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マナリウム ~私、狼だけど神様を目指しても良いでしょうか?~  作者: 内村一樹
第2章 狼と女王

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第39話 独白

 大樹の麓に立っているバートンは、この薄闇の中を遠ざかってゆく二人の影を見つめていた。


 目的地は告げてある。


 鉱山都市ボルン・テール。


 そこで二人がどんな経験をし、何を得るのか、非常に見てみたい気もするが、彼にはやらなければならないことがある。


 そのためには、二人に着いて行くことは叶わないのだ。


「……突然の乱暴と、これから続く乱暴、そして、終わる事の無い乱暴。……カリオスさんには何度謝っても、謝り切れないですね。だけれどきっと、私は後悔しないでしょう。」


 誰にも届けるつもりの無い独白が、口をついて出てくる。あるいは、耳の良いミノーラなら聞こえるかもしれない。


 既に声の届かないほど遠くまで行ってしまった彼女のことを考え、自嘲する。


「……さて、私のやるべきことをしましょうか。」


 そう言うと、彼は踵を返して大樹の中へと入ってゆく。広場のトリーヌと話をするつもりだったのだが、彼は誰かを探しているのか、こちらへと歩いて来ている途中だった。


 必然的に鉢合わせた二人は、しばし面と向かった後、トリーヌが口を開く。


「バートンか。すまない、ミノーラとカリオスを見ていないか?少し、謝りたくてな……。」


「それはタイミングが悪かったですね。二人は既に旅立ちましたよ。」


「な!?こんな暗い中を歩いてか?」


「そうなりますね。ただ、ミノーラは狼なので、普通の旅人基準では考えなくても大丈夫かと。ところで、貴方に二つほどお話があるのですが。」


「話?何か企んでいるわけでは無いだろうな?」


 あからさまに怪しんでくるトリーヌの視線を真っ向から受けつつも、表情を崩さないように気を付ける。


 そして、トリーヌにだけ聞こえるように、小声で話をつづけた。


「企みだなんて、そんなことしませんよ。言うなら目論見です。もし、死者を生き返らせることが出来るとするなら。貴方はそれを企みと言いますか?」


「なに!?」


 バートンの囁きに対し、驚愕の声を上げるトリーヌ。無理もないだろう。


「声が大きいですね。場所を変えませんか?」


 あまり周りに聞かれても良い話ではない。バートンはトリーヌに着いて来るように促すと、大樹の外へと向かう。


 ヒンヤリとした空気の中、注がれるトリーヌからの熱い視線に辟易しながら、彼は話を続ける。


「良いですか。先程言った話が一つ目で、二つ目は別の話です。ですが、この二つは密接に関わり合っていて、切っても切れない話なので、あらかじめ認識していてください。」


「分かった。」


 深く頷くトリーヌの様子を見て、彼は二つ目の話を始める。


「二つ目の話。今回のコロニー切り離し作戦の首謀者は、カリオスです。私たちは彼の提案で計画を実行しようとしていました。意味は、分かりますよね?……恐らく、貴方の望んでいる願いの二つが、この二つの話と合致すると思っているのですが……。どうやら間違ってはいなかったようで、安心しました。」


 驚愕の中に潜む怒り。そんな感情が、トリーヌの瞳から見て取れる。


「簡単に言うと、仇を討てば、少なくとも一人か二人くらいは、死者を蘇らせることが出来る……と言う話です。」


「……この話は、企みではないのか?」


「少なくとも私は、目論見だと思っていますよ?まぁ、詳細は王都でサーナから聞いてください。それと、時間制限がありまして、明日の早朝にはあなたがここを出発しないと、恐らく間に合わないと思います。」


「…………」


 黙り込むトリーヌ。話しに乗るかどうか考えているのだろう。しばしの間、沈黙で待機することにする。


「……少し考えさせてくれ。」


「分かりました。ですが、口外は禁物ですよ?明日の朝、ここで待ちます。」


 バートンの言葉を背中で聞きながら、トリーヌは大樹の中へと戻って行った。


 彼は恐らく来るだろう。根拠はないが、彼は予想していた。


「予想……か。これを全部、予想していたのか?なぁ、サーナ。貴女はどこまで見ている?何を見ている?……何を探している?」


 コロニーの残骸を眺め、小さく呟く。そんな彼の独白は、誰に聞かれることも無く、静かな夜の闇に溶け込んでいった。

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