まで運ぶのを手伝ってくれた。

 本当に優しくていいやつだ。勇次は。

 たまに周りが見えなくなって、自分の世界に入ってしまうとこがあるのは、ご愛嬌だろう。



「いやーほんと助かったよ、勇次! 今度飯でも奢らせてくれ!」


「いいって。金ねぇんだろ? 無理すんなって」


「……まぁな。わりぃな。でも、こうして家も近くなったし、飯はマジで行こう! その時、さっきの恋愛話の続きを聞かせてくれ」


「そうだな。誠人には相談に乗ってもらうかもしれねぇな……そん時は頼む!」


「あぁ!」


 俺は勇次に別れを告げ、勇次は車で実家へと帰っていった。




・・・



──その日の夜。

 俺はいつもの如く、悪夢にうなされて目を覚ます。



「はぁ……はぁ……今のは……本当に起こる出来事なのか?」


 見る夢すべてが、予知夢とは限らない。

 ただし、それが悪夢ならば、高確率で予知夢となる。


 俺が見た夢には、勇次が出てきていた。

 その夢の出来事は、まさに俺にとっては(・・・・)悪夢だったのだ。



「勇次に……彼女ができる? 俺を差し置いて、そんなバカな……」




 今回の話は、題して──“勇次に彼女ができる事件”だ。


 なぁ? くだらない事件だろ?

 けど、これでも当の本人は真剣です。一大事なのです!!

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