表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マナリウム ~私、狼だけど神様を目指しても良いでしょうか?~  作者: 内村一樹
第2章 狼と女王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/306

第31話 早鐘

「しっかりつかまってて下さいね!」


 ミノーラは背中に乗っている小さなおじさんに向けて声を掛ける。


 ちなみに、名前はドグルと言うそうだ。


 なんでも、コロニー上部へ行くためには、彼らの助けが必要とのことで、しぶしぶ同行している。


「おうよ! このまま上に向かって走り続けろ! 一度コロニーから出て大樹の幹に渡る! そんでもって、幹の中を駆け上がるって寸法だ! 分かったか?」


「分かりましたけど、よく分かりません! コロニーと大樹の幹の間には結構な距離があったと思うのですが……どこかに橋でもあるのでしょうか? それと、幹の中ってどういう事ですか?」


「細かいことは気にすんじゃねぇ! その先の壁で一度止まれ! 見た方が早いからなぁ。百聞は一見にかずだ! 今に関しちゃ見てる暇も惜しいがなっ! テキパキと行動しろ!」


「……少し扱いが乱暴すぎではないでしょうか? まぁ、仕方ありませんね」


 言われるがまま、指示された場所へ向けて加速する。み込まれた木々の上を走っているため、足場の悪さは否めないが、それなりの速度は出せている。


 走りながら同時に、周囲の観察も行う。


 今のところ、影の精からの攻撃は収まっているようだが、トアリンク族が慌ただしく動いているのは恐らく、閃光弾の準備を進めているのだろう。


 次に襲撃があった際に、対抗できるように、光源が必要だ。


 日ごろから光を蓄積していたクラミウム鉱石などをかき集め、即席の閃光弾を作成しているはずである。


「急がないといけないですね」


 壁に到着したミノーラは背中からドグルが降りるのを傍目はために、壁の隙間から地上を見下ろす。


 落ちてしまえば、間違いなく命はない。


 ここを渡る橋を造ると言っていたが、どうやって作るのだろうか。


 と疑問を視線で投げかけてみるが、当のドグルは、壁に手を当て、何やらうつむいている。


「あの……ドグルさん?」


「黙って見てろ」


 うつむいたまま応えるドグルの、いつにない真剣さを感じたミノーラは、おとなしく待つことにした。


 彼女が初めに感じた異変は、遥か上部から聞こえてくる異音だった。


 木々のこすれ合う音と軋む音が折り重なり、徐々に近づいて来ている。


 その異変に気が付いた彼女は、自身の全身の毛穴が開くような気色の悪さを覚え、コロニーの外へと目を凝らす。


 大樹の上部に広がっている枝葉から幾本もの枝や蔦が垂れ下がりはじめ、その垂れ下がった枝などを縫い合わせていくかのように、編み込まれた木々が、コロニーへと向けて伸びてきている。


 一直線と言うわけでは無いが、簡易的な吊り橋が形作られている。


「すごい……どうやって?これは、ドグルさんが作っているのですか?」


「まぁな。もう少しでここに繋がるからよぉ、そっからはイヌッコロの出番だぜ?」


「できれば、ミノーラと呼んで欲しいのですが。もういいです」


 そうこうしていると、吊り橋が完成し、ミノーラは再び駆け出す。


 しかし、即席の吊り橋と言うだけあって、安定性はあまりよくないようだ。


 それに加え、落下防止用の措置が施されているわけでもなく、断続的に吹いている横風にあおられると、すぐに落ちてしまいそうになる。


 これでは流石のミノーラでも、全力疾走ははばかられる。


「……流石に怖いですね。もう少しまともに作れなかったのですか?」


「文句言ってねぇで、早く渡っちまうぞ!」


 釈然としないが、ミノーラもその意見には賛成したい。あまり長居したい場所では無いのもあるが、それ以上に感じている物があった。


「……根拠はありませんが、嫌な予感がします」


 吊り橋の7割程を駆け抜けたところで、ふと覚えた違和感。聞こえたわけでは無いが、どこかで何かがざわめいているような予感。


 見たわけでは無いが、何かが飛び出してきそうな予感。


 そんなものを感じていた時、彼女は急な浮遊感で現実へと引き戻される。


「やべぇぞ! 走れ! 全速力だ!」


「っ!!」


 今しがたの浮遊感と背中で絶叫するドグルの様子から、何が起きているのか確認するまでも無かった。


 全神経を集中して、吊り橋を疾走しっそうする。横風とか足場とか、細かなことを考えている余裕はなかった。


「コロニーが! 切り離されちまった!」


 あるいは、吊り橋の強烈な振動が彼女の心臓に伝わったのかもしれない。


 それほどまでに速く強い鼓動を、彼女は全身で感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ