第21話 “不完全”
「それで、今回は誠人が俺達を誘ったんだよな」
勇次は長細いカリカリの棒状のやつを食べていた。
商品名はよく分からないけど、合コンとかでよく出てくるあれだ。
今回は前回の失敗を踏まえ、きっちりと夜ご飯を食べてきた。十分腹は満たされている。
俺もその謎の品を手に取って口に入れた。
「あぁ、これはメッセージより、直接話したくてさ」
「よほど大事な話なのね。何なのかしら?」
芽依の質問に俺は答える。
「かなり重要なことだと思う。2人に聞きたいんだけど、この前の事件……おかしなことがいくつかなかったか?」
勇次は少し考えた後に、あることを思い出す。
「──あったな。夢とは一部が違ったんだ。駐車場には、夢になかったはずの車があったんだよ」
芽依は頭を働かせるも、これといって何も浮かんでは来ていない様子だ。
「う~ん……あったかしら。私には特に、何も思い当たる節がないけど」
どうやら芽依はよっぽど、目の前の女性に全力を注いでいたらしい。周りを見る余裕などなかったようだ。
俺はすかさず手を横に振って否定する。
「いやいやいや! あったよ! 芽依にも大きな違いが。女性の落ちる位置が、当初の話とだいぶ違ったんだよ」
「うそっ!? 全然気付かなかった……」
俺の言葉を証言するかのように、勇次は俺の肩を持つ。
「いや、本当だ。俺と誠人でうまく連携を取って、うまく女性の真下へと移動したんだからな」
「そうだったの……それは迷惑かけたわね」
芽依はしょんぼりとし、視線を落とした。
「別に芽依が気にすることじゃないから大丈夫。それに、俺だって夢と違う部分があったんだ。6階の柵の形が違った……これはとても大きな違いだったよ!」
勇次が親指を立て、グーサインを俺に送ってくれている。
「あれはナイス判断だったぜ、誠人! そこに気付かなかったら、俺達は彼女を助けることができなかったかもな!」
「ありがとう。別に俺は褒めて欲しいわけじゃなくて……とにかく俺が言いたいのは、それくらい夢と違うことが多かったってことなんだ!」
芽依もカリカリのやつを手に取って、話を合わせた。
「そうね……夢の話だものね。すべてが正しいってわけじゃないのかしら」
「そこで俺、思ったんだ。俺らは全員が同じ事件の夢を見てる……だからこれには“意味”があるんじゃないかって」
思わず芽依は手を止め、神妙は面持ちで俺に尋ねた。
「意味ね……誠人は前も悪夢には意味があるって言ってたわね。何か考えがあるの?」
「あぁ。俺らは全員がひとつの事件を、別々の場所から見ていた……だからさ、もしかして──これらすべての夢を合わせることで、初めて“ひとつの夢”になるんじゃないかな?」
勇次はカクテルを一気に飲み干し、勢いよくテーブルにグラスを置いた。
「なるほど! 実際、移動した位置の真下には、ちょうど車は停まっていなかった! 本来そこが正しい位置だったのかもしれねぇな! 俺ら3人の夢を合わていけば、その記憶違いもなくせるってわけか!」
今の勇次の発言に対し、芽依は表情を曇らせた。
どうやら芽依は、俺がわざわざふたりを呼び出した意味をここで理解したようだ。
俺自身、この事をメッセージで告げてもよかった。
でも、やっぱり2人には直接伝えたかったんだ。
この“想い”ばかりは、面と向かって自分の口から伝えたい。
芽依は勇次の言葉の一部を否定した。
「いえ……ちょっと違うわね。勇次。私達は、“3人”じゃない」
「──あっ……」
勇次は1人遅れて事態に気付き、ぽっかりと口を開けている。動きが完全に停止してしまっていた。
そう……あの流れ星を見たのは、ここにいる“3人”だけじゃない。
もう1人いたはずだ。大切なもう1人のメンバーが。
「智……俺ら“4人”はいつも一緒だった。4人でひとつだった。智の夢も含めた、俺ら4人の夢で、完璧な予知夢となるんじゃないのかな」
きっと俺らは、それぞれ別の視点から、ひとつの夢を見ていたんだ。
それらの出来事を組み合わせ、補完して初めて、ひとつの夢が完成されていく……
俺の推測が当たっていたのかは定かではない。でも、不思議とそんな気がしたんだ。
仮に、俺の推測が正しいのだとしたら……
智は去年、亡くなってしまった。
これでは、俺達の悪夢は不完全なものとなる。
常にこの状況下で、俺達はこれからも悪夢と戦っていかなければならないんだ。
※飲み屋でよく出てくる、カリカリの棒状のやつの主な商品名は『カリカリパスタ』だそうです。意外とシンプルな名前でした。10代の方は分からないかな?
しかし、誠人同様、私自身もその名前を調べないと知らなかったので、あえてここは“カリカリの棒状のやつ”でいきたいと思います。
そして、これにて2章は終わりです。次の章は、ひと味違ったお話になるので、ご期待ください。
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